「予定調和」という言葉があります。
「宇宙は究極的な実体である“モナド”で構成されていて、それぞれのモナドは神によって最善の状態になるように予め定められている(すべては神の意志のままに進む)」というライプニッツの「予定調和説」が語源だということですが、いまはもっぱら、民主的な手続きを経ているように見せながら、事実上は為政者側が意図した通りの結論を出させるやり方を揶揄するときに使われるようです。
大学設置審議会が加計学園の獣医学部新設について10日に認可する見通しであるというのも正にその好例で、神の意志ならぬ、安倍氏個人の意思のままに加計問題は進んでいくということです。
先に、加計学園獣医学部に関する大学設置審議会は解決すべき課題があるとして判断を保留したのですが、その改善が見られたので認可するということです。
それでは例の「石破4条件」は満たされたということでしょうか。国際的にトップクラスのものでなければ獣医学部の新設は認められない筈ですが、加計学園のレベルは国内でも並みというよりもそれ以下というのが衆目の評価でした。それが短時日のうちにトップクラスの学部になる見通しが得られたというのでしょうか。
実験棟(実験室)の仕様が、病原菌を外部に漏らさない構造になっていないという問題はどう解決されたのでしょうか。
県と市の補助金のベースになる見積金額が通常の倍額近くに膨らんでいたという問題はどう判断されたのでしょうか。
それともそれらの問題は一切放置したまま、ひたすら認可に走るということなのでしょうか。
LITERAは、「結局、すべて『総理のご意向』どおりに!~」というタイトルでこの問題を報じました。
全ては「加計ありき」で進んいる、安倍首相のいう「プロセスに一点の曇りもない」は大ウソであるとし、バイオハザードの問題や高額な補助金を得るために建設費を水増しした疑惑を取り上げています。
また天木直人氏は、「~審議会の加計獣医学部認可方針は観測気球ではないのか」というタイトルで、「こんな情報をメディアに流したのはどこまで世間の反発が強いかを見るための観測気球に違いない。もし国会やメディアや世論が大騒ぎしなければ、林芳正文科相に承認させようと安倍首相は考えているのだ」と述べています。
LITERAの記事と天木直人氏のブログを紹介します。
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結局、すべて「総理のご意向」どおりに!
加計学園獣医学部が認可の見通し、疑惑は何ひとつ晴れていないのに
LITERA 2017.11.02
選挙が終わるや否や、これである。本日、文科省の大学設置審議会が判断を保留してきた加計学園の獣医学部新設について課題に改善が見られると評価し、10日の答申において来年4月開学で認可される見通しだといっせいに報道されたのだ。
しかし、驚きはまったくない。認可が下りることは最初から既定路線だったからだ。あらためて、疑惑の発端となった内部文書と、昨年10月21日に当時の官房副長官である萩生田光一氏が文科省の常盤豊高等教育局長に伝えた内容がまとめられた文面を確認したい。
「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」
「(設置の時期は)これは総理のご意向だと聞いている」
「総理は『平成30(2018)年4月開学』とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。今年(2016年)11月には方針を決めたいとのことだった」
これらの内部文書が作成されたのは、加計学園が今年3月に文科省に開学を申請する以前のことであり、設置審が検討に入るずっと前から2018年開学は決定していたことを示している。
つまり、この期に及んでも、すべては「総理のご意向」通りに、「加計ありき」で進んでいるのである。今回の選挙にしても、選挙後に答申発表となるように日程が組まれたことは想像に難くない。
しかし、安倍首相に向けられている疑惑は、いまだ何ひとつ晴れてはいないのだ。
安倍首相「プロセスに一点の曇りもない」は大嘘、議事録は改竄されていた
まず、今治市と愛媛県が国家戦略特区に獣医学部新設を提案する2カ月も前に今治市の職員と加計学園の事務局長が官邸で安倍首相に近い柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と対面していた事実を皮切りに、文科省の事務次官だった前川喜平氏に対して和泉洋人首相補佐官が獣医学部新設の対応を急ぐことを要請した際に「総理が自分の口から言えないから私が代わって言う」と述べたことや、やはり前川氏に内閣官房参与で加計学園理事の木曽功氏が「早く進めてほしい」と“圧力”をかけていたことなど、安倍首相の意向のもと、官邸が獣医学部新設に向けて積極的に関与してきたことは明々白々だ。
だが、これらの疑惑に対して、安倍首相は「岩盤規制にドリルで穴を開けた」という、何も説明になっていない台詞を繰り返すばかり。逆に、加戸守行・前愛媛県知事や国家戦略特区ワーキンググループ座長の八田達夫氏の証言が報道されていなかったとメディア批判に矛先を向け、「国会審議をすべて見た人は納得した人も多かったのではないか」などと宣っている。
しかし、本サイトでは何度も指摘してきたが、いま問題となっているのは「国家戦略特区において獣医学部新設が加計学園に選ばれた、その決定にかかるプロセスの不透明さ」であって、現役官僚だった前川氏とは違って加戸氏はそうしたプロセスにまったくタッチしていない。いくら加戸前知事が「歪められてきた行政が正された」と主張しても、そもそも加戸氏は「行政が歪められたのか否か」など知る由もない立場なのだ。
その上、安倍首相や八田氏は、議事録はオープンになっていると強調し「プロセスに一点の曇りもない」と断言してきたが、これもすでに大嘘だったことが発覚。2016年6月に国家戦略特区ワーキンググループが愛媛県と今治市からヒアリングをおこなった際には加計学園の幹部3名が同席していたにもかかわらず公開されている議事要旨にそのことが伏せられており、発言内容を一部削除することで発言主旨を真逆に書き換えるという議事録の改竄までおこなわれていたことまで判明しているのだ。
国会開催要求無視、突然の解散、野党の質問時間削減…追及から逃げまくる安倍首相
しかも問題は、このように雪だるま式に膨らんでいく「加計ありき」への疑惑だけではない。加計学園の獣医学部が新設される今治市のキャンパスについては、病原体を封じ込めることができないのではないかという疑問が噴出し、高病原性鳥インフルエンザの検査や実験・研究をおこなうのは難しいという見方も出ている。さらに、加計学園が高額な補助金を得るために建設費を水増ししているのではないかという疑惑までもち上がっているのである。
こうしたさまざまな角度から不正の疑いがありながら、安倍首相は野党からの臨時国会招集要求を3カ月も無視し続け、ようやく国会を開いたと思ったら冒頭解散するという解散権の濫用によって追及から逃亡。挙げ句、「丁寧に説明する」と言いながら昨日からはじまった特別国会では当初、質疑に応じない姿勢まで見せた。この態度が反感を買ったことで、結局、国会を12月9日まで開くことにしたが、実際は安倍首相にはトランプ大統領の来日や外遊日程が詰め込まれており、所信表明演説は今月17日。実質審議はたったの1週間程度しかないのではという見方も広まっている。
そして、安倍首相はついには、議院内閣制を完全に無視して野党の質問時間を削減するとまで言い出した。この暴挙もまた、森友・加計学園の追及を受けたくないという理由であることは明らかだ。
だが、繰り返すが、これだけの大問題になりながらも、2018年4月開学という「総理のご意向」は、今回の設置審判断によって完遂されたのである。国民からあがる疑問の声には耳も傾けず、いまなお、安倍首相はお友だちしか見ていないのだ。
森友・加計問題がこのまま有耶無耶になれば、安倍首相による政治の私物化を許したことになる。これは異常なことだという民意をいまこそ叩きつけなければならないだろう。(編集部)
文科省審議会の加計獣医学部認可方針は観測気球ではないのか
天木直人のブログ 2017年11月3日
きょう11月3日の各紙がこぞって一面トップで報じた。
大学設置・学校法人審議会の専門家会合が2日開かれ、あの加計学園による岡山理科大獣医学(愛媛県今治市)設置を了承した事がわかったと。
11月10日にも林芳正文科相に答申し、林文科相は11月中旬にも判断を下す見通しであると。
「無理が通って道理引っ込む」というのはこの事だ。
しかし、本当にこんなことが許されるのだろうか。
本当に来年4月に開校の運びとなるのか。
断じてそうさせてはいけない。
連休が始まったばかりで、しかもトランプ大統領の来日直前のタイミングに、こんな情報をメディアに流したのは観測気球に違いない。
どこまで反発が強いかを見るためだ。
おまけに国会は安倍首相の外遊を理由に11月17日まで休会だ。
反応を見極めるには十分な日数がある。
その間に、もし国会やメディアや世論が大騒ぎしなければ、林芳正文科相に承認させようと安倍首相は考えているのだ。
ならば野党やメディアや、そして何よりも世論は、大騒ぎしなければいけない。
安倍内閣の支持率を再び逆転させ、それにとどまらず一気に大きく下落させなければいけない。
そして自民党内の安倍降ろしを誘うべきだ。
もし、そうならなければ、文字通り、安倍首相はやりたい放題になる。
自衛隊明記の憲法9条改憲まで一気に突き進む。
日本の戦後政治の一大危機である。
それほど深刻な、加計獣医学部承認のニュースと捉えるべきである(了)