2024年2月4日日曜日

フーシ派は「正しいことをして」罰せられるのだろうか?(賀茂川耕助氏)

「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
 紅海におけるイスラエル船籍を持つ船舶の航行を阻止するためにイエメンのフーシ派はミサイル攻撃を行っているため、一部の企業はアフリカ南部の喜望峰を迂回するルートを選択し、BPやシェルなどの大手石油会社はこの地域からの出荷を停止するなどして、すでに世界の海運地図の形を変え始めているということです。
 このフーシ派の攻撃は、国際法に準拠しているとはいえませんが、ガザ市民の大虐殺を単に手をこまねいて見ているよりは遥かに実効性があり、しかもイスラエル船籍以外は攻撃しないという十分に抑制的なものだと言われています。
 むしろ国際法違反は、米国の有志連合(イギリス、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダ)がいまイエメンに対して大々的に行っている爆撃こそが該当します。
 弱小国ながらイエメンが米国連合に負けることはないと言われています。
 原著者の国籍は不明ですが、掲題のような論調が西側で行われるようになってほしいものです。
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フーシ派は「正しいことをして」罰せられるのだろうか?
                耕助のブログNo. 2050 2024年2月4日
   Are the Houthis Being Punished for ‘Doing the Right Thing’?
                            by Mike Whitney
    大量虐殺を止めようとしない者は、人間性を失っている 
      – フーシ派のスポークスマン、モハメッド・アル・ブカイティ
中東での出来事が制御不能になりつつある。先週米国はイエメン本土のフーシ派の陣地を7回攻撃し、一方フーシ派は紅海で商船と米軍艦を5回攻撃した。同時にイランはシリア、イラク、パキスタンの拠点に複数の攻撃を仕掛け、イスラエルはレバノンとダマスカスの標的を攻撃した。火に油を注ぐかのようにさらにイスラエル国防軍(IDF)はガザに住むパレスチナ人への執拗な攻撃を続け、多数の死傷者を出している。要するに、中東全域で軍事活動が急激に活発化し、着実に増加しているのだ。 このことは、ここ数週間見られた低強度の紛争が、より暴力的で、広範囲に及び、予測不可能なものへと爆発しようとしていることを示唆している。多くのアナリストは、本格的な地域戦争が起こるかどうかの瀬戸際にあると見ている。これはワシントン・ポスト紙の記事からの引用である:
  バイデン政権は、イエメンのフーシ派を標的とした持続的な軍事作戦の計画を練っている。イエメンのフーシ派を標的とした 10日間に及ぶ攻撃で、フーシ派による海上交易への攻撃を食い止めることができなかったためだ。
   政府関係者は、イラク、アフガニスタン、シリアにおける過去の米国の戦争のように、この作戦が何年も続くとは考えていないと言う。同時にイエメンの軍事力が十分に低下する時期の予測もできないことを認めている。
 攻撃は今のところ米国よりもヨーロッパに大きな打撃をもたらしているが…フーシ派の作戦はすでに世界の海運地図の形を変え始めている。一部の企業はアフリカ南部の喜望峰周辺に船を迂回させることを選択し、BPやシェルなどの大手石油会社はこの地域からの出荷を停止した
 「何が起こるかを正確に予測することは不可能であり、将来のオペレーションを予測することもできない」と米高官は言った。「しかし原則は、このような高度な能力を持つテロ組織が、重要な国際的チョークポイントを通過する船舶を実質的に停止させたり、コントロールしたりすることは許されないと我々は強く感じているということだ」。
 米政府高官はまた、フーシ派を攻撃することで米国が出口戦略の乏しい紛争に巻き込まれ、主要同盟国からの支援も限られていることを懸念している。注目すべきは米国の最も強力な湾岸諸国のパートナーが米国の作戦への支持を保留していることだ。湾岸における米国の重要な同盟国であるカタールの首相は、西側の攻撃は暴力を止めず、地域の不安定化を助長しかねないと警告している。{1}
ワシントン・ポストの記事はほとんど新しい情報を提供しないが、いくつかの重要な点を明確にするのに役立つ:
1 米国は今、国連安全保障理事会、米議会、米国民の承認を得ていない別の「持続的軍事作戦」(戦争)に巻き込まれている。国内政治が悪化し、戦争に行くかどうかを大統領一人が決めるようになっているほど国内政治が悪化しているのは明らかだ。そして驚くべきことにその戦争は必ず、政府の代表という建前で政策を誘導する億万長者エリートたちの利益を促進するのだ。実際のところ、戦争を起こす権限はすべて彼らにある。
2  空爆だけではフーシ派の軍事力を「低下」させることはできないので、「作戦は何年も続くだろう」 (つまり、アフガニスタンのようにまた20年続くことになる)
 政権がフーシ派との直接対話を避けている本当の理由は、「テロ組織が……重要な国際的チョークポイントを通る海運をコントロールすることは単純に容認できない」からである。これは、ワシントンが対等でないと考える相手との交渉を拒否していることを暗黙のうちに認めているということだ。従って、唯一の選択肢は「先に撃って、後で質問する」ことなのである。
 興味深いことに、ワシントン・ポストは「フーシ派は、出口戦略が乏しく、重要な同盟国からの支援も限定的な紛争に米国を突き落とした」と認めている。著者が付け加えるべきだったのは、現在の戦略のすべてがいわゆるパウエル・ドクトリンに違反しているということだ。明確に達成可能な目的もなく、リスクとコストが十分に分析されたわけでもなく、他の非暴力的な選択肢がすべて出尽くしたわけでもなく、もっともらしい出口戦略もなく、米国民に支持されているわけでもなく、米国が国際的に広く支持されているわけでもなく、国家の安全保障上の重大な利益が脅かされているわけでもない。バイデンの外交政策チームは、パウエル・ドクトリンの主要な教訓をすべてすっぽかした。その結果、計画も最終目標も戦略目標もなく、イエメンに戦争を仕掛けるという計画は、おそらくここ最近で最も衝動的で思慮の浅い作戦となったのだ。
また、この計画がうまくいく保証もまったくない。それどころか、この計画は見事に裏目に出て、さらに大きな危機を引き起こすと信じるだけの理由がある。Responsible Statecraf(RS)の記事から、このクリップをご覧いただきたい:
ここでの本当の脅威は、米国による空爆の継続によるエスカレーションであり、それによって人々が殺される。RSがこのページで何度も報じているように、フーシ派は戦闘に慣れており、彼らの挑発に対する西側の反応によって、さらにそれは強化されている。多くの現実主義者は、再び報復暴力のスパイラルに陥ることの愚かさを批判している。それは本当の軍事危機、さらには米軍兵士の死さえももたらす可能性がある。
「(攻撃は)うまくいかないだろう。フーシの能力を十分に低下させることはできないし、海運への攻撃を止めることもできない」と国防優先主義のシニアフェロー、ベン・フリードマンは言う。「明らかに無謀なことをなぜするのか?自制心は、私たちが効果のない空爆を行わなければならないという法律はないことを思い起こさせる。無意味な暴力を用いないという選択肢は常にあるのだ」。{2}
サウジアラビアによる8年間の執拗な空爆は、フーシ派を強化することにしかならなかったが、同じことを繰り返そうという政権の熱意は衰えていない。バイデンは同じ政策が異なる結果を生むだろうと確信している。しかし、それは「狂気」の定義ではないだろうか?そして、規定された方法が実際に機能するという証拠がどこにあるのだろうか。アフガニスタン?イラク?シリア?リビア?ウクライナ?これらは、バイデンが正しい道を歩んでいると確信させる「軍事的勝利」の輝かしい例なのだろうか?
しかし、たとえバイデンチームが首尾一貫した軍事戦略を持っていたとしても、現在のアプローチには根本的な問題があり、なぜならそれは道徳的にまちがっている。米国はジェノサイド条約を実施しようとしている人々とともに行動すべきであり、彼らを敵として扱うべきでない。 フーシ派は、ガザにおけるイスラエルの略奪に対して建設的かつ(今のところ)非殺傷的なアプローチをとっているこのアプローチは、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約第1条に合致しており、次のように明記している:
 締約国は、ジェノサイドが、平和時であるか戦争時であるかを問わず国際法上の犯罪であり、その防止と処罰を約束することを確認する。
紅海を通過するイスラエル関連の商業船をフーシが封鎖しているのも、R2Pとして知られる「Responsibility to Protect(保護する責任)」の信条に沿ったものだ。これは2005年、史上最大の首脳会議である国連世界サミットで全会一致で採択された文書であり、ちなみにこの文書には米国の代表も署名している。以下はその抜粋である:
 個々の国家は、自国の住民をジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化および人道に対する罪から守る責任を有する。 国際社会はまた、国際連合を通じて、憲章第6章および第8章に従い、適切な外交的、人道的、その他の平和的手段を用いて、ジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する罪から住民を保護する責任を負う。
 第一の柱
    すべての国家は、4つの集団残虐犯罪から自国民を保護する責任がある: ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪、民族浄化である。
第二の柱
   より広範な国際社会は、個々の国家がその責任を果たすことを奨励し、支援する責任がある。
第三の柱
    国家が自国民の保護を明らかに怠っている場合、国際社会は、国連憲章に従い、適時かつ断固とした方法で、適切な集団行動を取る用意がなければならない。{3}
 フーシ派がイスラエル行きの船舶を一方的に封鎖することについて、国連安全保障理事会(UNSC)の承認を得ていないのは事実であるが、その理由は停戦決議を阻止したように、米国がそのような措置をすべて阻止しているからである。しかし国際社会が基本的な人道規範を実施できないという事実–米国の妨害行為による–は、人々や国家の義務を免除するものではない。国連の承認があればそれに越したことはないが、絶対に必要というわけではない。より高い優先順位は罪のない人々の命を救うことである。フーシ派のスポークスマン、モハメッド・アル・ブカイティは最近ツイッターで発表した声明の要約はこうだ:
    虐げられた人々を支援するために行動を起こすことは……真の道徳のテストである……そして、大量虐殺という犯罪を止めるために行動を起こさない者は……人間性を失っている。
    道徳的な……価値観は……人種や宗教によって変わることはない……パレスチナ人が受けているような不当な仕打ちを他の人間集団が受けていたら、宗教や人種に関係なく、彼らを支援するために行動を起こすだろう。
 イエメン国民は(コミットしている)…すべての国と国民の尊厳、安全、安心を保証する公正な平和を実現するために尽力する。 モハメド・アルブカイティ @M_N_Albukhaiti
フーシ派が普遍的に受け入れられている正義と人道の原則に従って行動していると考えるのは、私たちの考えが甘いのだろうか。フーシ派が理性的で、封鎖とガザでの猛攻撃を同時に終わらせる協定を交渉できる相手だと考えるのは間違っているだろうか?もしそうなら、なぜバイデンは彼らの港や都市を爆撃する代わりに、外交的に関与しないのだろうか?
そして、念のために言っておくが、政権とその同胞のメディアは、フーシ派による商業船への「無差別」攻撃のせいで、紅海の交通量が歴史的な低水準にあるとほのめかし続けている。しかし、それは事実ではない。月曜日、イランのホセイン・アミール=アブドラヒアン外相は(国連を訪問した際に)、紅海の交通量は、イスラエルに関連する船舶の航行が妨げられているという事実を除けば、比較的正常であるという証拠書類を提出した。つまり西側メディアは、戦争への突入を加速させるために、米国民を意図的にミスリードしている。以下はプレスTV(イラン国営メディア)の記事である:
 イラン外相は、衛星画像によれば、米国とイギリスがイエメンを攻撃した当時、紅海には約230隻の商船と石油タンカーが航行していたと指摘した。
「これは、占領しているイスラエル政権が運営する港に向かう船だけが阻止されるというイエメンの主張を、彼ら(米国とイギリス)がよく理解していたことを意味する」とアミール=アブドラヒアン外相は述べた。{4}

イラン外相の発言は、Xで公表された公式フーシ派声明によって強調されており、その声明は以下のように述べている:
  イエメン海軍は、封鎖とガザ侵攻が停止されるまで、紅海での作戦を堅持することを確約している。その結果、紅海における海上活動と航行は、イスラエルに所属する船舶やイスラエルの港に向かう船舶を除いて、すべての船舶に対して安全に促進される。イスラエルと関係のない船舶については、以下のチャンネル(無線および電子メール)を通じて、航行中ずっとイエメン当局との不断の連絡を維持することが極めて重要である。 イエメン軍は、大量虐殺を防止し、その責任者を処罰することを目的とする国際的な法的原則を厳守して作戦を遂行することに全力を尽くすことを改めて表明する。さらに、紅海およびより広範な地域における、妨げのない交通の流れを促進し、海上安全保障を維持することへのコミットメントを強調する。{5}
フーシ派が無差別に商船を攻撃しているという考えは、信ぴょう性が低いと思う。それよりもありそうなのは、このナラティブはイスラエルのライバルを悪者扱いするために調整されたものであるということだ。
最後に、ティム・アンダーソンの短いビデオを転記する。彼は、フーシ派が道徳的に優位な立場に立っただけでなく、米国とイスラエルが無謀で偽善的で、自国の利益を損なうような行動をしていると主張している。時間をかける価値があることがおわかりいただけると思う
   米国は、イスラエルの大量虐殺を阻止しようとしてフーシ派を外国テロ組織に指定した。アンサール・アラー(別名フーシ派)の封鎖の目的は国連ジェノサイド条約第1条を守ることである。イエメンは国連ジェノサイド条約に加盟していることから、フーシ派は、イスラエルがジェノサイドを犯している間、イスラエルへの武器や物資の輸送を止める義務があると言っている。米国は、大量虐殺を行っている者ではなく、大量虐殺を止めようとしている者をテロリストだと言っているのだ。
     アンサー・アラーをテロリストに指定するのも皮肉なものだ。米国は現在、キューバとベネズエラを一方的に経済封鎖している。 アンサー・アラーのイスラエル封鎖は、まだ誰も殺していないが、米国の封鎖は何千人もの人々を殺している。アンサー・アラーは大量虐殺を阻止するために封鎖を行っているのに対して、米国の封鎖は対象国を飢えさせ、集団的に罰することを目的としており、大量虐殺の一形態とみなすことができる。
     アンサー・アラーが処罰されているのは、テロのためではない。封鎖が機能しているから処罰されているのだ。イスラエルは99%の商品を海上輸送で輸入している。イスラエルのエイラート港はフーシ派によって封鎖され、活動が85%減少している。海運会社はそのコストを消費者に転嫁し、物価の上昇と輸入品の希少化を招くだろう…イスラエルにとって、戦争は経済不況に似ている。11月に行われた調査によると、イスラエルでは3社に1社が20%以下の操業率であり、半数以上の企業が50%の収益を失っている。労働省によるとイスラエルの労働人口の18%が戦争に招集され、イスラエルの労働力に大きな穴が空いたという。100万人以上のイスラエル人が国を去り、観光業は崩壊し、企業への投資も途絶えている。イスラエル財務省は、イスラエルのGDPは第4四半期に15%減少し、戦争はイスラエルに総額580億ドルの損害をもたらすと予測している。
    国務省の記録によれば、何十年もの間米国のエリートたちは紅海の支配権を失うことを懸念していた。そして2015年、米国はサウジアラビアがアンサール・アラーに対して行った大量虐殺戦争を武装し、資金を提供し、支援した。この戦争は人口の3分の2を飢餓の淵に追いやり、人類史上最悪のコレラの大流行を引き起こした。しかし、それでもアンサール・アラーを倒すことはできなかった。そして今、ほんの数年前まで米国の支援による大虐殺に直面していたイエメンの人々が、ガザにおける米国の支援による大虐殺に対して最も破壊的な行動を起こしている。これはもちろん米国にとって屈辱である
     米国がネルソン・マンデラとその支持者を「テロリスト」と見なしたのは、それほど昔のことではなかった。彼らはその後、南アフリカのアパルトヘイトを打ち破った。その意味で、フーシ運動に対する今回のテロリスト指定は、この非常に長い傾向の継続にすぎない。テロリズムは高度に政治化された用語である。もちろん、アパルトヘイト国家とその支持者は、アパルトヘイト国家を終わらせようとする試みをテロとみなすだろう。しかし、パレスチナや中東では、本当のテロリストは病院や学校、近隣全体を絨毯爆撃している者たち、つまりイスラエルと米国なのだ。
イエメンのアンサーアラー率いる連合政府(「フーシ派」)が国際法を守る一方で、米国は常に国際法を破っている。    – ティム・アンダーソン (@timand2037) 2024年1月21日
Links:
{1} https://www.washingtonpost.com/national-security/2024/01/20/us-military-yemen-houthis/
{2} https://responsiblestatecraft.org/new-us-strikes-yemen-houthis/
{3} https://www.globalr2p.org/what-is-r2p/
{4} https://www.presstv.ir/Detail/2024/01/23/718736/Iran-has-sternly-warned-Washington-against-attacks-on-Yemen,-says-Iranian-foreign-minister
{5} https://twitter.com/Aldanmarki/status/1749612410795700728

https://www.unz.com/mwhitney/are-the-houthis-being-punished-for-doing-the-right-thing/