2024年2月23日金曜日

23- ガザ停戦決議案を拒否した米国に批判 仏国は遺憾と 英皇太子が異例の訴え

 20日に行われた国運安全保障理事会の緊急会合では、ロシアのウクライナ侵略を一方では非難しながら、イスラエルのガザ侵攻を拒否権で擁護し続ける米国に対し、エジプトチュニジアガイアナ中国フランスなどから、「二重基準の典型例だ」「安保理は平和と安全保障のための道徳的、法的責任を巣たしていない」「安保理はガザで起きていることの共犯者であり続ける」「大殺りくに許可を与えるもの」などの批判の声が上がりました。

 英国のウィリアム皇太子は20日、ガザの情勢について「あまりに多くの人が殺されている」と懸念を示し、「一刻も早く戦闘を終わらせるよう」訴えました。
 英王族が政治的問題で意見表明するのは異例のことです。

 しんぶん赤旗は、停戦決議案の提出アルジェリアの日刊紙アルヒワール編集長のムスタファ・ポフ氏に電話インタビューしました。
 編集長は、「アルジェリアは1830年にフランスに侵略され、以後132年間も占領された。第二次世界大戦の末期1945年5月アルジェリア各地で主権を求めるデモが起きた時には、フランス軍は45千人を虐殺して独立運動を制圧したが、アルジェリア人はその後も抵抗続け、62年に国家主権と自由を取り戻した」歴史に触れながら、「私たちはどんな国でも他国を抑圧することは許しません」と語りました。
 しんぶん赤旗の4つの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガザ停戦決議案に拒否権 米国に批判次々 二重基準だ 大量殺りくに許可
                       しんぶん赤旗 2024年2月22日
安保理
【ワシントン=石黒みずほ】20日に行われた国運安全保障理事会の緊急会合では、ロシアのウクライナ侵略を一方では非難しながら、イスラエルのガザ侵攻を拒否権で擁護し続ける米国に対し、「二重基準だ」などと批判が出されました。ガザ最南部ラファヘの侵攻が迫る中、即時の停戦を求める声も相次ぎました。

同盟国仏も「遺憾」表明
 米国、カタールとともに人質解放交渉を仲介するエジプトの代表は、米国による停戦決議採択の「妨害」は「二重基準の典型例だ」と不満をあらわにしました。
 チュニジアの代表は、「(安保理は)平和と安全保障のための主要機関であるにもかかわらず、その道徳的、法的責任を巣たしていない」と指摘。パレズチナ人が毎日攻撃にさらされ続ける中で「安保理が政治的思惑に振り回されて任務を続けることは、受け入れられない」と米国を厳しく非難しました。ガイアナの代表も「停戦で合意に至るまで、安保理はガザで起きていることの共犯者であり続ける」と批判しました
 中国の張軍国連大使は、決議案に盛り込まれた人質の解放や人道支援のアクセスは「人間らしく生きるため最低限必要なものであり、全ての国に支持されなければならない」と強調。米国が停戦に背を向けていることは「今も続く大殺りくに許可を与えることと何ら変わりない」と批判しました。
 フランスのドリビエール国連大使は、ガザが壊滅的状況となる中、決議案が否決されたことは「遺憾だ」と述べました。民間人保護と人道支援のアクセスを確保するために「これ以上遅れることなく停戦を実現させなければならない切迫した状況にある」と強調し、イスラエルに攻撃の停止を訴えました。
 シエラレオネの代表は、ガザで人道状況が悪化する、国際司法裁判所(IJ)がイスラエルにガザで緊急に必要とされる基本的なサービスや人道支援を可能とする措置を取るよう命じたことに言及。「人命を救助し、死者の増加を止めるため、安保理はいま、かつてないほど行動することが求められている」として人道的停戦の実現を呼ぴかけました。


英皇太子が停戦を訴え 異例の政治的発言
                       しんぶん赤旗 2024年2月22日
【ロンドン11H時事】ウィリアム英皇太子は20日、ガザの情勢について「あまりに多くの人が殺されている」と懸念を示し、「一刻も早く戦闘を終わらせるよう」訴えました。英王族が政治的問題で意見表明するのは異例
 皇太子は王室を通じた声明で「ひどい人的犠牲が出ている事態を深く憂慮する」と表明。「さらなる人道支援が早急に必要とされている」とした上で、「物資が実際に届けられることと人質の解放が不可欠だ」と述べました。
 皇太子は20日、ロンドンの英国赤十字社を訪れ、ガザで活動する職員とビデオ電話を通じて現地の状況を聞きました。


占領を打ち破る歴史の確信
アルジェリア日刊紙アルヒワール編集長 ムスタファ・ボニフさん
                       しんぶん赤旗 2024年2月22日
 米国は20日、国連安全保障理事会で、アルジェリアが提出したガザでの即時停戦を求める決議案に拒否権を行使しまじた。アルジェリアの日刊紙アルヒワール編集長のムスタファ・ポフ氏(45)は、かつて自国がフランス の占領に苦しんだ歴史を想起しながら、米国を批判します。思いを電話で聞きました。(カイロ=秋山豊)

 米国が拒否権を使うことはわかっていました。米国は国際法をじゅうりんしてパレスチナの占領を続けるイスラエルを常に支え、パレスチナ人の民族自決権と人権を決して認めないからです。米国が自由と民主主義というスローガンを用いるのは自国と同盟国イスラエルの利益のためだけです。
 アルジェリアには1830年にフランスに侵略され、132年間も占領の惨事に苦しんだ歴史があります。私にはイスラエルのパレスチナ占領と、フランスのアルジェリア占領が重なっ見えます。
 第2次世界大戦末期の1945年5月、フランスがナチス・ドイツに対する連合国の勝利を祝うなか、アルジェリア各地で主権を求めるデモが起きましたフランス軍はごれを弾圧し、45千人を虐殺したのです。アルジェリア人はフランスに抵抗し続け、62年に国家主権と自由を取り戻しました。
 米国はイスラエルがガザで民間人の虐殺を始めてからも軍事支援を行っています。しかし、イスラエルが米国の支援でどれだけ強く見えても、パレスチナ人は最後には自分たちの土地と尊厳を取り戻すでしょう。歴史が確信させてくれます。
 イスラエルがガザで集団殺害を行っていると国際司法裁判所(ICJ)に提訴した南アフリカは、長い間、アパルトヘイト(人種隔離)に苦しみ、打ち破った国です。南アフリカの提訴はイスラエルの不正義に対する追及を発展させました
 フランスは49年の北大西洋条約機構(NATO)設立当初からの加盟国で強力な軍隊と核兵器を持ちます。アルジェリアはそのフランスの占領を打ち破りました。私たちはどんな国でも他国を抑圧することは許しません。


人質帰還「最重要でない」イスラエル閣僚発言 家族ら抗議
                       しんぶん赤旗 2024年2月22日
【カイロ=時事】イスラエルの極右政党党首で対パレスチナ強硬派のスモトリッチ財務相は20日放送の地元ラジオの番組で、ガザでイ、スラム組織ハマスが拘束中の人質について、「(彼らの帰還が)最も重要とは言えない」と語りました。人命軽視とも言える発言に、数カ月も帰りを待つ家族らは激怒。ネタニヤフ政権への抗議の声が拡大しています。
 タイムズ・オプ・イスラエル紙によると、スモトリッチ氏は、人質の家族が「何が何でも」人質を帰還させるべきだと訴えていることについて、「『何が何でも』というのは問題だ。ハマスに圧力をかけなければならない」と主張しました。
 これに対し、商都テルアビブの国防省前で集会を開いた家族らは強く反発。抗議行動を展開しました。18歳の娘をハマスに拉致された男性は「スモトリッチさん、あなたの子どもが拉致されても、私は『重要でない』と叫ぶだろう」と怒りをぶちまけました。
 戦時内閣メンバーのガンツ前国防相はSNSで、人質帰還は「国家と国民の道徳的義務だ」と述べ、家族に寄り添う姿勢を強調。しかし、ネタニヤフ首相は声明を出し、ハマスの要求は「妄想的だ」と改めて譲歩を拒否、スモトリッチ氏を擁護しました。