2017年11月7日火曜日

横田政府日本支配を強烈演出したトランプ訪日(植草一秀氏)

 トランプ大統領が初来日しましたがそれは横田基地を経由してでした。日本のメディアは何くわぬ顔で報じていますが、それこそは日本の対米従属を象徴する出来事でした。
 植草一秀氏が、その意味するところを明確に論じ、日本は今もなおアメリカに全面的に支配されていると問題提起しました。

 米軍横田基地は勿論治外法権で、横田空港を経由すれば日本にフリーパスで入・出国することができます。
 実際、1965年にクーデターを起こし南ベトナムの副大統領になったグエンカオキ空将は、ベトナム戦争時代には度々戦闘機を操縦して横田空港に降り立ち、夜の銀座を堪能してからまたにベトナムに戻ったと伝えられています。

 またどんな大物であろうと、横田基地に連れ込まれてしまえば日本の官憲は手が出せないので、その後は生殺与奪の権限は米軍に委ねられます。考えてみれば極めて恐ろしいことで、これまでも恐怖の対象として「横田幕府」という言われ方もして来ました。

 そういうものが首都圏に厳然と存在している事実は日本のあり方を象徴するものです。
 植草一秀氏のブログを紹介します。
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横田政府日本支配を強烈演出したトランプ訪日
植草一秀の「知られざる真実」 2017年11月 5日
(阿修羅 11.5 市村 悦延 投稿 より転載)
トランプ大統領が来日した。トランプ大統領が降り立ったのは羽田でも成田でもない。
横田基地である。日本を統治しているのは日本政府ではなく、横田政府だと言われる。
トランプ大統領は来日して最初の演説を横田基地で行った。演説の背景は巨大な星条旗で覆い尽くされた。日米の国旗を並べて掲げているのではない。
星条旗だけが一面に張り巡らされて、その前でトランプ大統領が演説した。演説は日本の主権者に対するものではない。日本に駐留する米軍兵士に向けての演説であった。

「終わらない占領」日本はいまなお米軍によって占領され続けている。米軍が日本を支配している。
米国人は横田基地を通過して、いつでも自由に日本に出入りすることができる。東京六本木には米軍施設があり、横田基地に飛来した米軍要人は日本政府の管理の外側で日本に飛来して六本木の米軍ベースを経由して日本で活動し、そして、何事もなかったかのように米国に帰国する。
日本はいまなお、米国の支配下に置かれている。そのことを改めて見せつけるための演出が繰り広げられたことになる。

日本で米軍が事故や事件を引き起こしても、日本は現場検証することすらできない。日本国憲法の上に日米地位協定が存在する。日本の空を飛ぶ権利は米軍によって制限されている。
米軍は日本政府のいかなる許可をも必要とせず、日本の空を勝手に飛行できる。ポツダム宣言も、サンフランシスコ講和条約も、占領軍の日本からの撤退を明記しているが、例外を定める条項が付記されて、戦後72年を経過したいまも、米軍が日本駐留を続け、日本を支配し続けている

この米国による日本占領、米国による日本支配に、一切の抵抗、反抗を示していないのが安倍晋三首相である。安倍首相の祖父である岸信介氏は米国により助命され、爾来、米国のエージェントとして活動し続けた。この経緯をそのまま引き継いでいるのが安倍晋三氏である。
米国にモノを言わず、米国に隷従する。これが「安倍流」であるが、多くの日本国民が米国への隷従に異論を唱えない。安倍首相が唱えた「日本を取り戻す」の主語は「米国」だった。「米国が日本を取り戻す」が安倍首相の基本スタンスなのである。
この意味で安倍首相はトランプ大統領の「アメリカファースト」の主張の信奉者であるが、「アメリカファースト」は日本の主権者の利益を最優先しないことをも意味している。

トランプ大統領が大統領選に当選したのは昨年の11月8日だ。
トランプが勝利すればドルと米国株価は暴落、クリントンが勝利すればドルと米国株価は急騰と言われていた。そして、クリントンが勝利することは確実だと言われた。
しかし、結果はトランプの勝利になった。そして、これ以降、米国株価は急騰に次ぐ急騰を続けてきた。
昨年11月4日のNYダウ安値は17883ドルだった。本年11月3日高値は23557ドルである。
この1年間にNYダウは5674ドル、31.7%の上昇を示した。
トランプ当選でドル暴落、株価暴落を予測してきた専門家は、完全な見通し失敗になった。

メディアは大統領選のさなかも、大統領選後も、大統領就任後もトランプ攻撃をし続けてきた。日本のメディアもNHKを筆頭にトランプ攻撃を展開し続けた。しかし、トランプ政権は崩壊していない
そして、トランプ来日となると、手のひらを返して、今度はトランプを持ち上げる報道に転じている。トランプ長女のイバンカ訪日は、トップスター訪日の扱いである。日本のメディアの軽薄さ、NHKの層の薄さが改めて鮮明になっている。トランプ大統領に対する批判は多いが、トランプ氏の現実対応能力は決して低いものでない。この本質を見誤ると、現実を洞察することはできない。このことを改めて認識し直すべきである。

トランプ大統領がメディアの激しい攻撃を受け続けてきた理由は、トランプ氏が米国を支配する支配勢力の直接支配下の人物ではないからである。
通常、米国の大統領候補になる者は、米国を支配する巨大資本の支配下の人物である。巨大資本の支配下に入らない限り、大統領選を戦い抜く資金を確保できないからだ。
しかし、昨年の大統領選では、二人の例外候補が健闘した。その一人がトランプであり、いま一人は民主党候補を争ったバーニー・サンダース上院議員である。
トランプは自前資金で選挙を戦い、サンダース氏は民衆のカンパによって選挙を戦ったのである。
トランプ氏は巨大資本が推進してきたTPPからの離脱を公約に掲げ、大統領に就任すると、公約どおりにTPPからの離脱を決定した。トランプは米国を支配する巨大資本の支配下にないことが改めて確認された

しかしながら、米国大統領が大統領職を遂行するには、どうしても必要な事項がある。それは議会との融和である。
大統領には強大な権限が与えられるが、大統領提案を無条件に実行できるわけではない。主要な提案は、議会の同意を得て、初めて実現できる。
したがって、大統領が自身の提案を実現してゆくためには、議会との融和が必要不可欠な条件になる。
トランプ大統領は独自の主張を維持しつつも、他方で議会との融和を図っている。この点を見落とすわけにはいかない。

これまでの議会対応で見落とせない重要なポイントが二つあった。
一つは、最高裁判事人事を、上院共和党の協力を得て、トランプ大統領の意向どおりに実現したことだ。最高裁判事の構成は共和党系4名、民主党系4名の拮抗した状況にあった。9人目の判事を承認させることは難航したが、トランプ大統領は上院共和党の協力を得て、最高裁判事人事を決着させた。
入国審査強化などの大統領令に対して違憲訴訟が各地で提訴されているが、最終的な決定権限は最高裁にある。最高裁の判事構成で共和党系判事が過半数を制することの意味は圧倒的に大きい。この人事をトランプ大統領が成立させた。

いまひとつの事案は、政府債務上限引き上げ、暫定予算制定について、トランプ大統領が議会民主党の協力を得て、これを円滑にクリアしたことだ。
これまで、債務上限引き上げ、暫定予算に関する議会審議が難航して、大きな混乱が何度も繰り返されてきた。この問題もトランプ大統領は混乱を引き起こすことなくクリアした。
メディアによるトランプ批判をよそに、トランプ大統領は要所を要領よくクリアしていることが分かる。
人事では大統領選勝利の立役者であったスティーブン・バノン氏を解任した。トランプ大統領は米国の軍産複合体との衝突を避けているのだ。
トランプ氏は米国を支配する巨大資本の支配下の人物ではないが、この巨大資本勢力と正面からぶつかることも巧みに避けている。トランプ大統領の現実主義が垣間見える。

問題は日本の対応である。
安倍首相はただひたすら、米国の指令、命令に隷従しているだけである。「米国のポチ」に徹すれば、たしかに米国と衝突することはないだろう。
しかし、そのことが、日本の主権者の利益を損なっていることが問題なのだ。安倍首相はTPPを推進してきたが、TPPはグローバルな巨大資本の利益を極大化することを目的とする枠組みであって、日本の主権者にとっては「百害あって一利のない」枠組みだ。
安倍首相はグローバルな巨大資本の命令に従って、これを推進している
トランプ大統領がTPP離脱を決めたのは、TPPが米国民に不利益を与える部分があるからだ。しかし、その米国は日本に対しては米日FTAを求める可能性が高い。トランプ大統領も、日本から奪えるものは奪おうとの考えを有している。

巨大資本の言いなりになり、米国政府の言いなりになっていれば、日本は奪われるだけになる。日本の主権者の利益は損なわれるだけなのだ。
日本の首相として必要な行動は、日本の主権者の利益を守るために、グローバル巨大資本に対しても、米国大統領に対しても、言うべきは言う、日本の主権者利益を守るべきは守る、という姿勢である。安倍首相はこの点を完全に欠いている。
ゴルフに興じ、米国や巨大資本の言いなりになっているだけでは、日本の主権者の利益は守られない。
対米従属、対米隷属の外交姿勢から脱却することが、いま何よりも求められている。