2014年8月25日月曜日

集団的自衛権行使容認は 軍法会議・徴兵制の復活につながる

 現行憲法は76条で一般の裁判所から独立した「特別裁判所」を禁止しており、軍事裁判所設置することはできません。軍事裁判では結果として国民の裁判を受ける権利などを制限することになるので、現憲法下では認められません。
 
 しかし、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定が行われたことで、今後、自衛隊の海外での戦闘行為の可能性が出てきたのに伴い、現地での自衛隊員の敵前逃亡や命令拒否、不服従、秘密漏えいなどについて、いちいち国内の一般の裁判所で審理することで良いのかという問題が出てくるということです。
 
 要するに政府が簡単に海外派兵の可能性を打ち出したことで、行く行くは軍法会議復活や、それとは別に安倍首相が否定する徴兵制の復活の懸念が出てきたわけです。集団的自衛権の行使容認は、そういう問題につながるということを十分に自覚する必要があります。
 
 東日本新聞の「集団的自衛権・軍法会議復活 とっぴな懸念ではない」とする社説を紹介します。
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[集団的自衛権・軍法会議復活] とっぴな懸念ではない
東日本新聞 2014年8月24日
 集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で容認する閣議決定が行われたことで、今後、自衛隊に軍事司法制度、いわゆる「軍法」と「軍事裁判所」を復活させるのか否かという問題が出てきた。
 
 軍事裁判所は、かつての「軍法会議」のことだ。来年4月以降に予定される関連法案の国会審議で論議を呼ぶことは間違いない。政府には丁寧で分かりやすい説明が求められる。
 現行憲法は76条で一般の裁判所から独立した「特別裁判所」を禁止しており、自衛隊は軍事裁判所を設置できない。
 敵前逃亡や命令拒否、不服従、秘密漏えいなどについては、自衛隊法で懲役7年以下の罰則が定められている。当然ながら、審理は一般の裁判所で行われる。
 そもそも、戦争をしないと決めていたのでそれでも問題はなかった。しかし、集団的自衛権の行使容認によって、自衛隊員は死に直面する戦場へかり出される可能性もある。これまでさほど深刻でなかった敵前逃亡などが現実味を増してくる。
 他国では軍事司法で敵前逃亡に死刑などを科している。審理するのは軍事裁判所である。
 軍事裁判所の復活は、自衛隊の海外での活動領域が広がるのに伴って、関係者の間で必要性が指摘されてきた。現地で罪を犯した隊員を裁く法体系がないからだ。
 こうした軍事司法制度については、先の集団的自衛権の審議でほとんど論及されなかった。このため、自衛隊法の改正で罰則を強化するのかどうかなど、安倍政権の方針ははっきりしない。
 一つの手掛かりは、自民党が2012年にまとめた日本国憲法改正草案だ。
 そこでは、自衛隊を「国防軍」と位置付け、「審判所」を置くとした。審判所は、被告が一般の裁判所へ上訴する権利を保障しているため特別裁判所ではないとするが、解説書では「いわゆる軍法会議」と説明している。
 本音では軍法会議と述べているのに、審判所とするのは国民の反発を恐れているからだろう。
 集団的自衛権の行使容認によって予想される自衛隊の厳しい状況を思えば、軍法会議復活の懸念は決してとっぴなものではない。安倍晋三首相が否定する徴兵制の復活もそうだ。
 
 憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認の是非はむろん、軍法会議と徴兵制の復活の観点からも国会審議を注視する必要がある