防衛省は19日、「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」の初会合を開催しました。座長に就いた榊原定征日本経団連元会長は、23~27年度で約43兆円とする軍事費について、物価高騰や円安の影響をあげ、「現実を踏まえたより実効的な水準や国民負担の在り方について議論すべきではないか」と述べました。
要するに「物価高騰と円安」が起きているので43兆円では不足だということですが、国が手当てすべきは「物価高騰・円安」に苦しんでいる国民の方であって、無用で且つ日本の防衛に取って有害な軍備増強ではありません。
そもそも米国が「台湾有事」を打ち出したのは、当時は7年以内に中国のGDPが米国を抜いて世界1位になると想定されたことをベースに、米国としては「絶対に許せない」としてその前に中国を叩いておきたいという「子供じみた考え方」から、「台湾有事」というありもしないことをでっち上げて、日本を対中戦争の尖兵に利用しようとしたのでした。
岸田首相はその路線に乗って27年までに「軍事費倍増」を米国に約束したのですが、それは憲法違反であるし、そもそも大前提である中国のGDP増大自体が頓挫し始めていています。
何よりも台湾問題は中国の「内政問題」であって他国が武力をもって干渉するのは許されないし、そもそもそんな意図は中国も台湾も持っていません。
防衛省が組織した有識者会議なので、座長の意向のままの結論を出すであろうことは目に見えていますが、それは間違いの上に間違いを重ねるものです。
財界が更なる利潤の追求を目指し軍需産業の興隆を図ろうとするのも大間違いです。何もかもが論外です。
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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有識者「大軍拡へ負担増を」「43兆円」からさらに増額へ 防衛省で初会合
しんぶん赤旗 2024年2月20日
防衛省は19日、安保3文書に基づく大軍拡を推進するための「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」の初会合を開催しました。座長に就いた榊原定征日本経団連元会長は、2023~27年度で約43兆円とする軍事費(防衛省予算)について、物価高騰や円安の影響をあげ、「見直しをタブーとせず、現実を踏まえたより実効的な水準や国民負担の在り方について議論すべきではないか」と述べ、さらなる軍拡のための「国民負担」に言及しました。(「小池氏が批判」後掲)(「関連記事」後掲)
経団連元会長が座長
22年度に決定された安保3文書の下、軍事費は既に22年度の5・4兆円から24年度予算案では7・9兆円という異次元の大軍拡が進められています。榊原氏の発言は、さらなる軍拡のために、庶民増税や暮らしに関わる予算の切り捨てを当然視したものです。
さらに木原稔防衛相は有識者会議で、「ポスト43兆円の話をいかに進めるかも並行して検討していく場にしたい」と述べました。安保3文書で示された軍拡計画は、敵基地攻撃能力をはじめ、必要な武器・体制が整うのは32年度としています。木原氏の発言は、28~32年度の軍事費が23~27年度の43兆円を上回ることを視野にいれたものです。
有識者会議の提起をめぐり、林芳正官房長官は19日の記者会見で「43兆円の規模を超えることなく防衛力の抜本的強化を実現する」と述べ、上積みを否定しました。ただ、28年度以降については言及していません。
経団連元会長の軍事費増主張 小池氏「言語道断」と批判
しんぶん赤旗 2024年2月20日
日本共産党の小池晃書記局長は19日、国会内で記者会見し、同日、防衛省の「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」の初会合で、座長を務める榊原定征元経団連会長が物価高や円安の影響を踏まえ、2023年度からの5年間で43兆円とする軍事費のさらなる増額の可能性に言及したことについて問われ、「言語道断の主張だ。物価高と円安で苦しんでいるのは国民だ。さらに軍事費を増やし、ますます国民生活を圧迫するという発言であり許しがたい。発言の撤回を求める」と主張しました。
小池氏は、岸田政権の下で軍事費が22年度の約5兆円から24年度予算案では8兆円近くに急上昇し、「国民生活を圧迫している」と指摘。これまで岸田首相は国会で、5年間で43兆円の軍事費を「維持したい」と答弁しているとして、「日本共産党は43兆円の軍事費自体に大反対だが、もし財界の主張で方針を変えるようであれば、まさに『財界いいなり』の政権であることがはっきりする」と批判しました。
小池氏は、「国民の暮らしのためにこそ税金を使うべきだ」と強調し、「年金は物価高分を反映されず、中小企業予算や農林水産業の復興予算などが削減されている中で軍事費だけがどんどん突出している」と批判しました。
また、各社世論調査の内閣支持率が、「朝日」21%、「読売」24%、「毎日」14%と過去最低を記録し、「毎日」では不支持率が82%に上っていると指摘。「1割から2割台の支持しかない。国民から不信任を突きつけられているのは誰の目から見ても明らかだ。岸田政権は政権を担う資格が問われており、その上、軍事費を増やすような資格はひとかけらもない」と厳しく批判しました。
強まる財界色 「読売」社長も 大軍拡推進の防衛省有識者会議
しんぶん赤旗 2024年2月20日
防衛省は19日、大軍拡推進のための有識者会議の初会合を開きました。安保3文書の一つである「国家防衛戦略」に、「宇宙・サイバー・電磁波の領域を含め、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を抜本的に強化」するために「有識者から政策的な助言を得るための会議体を設置する」と明記。その具体化です。
安保3文書をめぐっては、政府は閣議決定前の2022年秋にも有識者会議を開催しています。メンバーを比較すると、前回は座長の佐々江賢一郎元駐米大使をはじめ、外交官やシンクタンク関係者、メディア幹部が目立ちましたが、今回は財界色が強まっています。
座長には榊原定征・日本経団連名誉会長が就任。榊原氏は会長当時の2015年、安倍政権が推進していた安保法制の「今国会中の成立を期待」すると表明しています。また、メンバーには日本の軍需企業最大手・三菱重工や通信最大手・NTTの会長も加わっています。三菱重工は昨年11月の事業説明会で、長射程ミサイルや次期戦闘機、宇宙関連など、安保3文書に基づく大軍拡を請け負うことで、軍需部門の売上高が23年の年間5000億円から、29年度までに1兆円超の規模に拡大する計画を示しています。
また、「読売」の山口寿一社長は前回に続いて、今回の有識者会議にも名を連ねました。山口氏は前回の会議で、憲法違反の敵基地攻撃能力配備を当然視。さらに「メディアにも防衛力強化の必要性について理解が広がるようにする責任がある」と発言し、軍拡容認の世論づくりを進める決意を示していました。
有識者会議のメンバー
防衛省が19日に初会合を開いた「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」のメンバーは以下の通りです。
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榊原定征・日本経団連名誉会長(座長)
上山隆大・総合科学技術・イノベーション会議議員
遠藤典子・慶応大特任教授
落合陽一・筑波大准教授
北岡伸一・東大名誉教授(座長代理)
栗崎周平・早稲田大学政治経済学術院准教授
小西美穂・関西学院大学総合政策学部特別客員教授
澤田純 ・NTT会長
島田和久・元防衛事務次官
杉山晋輔・元米国特命全権大使
橋本和仁・内閣官房科学技術顧問
宮永俊一・三菱重工業会長
森本敏 ・元防衛大臣
柳川範之・東京大学大学院経済学研究科教授
山口寿一・読売新聞グループ本社社長
山崎幸二・前統合幕僚長
若田部昌澄・早稲田大学政治経済学術院教授