幻の映画「ひろしま」が24日、秦野市平沢の市文化会館で上映されます。
この映画の監督補佐だった小林大平氏の息子で映画プロデューサー小林一平さん(67)が、埋もれさせまいと2008年から再上映運動を開始したもので、これまで米国など国内外70カ所で上映してきました。
原爆投下後の広島の惨状を克明に描いた映画「ひろしま」は1953年(昭和28年)に封切られ、1955年第5回ベルリン国際映画祭長編映画賞に輝くなど、作品は海外でも高く評価されました。
一部の米紙は高く評価したものの、心ない米メディアが「日本はいまだに原爆投下を恨んでいる」などと、全く見当外れの非難記事を載せるなどしたために、結局大手映画会社が上映を取りやめて、あまり公開されない「幻の映画」となってしまいました。
原作は『原爆の子〜広島の少年少女のうったえ』(岩波書店、1951年)で、映画には山田五十鈴、月丘夢路らの女優陣・俳優陣に加え、約9万人の広島市民らがエキストラとして出演し、被爆現場のむごい光景を生々しく再現しました。
(関係記事)
7月19日 原爆の惨状克明に描いた映画「ひろしま」が再上映
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原爆の惨状 克明に描写 幻の映画「ひろしま」あす上映
東京新聞 2014年8月23日
被爆直後の広島の惨状を描いた幻の映画「ひろしま」(関川秀雄監督)が24日、秦野市平沢の市文化会館で上映される。ベルリン国際映画祭長編映画賞受賞作だが、約60年前の封切り後、一部シーンのカットを迫る大手映画会社の要求を断り、あまり上映されなかった。近年再上映が始まっているが、県西部では初めてという。 (西岡聖雄)
当時の学生の文集「原爆の子」の収録作をもとに筋書きを練り、広島で撮影。被爆した後もたくましく生きる人々の姿を描く。「出演が供養になる」と話した遺族や被爆者を含む市民八万八千人が出演し、衣類や生活用品、防毒マスクなども撮影用に提供した。
社会派の熊井啓氏が助監督を務め、映画「ゴジラ」で知られる伊福部(いふくべ)昭氏は音楽を担当。作品中の音楽は「ゴジラ」でも随所に使われているという。
監督補佐だった小林大平氏の息子で映画プロデューサー小林一平さん(67)が、埋もれさせまいと二〇〇八年から再上映運動を開始。米国など国内外七十カ所で上映してきた。
秦野市では、市民や市議らの実行委員会が上映する。実行委の高橋紀代子さん(62)は「東日本大震災でも復興期にいろんな問題が出ているが、復興期を生きる被爆者の思いも描かれている」と話す。
上映は午前十時と午後一時半。当日券千円、学生五百円。上映後、子役を務めた茅ケ崎市の亘(わたり)征子さんらがエピソードを話す。被爆瓦なども展示する。問い合わせ先は実行委=電0463(75)1832。
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広島平和記念資料館の資料などによると、一九四五年八月六日、東京スカイツリーとほぼ同じ高さの上空六百メートルで原爆がさく裂し、直後に現れた火の玉(直径二百八十メートル)は太陽並みの百万度以上。爆心地付近の地表では三千~四千度と、鉄が気体になる沸点より高温になり、人間も蒸発した。放射線、熱線、爆風による人類が経験したことのない殺され方で、年末までに十四万人が死亡。投下当時、三十五万人が広島市にいたという。