横田早紀江さんは6日にトランプ大統領と面会することになっていますが、いま北朝鮮の金正恩氏と最悪の関係にあるトランプ氏に拉致問題を解決する力があるなどとは思っていない筈です。
従って10月19日のクリスチャンの後援会的集会の席で、早紀江さんが「北朝鮮と戦争をしないでください」と頼もうかと語ったのは、それが唯一実効性のある「お願い」になる筈でしたが、LITERAによれば同会に出席していた「救う会」の関係者が、彼女の言葉をさえぎるように「政治的発言はしないほうがいい。大統領に会えるのも安倍さんのおかげなんですから」と述べたということです(女性自身)。
LITERAがこの問題を取り上げました。
安倍晋三氏は小泉内閣の副官房長官として政権幹部としてデビューした当初から、ことあるごとに拉致問題を利用してきましたが、第二次安倍内閣を結成してからもう5年になるのに、拉致問題は何一つ前進していません。
それなのに「家族の会(拉致被害者家族連絡会)」から何の不満も出ていないのは不思議なことです。
安倍首相はこの9月17日にも拉致被害者家族と面談したうえで「今年中に全拉致被害者の救出を!国民大集会」に出席し、「拉致問題は、安倍内閣の最重要課題であり、最優先で取り組んでいくという姿勢にいささかの変わりはありません」と強調し、トランプ大統領が9月19日に国連総会で拉致被害者に言及したときも、安倍首相はその後再び被害者家族と面会し、それは自分の尽力の結果であると功績を誇ったということです。
しかし、トランプ氏がそんなことに言及したからと言って、北朝鮮にすれば自分たちを貶める一つの材料にしたと捉えるだけで、事態の進展につながる可能性などは皆無です。
安倍首相の空虚な演説といい、トランプ大統領の無益なリップサービスといい、いくら「家族の会」でもそんなものに単純にすがっているとは思えませんが、そうした批判は聞こえてきません。
ところで「救う会」というのは、正しくは「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」といい、LITERAは下掲の記事とは別の 「北朝鮮拉致問題を政治利用するな!~」(10月20日 http://lite-ra.com/2017/10/post-3525.html) で、概略次のように報じています(詳細は、上記URLから原文にアクセスしてください)。
「救う会」は、2002年の小泉訪朝直後から「家族の会」と同様に、大きな影響力をもつようになった団体で、その会長は、第一次安倍政権のときの首相のブレーンと言われ、日本会議と関係の深い西岡力氏が務めています。
彼は今も「救う会」の集会などで安倍首相との関係を公言し、「極秘情報として・・水面下の交渉が進んでいる」と常々語っていて、「家族の会」の横田早紀江さんなどは大きな信頼を寄せているということです。
要するに拉致問題は安倍晋三氏の下でしか解決できないということを安倍氏自身も言い、「救う会」もひたすらそれを強調するだけでなく、強烈な安倍首相に対する信仰の下、安倍批判をすれば「北の分断工作」「スパイだ」と決めつけて、少しの批判も許さないという雰囲気が作り出されているということです。
その結果「家族の会」のメンバーも洗脳され、「家族の会」代表の飯塚繁雄さんは20周年の挨拶で、「わが総理大臣を中心として、・・・どんな状況下にあろうとも、この問題を最優先にして前に出して、今年中という期限を切った形で皆さんと共に、心と意志を集中しながら闘っていきたいと思います」と安倍首相を絶賛する挨拶をしたということです。
これでは安倍氏がどんなに無為に時を過ごそうが、また今のように北朝鮮を敵視することで拉致被害者救済の障害になることを行い続けても、「家族の会」から不満の声が出ない筈です。
いわば「救う会」は被害者救出を目的に掲げてはいるものの、その実態は単なる安倍晋三礼賛の団体であって、「家族の会」に寄り添う振りをしながら「家族の会」の意向を掣肘する役割を果たしているわけです。
以下にLITERAの記事を紹介します。
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横田早紀江さんがトランプ大統領に「戦争しないで」と伝えたい意思を明らかにするも、安倍応援団が発言封じ込め
LITERA 2017年11月5日
5日、アメリカ・トランプ大統領が来日した。その日程について松山英樹プロを同行したゴルフやピコ太郎との面会の話題など、安倍首相のパフォーマンスばかりが目につくが、注目されるのが、トランプ大統領と拉致被害者である横田めぐみさんの両親(父・滋さん、母・早紀江さん)との面会だ。
その早紀江さんがトランプとの面会を前に10月17日行った会見でこう訴えたのだ。
「戦争などやらないように。平和にやるように期待している」(「サンデー毎日」11月12日号より)
他のマスコミはこの発言をなぜかほとんど取り上げなかったが、しかし、横田さんがこうした心配を募らせているのは当然だろう。トランプ大統領は、「北朝鮮を完全に破壊する」といった挑発を繰り返しているだけでなく、本格的な軍事力行使を決心したとの情報も流れている。そして、日本の安倍首相もトランプを制止するどころか、全面的な支持を表明。自らも国連総会で「必要なのは、対話ではなく圧力だ」と発言。1日の会見でも北朝鮮対策を問われ「圧力を最大限まで高める」と宣言した。
この来日中の会談でも、トランプ、安倍の両者の間で、北朝鮮への先制攻撃することが秘密裏に合意されるのではないかともみられている。
しかし、もし本当に戦争になどなれば、拉致被害者が犠牲になる可能性は高いし、人質として盾のような扱いを受ける可能性もある。早紀江さんの発言は、拉致被害者家族としてはごく当たり前の心情だろう。
だが、この早紀江さんの思いはトランプ大統領に届きそうにない。他でもない、安倍首相とその応援団が早紀江さんの発言を封じ込めようと躍起になっているからだ。
実は、トランプに面会した際、戦争反対を伝えたいと考えていた早紀江さんに対して、安倍応援団が介入し、制止したことを、10月31日発売の「女性自身」(光文社)11月14日号が暴露している。
早紀江さんの「戦争しないでと言おうかな」発言に「救う会」関係者が
記事によれば10月19日、クリスチャンの早紀江さんを囲む後援会的集会「祈りの会」が開かれたが、そこで早紀江さんが参加者にこんなことを語ったというのだ。
〈「トランプさんに会ったら、“戦争はしないでください”と言おうかな、それとも政治的発言は控えたほうがいいのかな」〉
17日の会見での発言に続いて、早紀江さんの切迫した思いが伝わってくる発言だが、しかし驚くのはその直後の出来事だ。記事によると、同会に出席していた「救う会」関係者が、早紀江さんのこの言葉をさえぎるようにこう発言したという。
〈「政治的発言はしないほうがいい。大統領に会えるのも安倍さんのおかげなんですから」〉
「救う会」といえば、表向き拉致問題の解決と被害者家族の支援を謳っているが、実態は安倍首相を礼賛し、排外的ナショナリズムを煽り、北朝鮮への先制攻撃を叫んでいる極右団体。本サイトでは先日、拉致問題と被害者家族を政治利用する安倍首相と安倍応援団に成り下がった「救う会」の実態を告発する元幹部の証言をこう紹介した。
〈何か疑問を口にすると「安倍さんの足を引っ張るのか」「安倍さんに迷惑をかけることなど絶対にするな、言うな」と言われて、黙るしかない〉
〈安倍首相や「救う会」によって拉致問題は道具にされ、被害者家族の子を思う親の気持ちもまた利用されている〉
〈相互の利害が一致して、拉致問題を利用し合っている。被害者のご両親は別として、「救う会」、政府とも、問題が解決しないほうが都合がいいと思っているとしか思えない〉(全文は http://lite-ra.com/2017/10/post-3525.html )
「女性自身」が報じた早紀江さんの発言封じ込めは、まさにその一体化している安倍首相の意向を代弁したものとも言えるだろう。
「実際、官邸は早紀江さんの面会での発言に相当、神経を尖らせているようです。早紀江さんにいろんなチャンネルを通じて、『トランプ大統領を怒らせるような発言をするのは得策ではない』と圧力をかけているようです。また、御用マスコミに対しても、官邸が早紀江さんの発言を取り上げないよう要請しているらしい。17日の会見での『戦争などやらないように』発言があまり取り上げられなかったのも、そのせいかもしれません」(官邸担当記者)
安倍首相は拉致被害者を政治利用しているだけで、救う気などなし
安倍首相は北朝鮮危機が勃発して以降、これまで以上に拉致問題を自分の人気取りに政治利用してきた。たとえば先の解散総選挙直前には拉致被害者家族と面会、「国民大集会」に出席し拉致問題が最優先課題だと強調。また9月19日に国連総会でトランプが拉致被害者に言及したが、安倍首相はその後再び被害者家族と面会し、国連でのトランプ発言におけるみずからの功績を熱心に説明していたほどだ。
そしてぶち上げたのが、トランプ大統領と拉致被害者家族との面会の実現だった。安倍首相は衆院選真っ只中の10月12日、新潟県での演説で、高らかにこう宣言している。
「トランプ大統領と行った首脳会談で私は、『大統領、ぜひ11月に日本を訪問した際には、めぐみさんのご両親、拉致被害者のご家族に会う時間をとってください。会ってください』。こうお願いをしましたらその場で、『分かった、シンゾー。その皆さんと会うよ。ほんとにひどい話だ。日本の拉致被害者救出をするために、全力尽くしていく』と約束をしてくれました」
にもかかわらず、一方では拉致被害者家族の当然の思いをトランプに伝えさせないよう、圧力をかけているのだ。
これは、安倍首相の本当の目的が北朝鮮を武力攻撃することにあって、拉致問題の解決なんてまったく本気で考えていないことの証左だろう。
早紀江さんは、4日にも時事通信の取材に応じ、北朝鮮への対応について「制裁も必要だが、対話も必要だ。侮られてはいけないが、追い詰めるだけでもいけないのでは」「戦争だけはやめてほしい。人を殺りくして街も壊滅するのでは意味がない」とあらためて戦争反対の思いを語っている。
早紀江さんが実際、トランプとの面会でどんな発言をするのか注視されるが、これ以上拉致問題と被害者家族を安倍首相の“おもちゃ”にさせていけないことだけは確かだ。(編集部)