2014年8月6日水曜日

九条俳句不掲載問題で、作家の森村誠一氏が埼玉新聞に寄稿

 さいたま市の三橋公民館が公民館だよりに、俳句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の掲載を拒否した問題で、同県出身の小説家 森村誠一さんが、「九条守れの俳句、いまこそ掲載を」とする文書を埼玉新聞に寄稿しました。
 
 寄稿文は、ソフトな語り口の短い文章ですが、憲法99条、98条、97条にも言及したきちんとした論文にまとめられています。
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「九条守れ」俳句、今こそ掲載を 熊谷出身の作家・森村誠一氏が寄稿
埼玉新聞 2014年8月5日
 熊谷市出身の作家森村誠一さん(81)が、さいたま市大宮区の三橋公民館が公民館だよりに、俳句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の掲載を拒否した問題で埼玉新聞に寄稿。森村さんは、公務員は憲法尊重擁護義務があり、憲法9条改正の動きが強まっている今こそ「九条守れ」俳句を掲載すべきだと、している。
(以下が寄稿文)
 「九条守れ」俳句が、さいたま市大宮区の三橋公民館の「公民館だより」への掲載を拒まれたことが、憲法で保障された表現の自由の侵害であるとして、さいたま市の多くの市民の批判や苦情を集めています。
 
 これに対し、公民館側は、「憲法を見直す動きが活発化しているなか、公民館の考えであると誤解される」と説明しています。公民館長から、「意見が二つに割れている問題で、一方の意見だけを載せるわけにはいかない。七月号は俳句欄を削除する」と、「公民館だより」に俳句を掲載している俳句教室に通告があったそうです。
 
 また市長は記者会見で、憲法が保障する表現の自由を侵したのではないかと質問されると、「私たちは(表現の自由に)制約をするつもりはない。一方だけ載せると、むしろ表現の自由に制約をあたえかねない」と答えたそうです。
 
■一方に偏せず
 「九条守れ」俳句掲載拒否問題は、市長の言葉のように「一方だけ載せると、むしろ表現の自由に制約をあたえかねない」、また館長の「意見が二つに割れている問題で、一方の意見だけを載せるわけにはいかない」という回答そのものが、一方の意見に偏っていると思います。
 まず、憲法九十九条で憲法尊重擁護義務が規定され、「公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とされており、九十八条で、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する(中略)全部又は一部は、その効力を有しない」と規定されています。
 つまり「九条守れ」俳句の掲載は最初から合憲であり、憲法尊重擁護義務のある公務員が「九条守れ」俳句を掲載することは、決して、一方の意見のみに偏っていることになりません。
 
■精神拠点
 さらに、憲法が保障する表現の自由の下、「九条守れ」俳句に反対する俳句を掲載すれば、双方、恨みっこなしになります。反対俳句の作者が掲載したくなければ、表現の自由を棄権したわけであり、なんの問題もありません。
 戦争の犠牲を踏まえて獲得した不戦憲法9条が、暴走政権によって揺れている今こそ、「九条守れ」俳句の掲載のベストタイミングです。
 
 九十九条「憲法尊重擁護義務」の下、大手を振って掲載すべき時期に、暴走政権下にあるタテ社会の成員の辛い所でありましょうが、公務員はお上の家来ではなく、その精神拠点は、国民(市民)にあるべきだと思います。
 世論が二分しているのではなく、一内閣が勝手に国の最高法規である憲法と条規に反して解釈改造しているだけです。改めて、第九十七条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、(中略)現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」ことを思い出し、「公民館だより」に引用してはいかがでしょう。