海外記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
パレスチナとイスラエルの「二国家解決」なるものは1948年のイスラエル建国時の主旨であり理念でした。しかし国際社会(米英などの主要国)はそれを実現するうえで何の責任も負いませんでした。建国時の理念がまともに機能していれば今日の事態は出現しませんでした。それなのにこの期に及んで再びそれが唱えられていることに違和感を持たざるを得ません。
そもそもネタニヤフが蛮行の根拠にしているのは、記事の冒頭に書かれているように紀元前7世紀に書かれたヘブライ語聖書のヨシュア記、「神がユダヤ人に土地を約束し「約束の地」に住む他の国々を滅ぼすよう指示した」ということです(同じ内容が、起源を共通にしている旧約聖書「サムエル記上15章3節」に書かれています)。もはやアナクロニズムの範疇を超えています。
また「ワシントンで主導権を握っているのはバイデンではなくネタニヤフ」だということで、イスラエルからの「数百万~数億ドル」の選挙資金(と一定程度の支持者)がその理由だということです。(実際は米国がその数百倍の援助をしているのにです)。
前述の「約束の地」論と並んで「不条理の極致」と言うしかありません。
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ネタニヤフはバイデンを降ろすだろうか?
耕助のブログNo. 2074 2024年2月28日
Will Netanyahu bring down Biden? by Jeffrey Sachs
イスラエルの首相ビビ・ネタニヤフの内閣は、ガザでのイスラエルの残虐行為{1}は神の命令だと信じる宗教的過激派で埋め尽くされている。学者によれば紀元前7世紀に書かれたとされるヘブライ語聖書のヨシュア記によれば、神はユダヤ人に土地を約束し、約束の地に住む他の国々を滅ぼすよう指示したという。この文章が、国際法に違反してパレスチナの占領地に住む70万人あまりのイスラエル人入植者も含む今日のイスラエルの極端な民族主義者たちによって使われている。ネタニヤフは、紀元前7世紀の宗教イデオロギーを21世紀に追求しているのだ。
もちろん、ほとんどの米国人を含む今日の世界の大多数は、イスラエルの宗教的狂信者たちに同調していないことは確かである。世界はヨシュア記で神が定めたとされる大量虐殺よりも、1948年のジェノサイド条約の方にはるかに関心がある。彼らはイスラエルがパレスチナの人々{2}を自分たちの土地から殺したり追放したりすべきだという聖書の考えを受け入れていない。二国家間解決は、国連安全保障理事会や米国政府が表明している世界共同体の方針なのである。
したがって、ジョー・バイデン大統領は、強力なイスラエル・ロビーと米国の有権者や世界社会の意見との板挟みになっている。バイデンはイスラエル・ロビーの力と選挙資金を鑑み、イスラエルを支持しつつもイスラエルの過激主義を支持しない、という二つの立場を両立させようとしているのだ。バイデンと国務長官のアントニー・ブリンケンは、アラブ諸国を決して到達することのない二国家解決という、終わりのない平和プロセスに誘い込むことを望んでいる。もちろん、イスラエルの強硬派はその道のあらゆる段階を妨害するだろう。バイデンはこれらすべてを知っているが、和平プロセスという仮面が欲しいのである。バイデンはまた、サウジアラビアがF-35戦闘機、核技術へのアクセス、最終的な2国家間解決への漠然としたコミットメントの見返りとして、イスラエルとの関係正常化に誘い込まれることを最近まで期待していた……いつの日か、何とかしてでも。
サウジアラビアはそれをしないだろう。サウジアラビアは2月6日の宣言でこのことを明らかにした:
サウジアラビア王国はガザの人々に対する包囲の解除を求める;民間被害者の避難、国際法と規範、国際人道法へのコミットメント、そして安全保障理事会や国連の決議、およびアラブ平和イニシアチブに従い、1967年の国境を基盤とした独立したパレスチナ国を東エルサレムを首都として設立することを目指す、公正かつ包括的な解決を見つけるために、平和プロセスを前進させる。
国内的にバイデンはイスラエル・ロビーの主要組織であるAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)と対決する。AIPACの長年の成功は、数百万ドルの選挙献金を数十億ドルの対イスラエル援助に変えることであり、その見返りは驚くほど高い。現在、AIPACは11月の選挙に向けた約1億ドルの選挙資金を、160億ドルの対イスラエル追加援助に回すことを目指している。
今のところ、バイデンはたとえ若い有権者を失ってもAIPACに従っている。1月21-23日のエコノミスト/ユーガブ世論調査{3}では、19-29歳の49%がイスラエルはパレスチナの市民に対してジェノサイドを行っていると回答した。イスラエルとパレスチナの紛争について、イスラエルに同情すると答えたのはわずか22%で、パレスチナに同情すると答えたのは30%、残りの48%は「ほぼ同じ」か「わからない」だった。イスラエルへの軍事援助を増やすことに賛成したのはわずか21%だった。イスラエルは若い米国人を完全に遠ざけてしまった。
バイデンが二国家解決に基づく和平とガザでの暴力の削減を求めたのに対し、ネタニヤフは大胆にもバイデンを払いのけ、バイデンにネタニヤフをクソ野郎{4}と呼ばせるよう何度も挑発した。しかしワシントンで主導権を握っているのはバイデンではなくネタニヤフなのだ。バイデンとブリンケンがイスラエルの極端な暴力に手を焼く一方で、ネタニヤフは米国の爆弾と、さらには160億ドルに対して米国のレッドラインもなくバイデンの完全の支持を得ている。
この状況の不条理さ、そして悲劇を知るために、2月7日のテルアビブでのブリンケンの声明を考えてみよう。米国によって可能になったイスラエルの暴力行為に制限を設けるのではなく、ブリンケンは次のように宣言した:
何をするか、いつするか、どうするかはイスラエル人次第だろう。誰も彼らのために決定を下すことはできない。私たちにできることは、どんな可能性があるのか、どんな選択肢があるのか、どんな未来があり得るのかを示し、代替案と比較することだけだ。そして、その代替案は今、暴力と破壊と絶望の果てしないサイクルのように見える。
今日にも米国は国連安全保障理事会で、即時停戦を求めるアルジェリア決議案に拒否権を発動する可能性が高い。
バイデンは、それがどのような意味であれ、「実行可能な限り早急に」停戦を求めるという弱い代替案を提示した。実際には、イスラエルが停戦を「実行不可能」と宣言するだけになるのは確実である。
バイデンは米国の政策をイスラエル・ロビーから取り戻す必要がある。米国はイスラエルの過激でまったく違法な政策を支援するのをやめるべきだ。また、イスラエルがジェノサイド条約や21世紀の倫理を含む国際法の範囲内で生きない限り、そして生きるようになるまで、米国はこれ以上イスラエルに資金を費やすべきではない。バイデンは、即時停戦を求める国連安全保障理事会の側につくべきであり、実際に、パレスチナを194番目の国連加盟国として承認することを含め、2国家間解決策への即時移行を求めるべきだ。
2011年にパレスチナが国連加盟を要求して以来、この動きは10年以上遅れている。
イスラエルの指導者たちは、何万人もの罪のない市民を殺害し、200万人のガザ地区住民を移動させ、民族浄化を呼びかけることにいささかのためらいも示していない。国際司法裁判所(ICJ)は、イスラエルが大量虐殺を行っている可能性があると判断し、来年か再来年にはジェノサイドの決定的な判断を下す可能性がある。バイデンはジェノサイドの幇助者として歴史に名を残すことになる。しかしバイデンには、ジェノサイドを阻止した米国大統領になるチャンスもまだ残されている。
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