拉致問題の解決を求める新潟県民集会が18日、新潟市内で開かれ、横田めぐみさんの弟拓也さん(49)や拉致被害者の曽我ひとみさん(58)らと一緒に参加しためぐみさんの母早紀江さん(81)が
「娘を捜し回った日を思うと新潟に来ただけで背中が寒くなる気がします。私たちも年を取ってしまいましたので、せめて元気なうちにめぐみちゃんを迎えてあげたい。それだけが望みです」(NHK)、
「安倍総理には今度こそ金正恩(キムジョンウン)と話し合いをしてほしい」、「被害者は悪魔の手にかかって、あの国に閉じ込められて、今も『助けてください。早く来てください』と言っている」、「今がチャンス。これは日本国家の問題です。安倍総理が平壌に行き、金正恩とけんかじゃなく、ちゃんとした話し合いをしてくれたらありがたい」(朝日新聞)
と訴えました。
日刊ゲンダイは、安倍首相は拉致問題をとことん自分の人気取りに利用しているだけで、本来は拉致問題を抱える日本こそ、北朝鮮との対話路線を訴えなければいけないのに、「対話は無力」と決めつけ、ただ制裁強化を叫ぶだけ(評論家の森田実氏)であるとして、第2次安倍政権の発足から5年が経つのに、拉致交渉は1ミリたりとも進まないどころかむしろ後退しているとしています。
14年5月に北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束する「ストックホルム合意」に至ったのに、北が核実験や弾道ミサイルを試射したことを理由に16年2月に、日本が新たな独自制裁を決めると、北朝鮮は、日本が「独自制裁の解除」を約束した合意を破棄したとして、再調査の全面中止を宣言しました。
それにもかかわらず、相変わらず拉致問題を自身の人気取りのパフォーマンスに利用するのをやめず、「自分だけが拉致問題を解決できる」、「自分でなければ解決できない」と公言してやまない一方で、解決に向けては指一本動かすこともなく、事態を客観的に認識することもできていないのは理解に苦しみます。
40年目を迎えた15日の会見で、母親の早紀江さんが、
「解決にこれだけ時間がかかると、(政府の言うことを)『本当に信じてよかったのか』という思いが家族の中にもあります」、「被害者には元気でいて欲しいので、安倍総理とトランプ大統領がなんとか戦争が起きないように考えていただき、ギリギリのところで良い知恵が与えられて解決に向かって欲しい」と述べました。
極右のリーダーを持つ「救う会」などが様々に干渉する中で、控え目ながらもあそこまで口にしたのはよくよくのことです。
新潟日報と日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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救出一日も早く めぐみさん拉致から40年 県民集会
新潟日報 2017年11月18日
新潟市で北朝鮮に拉致されて15日で40年となった横田めぐみさん=失踪当時(13)=らの帰国を願う「忘れるな拉致 県民集会」が18日、同市中央区の市民芸術文化会館で開かれた。めぐみさんの母早紀江さん(81)が娘の一日も早い救出を訴えた。
集会は新潟日報社と県、新潟市が主催し、市民ら約800人が集まった。めぐみさんの弟で家族会事務局長の拓也さん(49)も駆け付けたが、父滋さん(85)は体調を考慮して欠席した。
早紀江さんはトランプ米大統領との面会に触れ「今がチャンス。時を置かずして畳み込むように話合いをしてほしい。家族も老齢化している。元気にめぐみちゃんと迎えてあげたい」と声を振り絞った。
佐渡市の拉致被害者曽我ひとみさん(58)は一緒に拉致された母ミヨシさん=同(46)=への思いを語った。拉致の疑いがある特定失踪者大沢孝司さん=同(27)=の兄昭一さん(81)、中村三奈子さん=同(18)=の母クニさん(74)は拉致問題の早期解決を求めた。
加藤勝信拉致問題担当相は政府の決意を述べ、本社特別編集委員の伊豆見元・東京国際大教授が北朝鮮情勢について講演した。
安倍政権で事態は動いたか
目に余る拉致被害者の政治利用 横田夫妻が気の毒だ
日刊ゲンダイ 2017年11月18日
(阿修羅 投稿者 赤かぶ より転載)
特別国会の召集から17日。安倍首相がようやく所信表明演説を行った。演説の原稿は約3500字と、前回2016年9月の約7300字から半分以下に減り、安倍内閣では最も短い。
内閣支持率が急落してから繰り返してきた「丁寧な説明」や「謙虚さ」の言葉もなく、従来の叙情的なエピソードの挿入もない。やる気ゼロのあっさり演説からも、“もりかけ疑惑”の追及から逃げたがり、よっぽど国会を開きたくないのだな、と安倍の心情がひしひしと伝わってきた。
それでも安倍が忘れなかったのは、先のトランプ米大統領来日時における拉致被害者家族との面会のアピールだ。
「トランプ大統領は、ご家族の思いのこもった訴えに熱心に耳を傾けてくれました。ご家族もご高齢となる中で、拉致被害者の方が再びふるさとの土を踏み、ご家族と抱き合うその日まで、私の使命は終わりません」
安倍は得意げに語ったが、北朝鮮への圧力一辺倒でどうやって拉致被害者を取り戻すのか。安倍は9月の国連演説で「対話による(北朝鮮)問題解決の試みは一再ならず無に帰した」と言い切った。世界各国の代表を前に「北との対話はムダ」と堂々と言い張る人物が、北と真剣に交渉する気があるとは思えない。
本気で解決するつもりがないのなら、被害者家族をトランプに引き合わせたのも、「拉致の安倍」を強調するためのプロパガンダに過ぎない。そもそも被害者家族をトランプに会わせることで、拉致問題が解決するのか。安倍はとことん拉致問題を人気取りに利用しているだけなのだ。
■「対話による解決」を求める切実な思い
さすがに横田夫妻も、安倍の薄汚い魂胆には気づいているのだろう。めぐみさんが拉致されて40年目を迎えた15日の会見で、母親の早紀江さんは、次のように複雑な思いを吐露していた。
「政府の方々は必死で国家のために働いていると信じるが、解決にこれだけ時間がかかると、『本当に信じてよかったのか』という思いが家族の中にもあります」
「被害者には元気でいて欲しいので、安倍総理とトランプ大統領がなんとか戦争が起きないように考えていただき、ギリギリのところで良い知恵が与えられて解決に向かって欲しい」
慎重に言葉を選びながらも、北との戦争に結びつきかねない「圧力一辺倒」ではなく、「対話による解決」を願う切実な気持ちが感じ取れるではないか。政治評論家の森田実氏はこう言った。
「本来は拉致問題を抱える日本こそ、北朝鮮との対話路線を訴えなければいけないのに、安倍首相は『対話は無力』と決めつけ、制裁強化を叫ぶのみです。強硬姿勢が問題解決を遠ざけているのに、被害者家族をトランプ大統領の前に引っ張り出し、自身の人気取りのパフォーマンスに利用するとは言語道断です。政府に拉致交渉を預けている手前、被害者家族も政治利用されていることを知りながら、安倍首相には従わざるを得ない。そんな立場は重々承知で、被害者家族を政治利用するだけの安倍首相は人の道に反しています。横田夫妻をはじめ、被害者家族が実に気の毒です」
なぜ、どのメディアも被害者家族が政治利用され続けている実態を批判しないのか。摩訶不思議である。
被害者家族もうんざりの政治パフォーマンス
第2次安倍政権の発足から5年間、拉致交渉は1ミリたりとも進まず、むしろ後退している。
14年5月に北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束する「ストックホルム合意」に至ったものの、北の核実験や弾道ミサイル発射を理由に16年2月に、日本が新たな独自制裁を決めると、北は再調査の全面中止を一方的に宣言。合意内容で日本は「独自制裁の解除」を約束していたから、新たな制裁は合意を破棄したに等しいとの言い分だ。
この時も安倍は「これだけの挑発行為を行ったからには今まで通りとは決していかない」とイケイケだった。北に合意を守る気があったかは疑問だが、安倍の場当たり的な圧力路線が付け入る隙を与えたのは間違いない。「拉致問題は安倍内閣の最重要課題」と意気込みながら、いかに口先だけで、戦略を描けていないかがよく分かる。
結局、拉致問題が最も進展したのは15年前。02年9月に当時の小泉首相が訪朝し、金正日総書記に拉致の事実を認めさせた上に謝罪させ、被害者5人の一時帰国を取りつけた瞬間である。
当時、官房副長官だった安倍は「一時帰国」の名目で帰ってきた拉致被害者を北に返すのを、強硬に反対して止めたと訴えている。自身のフェイスブックでも、小泉訪朝の立役者で当時、外務省アジア大洋州局長だった田中均氏を、〈彼に外交を語る資格はない〉と罵倒。田中氏が5人を再び北に戻すよう主張したのを引き合いに、〈あの時田中均局長の判断が通っていたら5人の被害者や子供たちはいまだに北朝鮮に閉じ込められていたでしょう。外交官として決定的判断ミス〉とコキ下ろしたこともある。
「安倍首相には田中氏の外交姿勢が“弱腰”に映るのでしょうが、首相が常に言う通り『政治は結果が全て』です。この5年間、拉致被害者の現実は何も変わっていません。安倍首相が本気で拉致交渉に取り組むのなら、この問題で最も成果を上げた田中氏にアドバイスを求めるのがスジ。弱腰外交を批判するのは、拉致問題で成果を出してからにしてもらいたい」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
北は一時帰国をほごにした安倍を「将軍様に恥をかかせた」と恨んでいるという。外交関係者の間では「北は『安倍政権とだけは絶対に交渉しない』と中国にも米国にも伝えている。そのことは安倍首相本人も知っている」とさえ言われている。この政権が続く限り、北は恐らく拉致交渉に応じることはない。
■「拉致を使ってのし上がった」にブチ切れ
安倍が自慢する「体を張って拉致被害者を日本にとどめた」という逸話も怪しい。家族会事務局長だった蓮池透氏は15年11月の本紙「注目の人直撃インタビュー」で、「安倍さんの手柄というのは全然違います」「(北に)帰国しないことを持ちかけたのが私で、最終的に弟(薫氏)が決断した」と指摘。そして、こう語っていた。
「『拉致の安倍』を売り物にして、官房副長官から総理へと駆け上がったのに、拉致を政治利用しているだけじゃないか。そんな疑問すら浮かびます」
蓮池氏の著書「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」には、次のエピソードが出てくる。
14年の総選挙で蓮池氏の地元・新潟2区で劣勢だった自民候補の応援演説に安倍が訪れた。演説会には薫氏が招待されたが、多忙を理由に断ると、両親が駆り出されたという。会場で安倍は「拉致被害者、蓮池薫さんのご両親も来ておられます」とアピール。蓮池氏の母は「結局、安倍さんのダシにされただけだね」と嘆いたそうだ。
昨年1月の衆院予算委員会で民主党の緒方林太郎議員(当時)に「安倍首相は拉致を使ってのし上がった男でしょうか」と質問されると、安倍は「議論する気すら起こらない」とブチ切れた。人間は本当のことを言われると怒るものだが、安倍も例外ではない。
「何ひとつ結果を出していないのに『ゴマカシ』と『スリ替え』で国民をけむに巻き、見せかけの成果を強調するマヤカシ政治。安倍政権は一事が万事、この調子で最も倫理に反する形で表れているのが、被害者家族に期待を持たせて進展ゼロの拉致問題なのです」(五野井郁夫氏=前出)
散々政治利用しながら、被害者家族には寄り添うフリ。自分ファーストの冷血首相の偽善の姿には吐き気すら覚える。