世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
週刊文春が取り上げた「松本人志を中心とする性加害事件」について、その後TV界は山田人志を擁護する側の芸人や弁護士(菊間千乃、野村修也、山口真由など)などが登場して、松本を擁護する見解を述べる舞台になってしまったということで、週刊文春が取り上げた「性上納システム」問題の構造の説明さえも殆ど行われないままになっているということです。
先にTV界ではジャニー喜多川による性加害問題が、同氏の「支配力」に屈して表面化されなかったことが問題視されたばかりです。それなのに今度は吉本興業(=松本人志)の「支配力」に屈しているわけで、かつての二の舞が演じられようとしています。
この記事はそうした状況を踏まえた中間総括といえます。
追記)メディアが相変わらずなのは、芸能界担当部署がそれなりに汚染されているからという見方もあるようです。
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文春の報道を整理する - 10人の告発者による性加害事件の一覧表
世に倦む日日 2024年2月3日
第5弾まで出た週刊文春の報道を一覧表に整理した。
この事件は毎日のようにテレビで放送されていて、平日は朝と昼のワイドショー、日曜は芸能情報番組でネタになり続けている。この話題をテレビが取り上げない日はない。だが、番組に出演してコメントを垂れているのは、吉本興業の芸人やお笑いタレントや、同じ業界の身内ばかりで、松本人志を擁護する発言が圧倒的に多く発信されている。太田光やカンニング竹山やヒロミや和田アキ子がそうだ。弁護士でも、菊間千乃、野村修也、山口真由など、松本人志側に偏った見解を吐く者が多い。テレビ界の帝王として君臨する影響力絶大な男が、卑劣な性加害事件を起こし、何人もの被害者から告発されているのに、社会に深刻さがまるでない。NHKもニュースにせず、民放の夜の報道番組も無視している。大物芸人の過激な女遊びを文春が執拗に報じているという、その程度にしかマスコミは扱っていない。
ワイドショーや週末芸能番組が撒いている言説の基調は、文春が一方的に世論を作っているとか、文春の主張だけで世論が押し流されているという、文春叩きのプロパガンダだ。松本人志の仲間たちが、文春を敵視し貶める印象操作をテレビで懸命に演じていて、告発記事の「不当性」を宣伝し、文春を悪玉化する空気の醸成に躍起になっている。文春誌面に登場する告発者が増えていくほどに、テレビ芸人の文春叩きのボルテージが昂まっている。本来なら、テレビ報道は、どのような告発が文春誌上でされているか、正確に客観的に整理して視聴者に説明すべきだろう。民放連盟が定めた『放送基準』には、前文に「正確で迅速な報道」が第一に謳われている。また民放連盟の『報道指針』には、「われわれは取材・報道における正確さ、公正さを追求する」「予断を排し、事実をありのまま伝える」と宣言されている。
『放送基準』や『報道指針』は、民放テレビ局の憲法のような最高規範のはずだ。だが、松本人志事件の報道においては全く守られていない。逸脱に終始した放送ばかりが溢れ、ひたすら問題が歪曲されている。文春が不当視され、矮小化され、その裏返しで松本人志の正当化が試みられている。本来、必要なのは正確な報道だ。どういう告発なのか、訴えを直視し、5W1Hを正しく伝えないといけない。事件は単なるゴシップやスキャンダルではない。刑法の不同意性交であり、重罪となる犯罪行為が告発されている。しかも複数の被害者から。これまでこの問題をネタにしたテレビ番組を数多く見てきたけれど、告発内容を概説した放送は一つもない。芸能人まがいのタレント弁護士が喋々しているが、被害を法的に解説した議論は一度も聞かない。どれもこれも名誉毀損の民事訴訟にフォーカスした勝敗予想だけだ。
第5弾までの連載に登場した告発者は10人。告発者が全て被害者というわけではない。
①厳密な法的意味で性被害者の範疇に入るのは、A子、B子、I子の3人である。
②C子とG子は不本意ながら松本人志との膣性交に及んだ事例で、
③元タレントとH子は松本人志との性行為を拒絶、芸人たちの前で激しく面罵されて心を傷つけられた事例である。
④D子とE子とF子の3人は、友人が松本人志に献上された事例で、性上納システムの存在と悪質性を証言するため取材に応じている。
文春の告発者は4パターンに分類される。①は間違いなく性被害者で、③も広い意味で性被害者と言えるはずだ。②を刑法の範疇で性被害者と呼ぶのは難しいが、性上納システムの罠で狩られた気の毒な餌食と言えよう。H子までの9人は、いずれも性上納システム(罠の飲み会)が関与しているが、I子は全く状況を異にしていて、仕事中に襲われた。
1/28 のサンジャポで、太田光が、事件に関係する吉本の芸人たちを念頭に置いて、自分を助けるべく行動しろと檄を飛ばした。この檄を合図に、静かにしていたたむらけんじや渡邊センスが口を開き、開き直りの弁を吐いて反撃を始めた。その口上は、性上納システムと女衒活動を否定するものである。この事件が組織的で計画的な性加害ではない旨を強調していて、性上納システムなどなく、単なる遊びの飲み会だったと言い、性加害幇助の潔白を言い張っている。おそらく松本人志と裏で連絡を取り合い、策を練った上での反論攻勢だろう。彼らは性上納システムの指摘と批判に狙いを定め、その言論を崩す反駁に集中している。性加害を証明する物的証拠はない。録音録画とか、体液を産婦人科医が採取・検出したとか、そうした物証はない。あくまで裁判所の判断の決め手は本人の証言であり、原告と被告とどちらの証言が正しいかである。
それゆえ、被告の文春と女性側にとって、性加害を証拠づける有力証拠として性上納システムの存在と前提はきわめて重要で、システムの実在を証明し説得できれば、裁判で有利な立場になる。文春の第2弾と第3弾は、まさしく性上納システムを立証するための記事だった。つまり、まさに今この瞬間、法廷の外で熾烈な裁判闘争が実質的に展開していて、両陣営が激しく応酬し合う総力戦が演じられているのである。普通に考えれば、現在、吉本興業はコンプライアンスの聴き取り調査を行っていて、関係者(女衒)は自由に外に向かってあれこれ言える立場ではないはずだ。吉本の会社には正直に事情を説明し、個々が外部に勝手に言い放つのは禁止のはずだ。外部への説明は会社が一本で統一するのがコンプライアンスの原則である。だが、たむらけんじと渡邊センスは、会社の法務上のオブリゲーション(⇒責任)など無視して、松本人志が裁判で有利になるように言いたい放題をやっている。
いかに吉本興業の実体が松本軍団そのもので、松本人志が自由に差配し統制する会社であり、コンプライアンス委員会など有名無実なものかが分かる。実際には、聴き取り調査などやってないし、外部の有識者の参加などというのも嘘だろう。コンプライアンス委員会のメンバーも公表されてないし、会議の日程や議事録も明らかにされていない。まともにコンプライアンス委員会が動いていて、吉本が芸人をグリップ(⇒掌握)できているなら、たむらけんじや渡邊センスの文春批判の抗弁は出ないのである。コンプライアンス委員会など口先だけで、世間の目をゴマカす偽装で、吉本を世間の追及から防衛する細工でしかない。実体が松本軍団である吉本は、社を挙げて松本人志の擁護と復権に尽力しているのであり、松本人志の下で一つに結束している。分裂もしていないし、松本人志と距離を置いてもいない。実権を持つトップは松本人志だ。松本人志が引退すれば吉本興業も解散せざるを得ない。
予想を二つ述べておこう。週刊文春は今後の連載において、松本人志による性加害事件だけでなく女衒芸人をフォーカスしたスクープを報じて行くだろう。性上納システムを否定している女衒芸人の反論と弁解を崩す暴露を突きつけ、性加害幇助者である彼らの虚偽と欺瞞を証明するだろう。松本人志以外の吉本傘下の子分芸人が、同様の性上納システムで女性を狩っていた事実をも暴き、当該システムが吉本軍団全体の悪弊であって、島田紳助以前からの慣行と伝統であった真相を詳らかにするものと期待する。そのことによって、性上納システムこそが本問題の核心であることを読者と裁判所に説得するはずだ。二つ目は、裁判所は、事実認定をするだろうということである。山口真由などは、裁判所は文春記事の真実相当性の有無にのみ争点を絞り、A子の被害の事実認定はしないだろうと言っているが、私はそうは思わない。
この事件は国民の大きな関心事であり、世界からも裁判の行方が注目されている。どこかの時点でBBCも報道するだろう。例えば、A子が女性弁護士を伴って記者会見場に現れ、伊藤詩織のように自ら被害を訴え、NHKで報道されるなどの場面があり、反響が起きれば、BBCも事件を世界に紹介するだろう。そうした進行となった裁判で、東京地裁が、事実認定の審理と判断から逃げ、お茶を濁した結論に済ませるとは到底思えない。証拠調べを入念にやり、幾人も証人を呼んで証言を聴き取り、何が真実なのかをジャッジするだろう。世界が納得する判決文を書くだろうし、そうしないと日本の裁判所の名折れになる。今回の裁判はジェンダーの裁判である。単なる芸能人の私的醜聞を争う裁判ではない。そのとき、最も重要な証拠案件となるのは性上納システムの集団活動であり、女衒の人間関係である。裁判所はこれに着目するだろう。
文春側の答弁書にも、性上納システムについて多く説明され、告発がされているに違いない。