2017年11月18日土曜日

国連人権理 日本に「報道の自由」などの改善を勧告

 国連人権理事会は16日、日本の人権状況の定期審査で各国から出た勧告をまとめた報告書案を公表しました。
 14日の審査では106カ国が意見表明をし、報告書には前回(5年前)を25%上回る218の勧告が記載され、「報道の自由」の問題では、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条の改正などを求める意見が盛り込まれました。
 勧告内容は16日の会合で正式に採択されており、日本政府は来年3月までにこれら勧告の受け入れの可否について態度を表明し、人権理は受諾した項目のみを最終的な勧告として来年3月までの会合で採択します。勧告には法的拘束力はありません。

 それとは別に日弁連は、14日の国連人権理の審査作業部会終了の段階で会長声明を出しました。
 声明は、日本政府に対して、今回出された全ての勧告の受け入れについて、国際基準に照らして真摯に検討し、国際社会において日本が名誉ある地位を占めるにふさわしい人権状況を具体的に整えるべく努力するよう求めています。

 ところでそれとは別に国連拷問禁止委員会というものもあって、日本は2013年に2回目の審査を受け人質司法や代用監獄制など様々な人権蹂躙が指摘されましたが、日本政府は問題ないとして殆どの改善を拒否しました。1回目はその6年前の2007年にあったのですが、その時に指摘されたほとんどの事項が2回目でも指摘されたということです。
   (関係記事)

 したがって今回の件でも、政府がどのような回答をするのか注目する必要があります。
 東京新聞、NHKニュースの記事と日弁連会長声明を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「報道の自由」改善勧告 国連人権理の対日審査
東京新聞 2017年11月17日
【ジュネーブ=共同】国連人権理事会で日本の人権状況の審査を担当する作業部会は十六日、十四日の審査会合の結果を受けて日本に対し二百十八項目からなる勧告を発表した。特定秘密保護法などで萎縮が指摘される「報道の自由」の問題では、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条の改正などを求める意見を盛り込んだ。

 勧告は審査会合での百六カ国・地域の意見を反映したもの。日本は勧告ごとに受諾の是非を表明でき、人権理は受諾した項目のみを最終的な勧告として来年二~三月の会合で採択する。勧告に法的拘束力はない。
 旧日本軍の慰安婦問題では、中国と韓国が主張した元慰安婦への誠意ある謝罪と補償、公正な歴史教育の実施を盛り込んだ。
 東京電力福島第一原発事故後の住民への支援継続も要請。自主避難者に対する生活支援のほか、妊婦や子どもの健康問題への配慮を重視すべきだとした。
 欧州連合(EU)諸国を中心に多くの国から意見が相次いだ死刑制度の廃止・死刑の一時停止の実施も勧告した。
 人権理は「普遍的審査」制度に基づき、全ての国連加盟国を数年ごとに順次審査しており、日本に対する審査は三回目。


国連人権理事会 日本の人権の状況に218の勧告
NHK NEWS WEB 11月17日 8時06分
国連人権理事会が日本の人権状況に関して行った審査で、各国からは、報道機関の独立性の確保や、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響を受けた住民への支援の継続など、合わせて218の勧告が出され、政府は、それぞれの勧告を受け入れるかどうか検討することにしています。
国連人権理事会は、すべての加盟国の人権状況を定期的に審査していて、今月14日、スイスの国連ヨーロッパ本部で5年ぶりに日本への審査を行い、106の国と地域が質問しました。

人権理事会の作業部会は、16日、審査で出された日本への勧告を取りまとめて発表し、勧告の数が5年前より25%多い、218に上ったことを明らかにしました。

勧告の内容は、人種や性別による差別の解消や死刑制度の廃止に関するものに加えて、アメリカなどが、放送法の一部を見直し、報道機関の独立性を確保するよう求めたほか、ドイツなどが、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響を受けた住民や自主避難者への支援を継続するよう求めた勧告もあります。
このほか、韓国や中国などは、慰安婦問題について、日本政府の謝罪や公正な歴史教育の実施などを求めています

今回の勧告に法的な拘束力はありませんが、日本政府は、それぞれの勧告について受け入れるかどうかを検討し、来年3月までに人権理事会に通知することにしています。


国連人権理事会における日本の第3回普遍的定期的審査に関する会長声明

昨日(ジュネーブ時間2017年11月14日午前)、国連人権理事会の普遍的定期的審査作業部会は、日本の人権状況についての審査を行った。

このたびの審査において、日本に対する発言をした国数は106か国に及び、勧告数は200を超えた。勧告の主な内容は、反差別、死刑制度、国内人権機関の設置、個人通報制度等の選択議定書の批准、女性や子どもの性的搾取や人身取引に関するものであった。とりわけ女性、LGBT、人種・民族的少数者に対する差別、性的指向を理由とする差別の解消を求める勧告は60を超えたほか、死刑廃止に関連した勧告は30を超え、国内人権機関の設置を求める勧告も30近くに及んだ。なお、当連合会の2016年人権擁護大会における「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」に触れた国が2か国あった。

そのほか注目される勧告として、刑事手続や被拘禁者の処遇、福島第一原子力発電所事故の避難者、メディアの独立性と特定秘密保護法、技能実習生などの移住労働者、ビジネスと人権に関する勧告が複数あったほか、原爆被爆者や核兵器禁止条約の未批准に関する勧告もなされた。

当連合会は、昨日の審査に先立ち、本年3月に国連人権高等弁務官事務所に対して日本の人権状況について文書による情報提供を行ったほか、在日本各国公館向けに実施した説明会や、本年10月にジュネーブ国連本部で実施された在ジュネーブ各国政府代表部向けのセッション等を通じても、情報提供を行ってきた。

今回の審査において、他の国連加盟国から、法律の制定及び法改正並びにその適正な運用を示唆する多くの勧告がなされたことは、日本の行政機関のみならず国会及び司法の課題として受け止めなければならない。

当連合会は、日本政府に対して、今回出された全ての勧告の受け入れについて、国際基準に照らして真摯に検討し、特に2020年オリンピック・パラリンピック及び国連犯罪防止刑事司法会議の開催を前に、国際社会において日本が名誉ある地位を占めるにふさわしい人権状況を具体的に整えるべく努力するよう求める

そして当連合会もまた、勧告内容を踏まえて日本の人権状況の改善に向けた日本政府との建設的対話を継続し、各課題について国民的議論を活発にすべく社会に広く情報発信し、基本的人権を擁護し社会正義を実現する使命を果たす所存である。

  2017年(平成29年)11月15日
日本弁護士連合会 
 会長 中本 和洋