北朝鮮は29日早朝、通常軌道なら飛行距離1万3000キロ以上で、米国全土が射程に入るICBM弾道ミサイル(火星15)の試射に成功しました。
実際はロフテッド軌道を選択したので、高度約4500キロに達したのちに青森県西方約250キロの日本の排他的経済水域内に落下したとみられます。
これについてロシア下院外交委員会のスルツキー委員長は「日米韓が派手な軍事演習を行うなどで北朝鮮を挑発したため、緊張を高めてしまった」と指摘しました。
北朝鮮は、米国が「2か月間核実験やミサイルの試射を止めれば会談に応じる」としたのに期待してそれらを自制してきましたが、その結果がトランプ大統領による「テロ支援国家再指定」で北朝鮮の対話への期待は完全に裏切られました。
これは全く意外な展開で、これまでは米国は北朝鮮に対して非公式の連絡ルートを維持していて硬軟両用の対応をしていると見られていましたが、こうなると米国には最初から会談をしようとする意図がなかったのではないかという疑いが生じます。
日本のメディアは、「北朝鮮の挑発」という言い方をし、安倍首相は例によって「暴挙を断じて容認できない」と最大級の非難をしましたが、米・韓や日・米が日本海でこれに見よがしの軍事演習を行っていることこそが、北朝鮮に対する最大の威嚇であり挑発です。
安倍首相には北朝鮮を非難するのに急でその自覚が全くないようです。「徹底的に締め上げて北朝鮮が折れてくるのを待つ」と公言するに至っては、実に野蛮な考え方というしかありません。
かつて国際社会は事実上イラクに降伏を進めましたが、そののちにイラクが無残に壊滅させられときに、ロシアなどを除き西欧はどの一国もアメリカを制止しょうとはしませんでした。
北朝鮮はそのことを肝に銘じて現在の対応をしていると言われています。
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北「ICBM級」ミサイル発射 ロシアは日米韓による挑発批判
日刊ゲンダイ 2017年11月29日
北朝鮮が日本時間の29日午前3時18分ごろ、弾道ミサイル1発を発射した。韓国軍や日本政府によると、ミサイルは首都平壌近郊の平安南道平城付近から東方に向け発射され、約50分間飛行。高度は約4500キロ、飛行距離は約960キロに達した。青森県西方約250キロの日本の排他的経済水域内に落下したとみられる。
小野寺防衛相は「大陸間弾道ミサイル(ICBM)級と判断すべき能力だ」と発言。北朝鮮が開発に傾注している「火星14」とみられる。また、小野寺防衛相は「いくつかに分かれて落下した」と語り、多段式の可能性も示唆した。
通常より高い高度に打ち上げるロフテッド軌道だったとみられ、マティス米国防長官はこれまでで最も高い軌道だと指摘した。米専門家は通常軌道なら飛行距離は1万3000キロ以上で、米国の首都ワシントンを含む米国全土が射程に入るとの見方を示した。
■ロシア「日米韓が緊張高めた」と批判
北朝鮮が2カ月以上自制していた挑発行為を再開させたことに、安倍首相は「暴挙を断じて容認できない」と非難。北朝鮮への「圧力を最大限に高めていく」と相変わらず。トランプ米大統領も「米国の姿勢は変わらない」と、軍事力を背景に北朝鮮に最大限の圧力をかける方針を維持する。
こうした日米両国首脳の圧力一辺倒の姿勢に、ロシア下院外交委員会のスルツキー委員長は「日米韓が派手な軍事演習を行うなどで北朝鮮を挑発したため、緊張を高めてしまった」と指摘。これが国際社会の外交専門家の大方の見方だ。
今回のミサイル発射で、金正恩が米国を攻撃する能力を手に入れたことが分かった。安倍首相もトランプもここらで少し頭を冷やさないと、取り返しのつかない事態を招きかねないのだ。
北朝鮮がミサイル発射、テロ支援国家再指定に反発か
日経新聞 2017年11月29日
【ソウル=山田健一】韓国の聯合ニュースは29日未明、北朝鮮が同日午前3時17分ごろ、首都平壌近郊の平安南道・平城(ピョンソン)付近から日本海に向けてミサイル1発を発射したと報じた。韓国軍合同参謀本部の関係者の話としている。同軍が米軍と連携してミサイルの種類など詳細な分析を急ぐとともに、追加挑発の可能性に備えて警戒を強めている。
北朝鮮が夜明け前にミサイルを打つのは異例。聯合によると、平城付近からミサイルを打つのは初めてで「挑発に対する米韓の対応力を調べる狙いがある」と分析した。
北朝鮮による弾道ミサイル発射は、9月15日に中距離弾道ミサイル「火星12」を日本の上空を通過する形で北太平洋上に発射して以来、約75日ぶり。2カ月以上にわたり大きな挑発を自制してきたが、米国が北朝鮮をテロ支援国家に再指定したことに反発し、米国を再び威嚇しようとした可能性がある。
韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相は外国メディアとの28日の記者会見で、北朝鮮の朝鮮人民軍に「注目すべき動向がみられる」と話し、近く挑発を再開する可能性に言及していた。
北朝鮮、新型ICBM「成功」 米本土全域射程か 核武力「完成」と宣言
時事通信 2017年11月29日
【ソウル時事】北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは29日正午(日本時間同日午後0時半)、重大報道を通じ、「新たに開発した大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15』の試験発射に成功した」と発表した。同テレビは新型のICBMが「米本土全域を攻撃できる」と主張し、「われわれが目標としたミサイル兵器体系開発の完結段階に到達した」と強調。現地指導した金正恩朝鮮労働党委員長は「本日、国家核武力完成の歴史的大業、ミサイル強国の偉業が実現した」と宣言した。
韓国軍合同参謀本部などによると、北朝鮮は同日午前3時17分(日本時間同)ごろ、中部の平城付近から東方に向け弾道ミサイル1発を発射。ミサイルの高度は約4500キロに達し、約960キロ飛行して青森県西方約250キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定され、日米防衛当局はICBMだとみている。
ミサイルの飛行時間は約50分。小野寺五典防衛相は、通常より高い高度に打ち上げるロフテッド軌道だった可能性が高いとの見方を示した。自衛隊による迎撃措置は取らなかった。マティス米国防長官は高度に関し、これまでで最も高いと指摘した。
米専門家によれば、通常の角度で発射した場合、射程は米本土全域を含む約1万3000キロに達する可能性がある。北朝鮮が2カ月以上自制していた挑発行為を再開させたことで、国際社会が北朝鮮の核・ミサイル開発放棄に向けた圧力をさらに強めるのは必至で、緊張が高まるのは避けられない。
安倍晋三首相は「暴挙を断じて容認できない」と非難。北朝鮮への「圧力を最大限に高めていく」と述べた。国連安全保障理事会は日米韓3カ国の要請を受け、米東部時間29日午後4時半(日本時間30日午前6時半)に緊急会合を開く。
トランプ米大統領は「事態を極めて深刻に受け止めている」と強調。一方で北朝鮮への対応について「何も変わらない」と述べ、軍事力を背景に、外交と経済制裁で最大限の圧力をかける方針は維持する考えを示した。安倍、トランプ両氏は日本時間29日朝、電話会談を行った。