9日、大学設置審は、加計学園・獣医学部の今治市設置を可とする答申を文科省に出し、文科省は14日に認可すると発表しました。しかし設置審のある委員が「みんな納得していない。忸怩たる思いだ」とTBSの取材に語ったように、設置審の委員たち自身が答申内容に大いに不満を持っていることが明らかになっています。まさに「問題は大ありだった」という訳です。
ある委員によれば、加計学園・獣医学部は獣医学部を持つ16大学のなかでもっとも教育の内容が低いということで、是正を指摘したにもかかわらず実習計画について改善が見られなかったということです。そこで設置審で「依然として実習体制が十分でない」と指摘したところ、取りまとめをする委員から「設置審としてこれ以上認可を先延ばしにすれば、学園側と訴訟を含めたトラブルになる可能性がある」と言われたということです。
事業者が合格を見越して先行で着工したのが不合格となった場合の責任は、挙げて事業者側が持つべきもので、不合格にすれば訴えられるというのはあまりにも理不尽で、審議会の意義を理解していない者の言い草です。
設置審は専門的見地から教育内容などを審査する機関であって「訴訟が起きるから」などと脅迫するのは大いに筋違いで、そんなことで審査が誘導されるべきでないのはいうまでありません。委員のなかには官邸や加計学園の息がかかった人物がいるのではないか」と言う指摘が裏付けられた感じがします。
学生の定員は当初申請の160人から140人に減らされましたが、それでも教員が獣医学科75名、獣医保健看護学科12名の陣容ではあまりにも少な過ぎます。獣医学部で最高レベルとされる北海道大学が定員80人に対して教員は100人弱であるのに比べて、比較にならない貧弱さです。
しかも獣医学科の教授中、実に11人が70歳以上で65歳以上が8人もいるということで、あたかもリタイヤ組を寄せ集めたシルバー業務の感がします。
当然、閣議決定された獣医学部新設の4条件を満たしていないという指摘が出されましたが、 文科省担当者は「それは特区での検討事項であり、この審議会では審査しない」と所轄外事項であるとしました。
確かにそうした区分けになっているようなのですが、肝心の国家戦略特区諮問会議でも全くそれについての議論はされていません。結局、完全に4条件を無視したままで、文科省が認可するということになります。
校舎建築費水増しによる補助金詐欺疑惑も未解決のままです。
要するにトップの威光の下に政治が私物化されて強引に認可される運びになったものの、その実態はお粗末極まるもので、認可を答申した設置審の委員も本当は決して納得していないというのが実態です。
藤井裕久元財務相は先日あるテレビ番組で、「加計問題は韓国の朴槿恵と同じ問題」「朴さんは近親者に便宜を図り弾劾を受けている。安倍さんも弾劾を受けるべき」と語りましたが、日本ではメディアの忖度によって「怒り」がコントロールされていて韓国のような世論の盛り上がりが見られません。
LITERAは、加計問題は「政治の私物化」という弾劾に値する重大疑惑なのだということをいま一度確認し「きちんと怒りを露わにしなければならない」と訴えています。
LITERAの記事を紹介します。
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加計学園認可を答申した設置審委員が「みんな納得していない」「訴訟で脅された」と告発も、安倍首相は国会から逃亡
LITERA 2017年11月14日
一体どこまでトンズラをつづけるのか。本日14日に加計問題について質疑がおこなわれる予定だった衆院文部科学委員会だが、昨日の理事懇談会で与党側の筆頭理事である自民党の鈴木淳司衆院議員が質問時間の配分を与党・野党で「5対5にしたい」と要求。これに対して野党側の筆頭理事を務める立憲民主党・川内博史衆院議員は応じず、本日の委員会は開催が見送られたのだ。
川内理事が自民党の要求を突っぱねたのは当然の話だ。自民党の鈴木理事は質問時間を「5対5」とすることの理由を「与党が(法案内容を)事前審査する法案審査ではない」からと主張したというが、疑惑は安倍首相の問題であり、その当人が「丁寧に説明する」と繰り返し訴えてきたのではないか。安倍自民党は「質問時間に野党が折り合わないから」と難癖をつけることで、加計疑惑の質疑時間を削っているとしか考えられない。
そもそも、実質数日間しかなかった特別国会を12月9日まで延長することで「疑惑から逃げてない」とポーズをとった安倍首相だが、会期中にはトランプ米大統領の来日や外遊日程が詰まっていることを見越してのこと。実際には加計問題の質疑が十分におこなわれることはない。
しかも、本日は全国の自治体でJアラートの訓練が大々的におこなわれているが、安倍首相は北朝鮮への圧力強化をあれだけ口にしながら、国会開催を逃げ回ってきたことによって北朝鮮の非難決議の採択さえ見送られつづけているのが現実だ。結局、北朝鮮の脅威とやらよりも、実際は加計問題から逃げることが優先されているのである。
しかし、安倍首相が逃げようとも、加計問題は吹き出すマグマのように、疑惑が次から次へと噴出しつづけている。
そのひとつが、文科省の大学設置・学校法人審議会(設置審)から飛び出した疑義だ。
ご存じの通り、設置審は9日に加計学園獣医学部の新設を認める結論の答申をしたが、設置審の委員のひとりが「みんな納得していない。忸怩たる思いだ」とTBSの取材に語っているように、委員たちがマスコミに不満を漏らしているからだ。
改善されていなかった教育内容、教員の3分の1が65歳以上
たとえば、委員のひとりは以前から疑義が呈されていた加計学園獣医学部の実習計画について「改善されていないのでは」とし、「(現在全国にある獣医学部)16大学のなかでもっとも教育の内容は低いと思う」と回答。
さらには、こんな報道まである。NHKは、設置審の議論では委員が「依然として実習体制が十分でない」と指摘したところ、〈取りまとめ役を務めた委員〉がこう述べたと伝えている。
「設置審としてこれ以上認可を先延ばしにすれば、学園側と訴訟を含めたトラブルになる可能性がある」
実習体制の不備を指摘するという当然の意見に、訴訟の可能性をもち出す……。この発言に対して「訴訟という言葉を聞かされ、何も言えなくなった」と話す委員もいたという。
設置審は専門的見地から教育内容などを審査する機関であって、訴訟リスクを考慮するような場ではけっしてない。以前から設置審の議論は非公開のため、「文科省が認可へ誘導する可能性はないのか」「委員のなかには官邸や加計学園の息がかかった人物がいるのではないか」と訝る声があがってきたが、その不信感が的中したとしか言いようがないだろう。
問題点は実習計画だけではない。加計孝太郎理事長は設置審の判断を受けて、こんなコメントを発表した。
〈国際的に通用する人材を養成するために、獣医学科75名、獣医保健看護学科12名という充実した教員組織を備えます〉
加計理事長はこう胸を張るが、この教員数はとても自慢できるような数字ではない。事実、加計学園獣医学部は定員140人としているが、国内の獣医学部でも最高レベルとされる北海道大学は学生80人に対して教員は100人弱。学生よりも教員数のほうが上回る体制なのだ。北大の稲葉睦教授も「(教員)75人でやろうとしたら寝てられないと思いますよ、先生方」と述べている(10日放送『NEWS23』より)。
しかも、今年10月の文科省学部等設置認可申請書類から加計学園獣医学部の教員名簿を確認すると、獣医学科の教授はじつに11人が70歳以上。65歳以上が8人もいるのだ。私大教員の定年は一般的に65〜70歳といわれているが、獣医学部の新設後、定年を迎える教員が続出することは間違いない。その上、そうした教員が5〜6年次におこなわれる「卒業論文」の科目を担当としているなど、杜撰さが目立つのだ。
設置審の委員からも「加計学園の申請内容は4条件を満たしていない」
そして、最大の問題は、政府が獣医学部新設を認める条件として2015年に閣議決定した「4条件」が、加計学園は満たしていないのではないかという疑問だ。
この問題については、設置審の委員からも「加計学園の申請内容は4条件を満たしていない」と声があがったというが、文科省担当者は「4条件は特区での検討事項であり、この審議会では審査しない」などと述べたという。
たしかに4条件を満たしているか否かの議論は設置審がおこなうものではない。前川喜平・前文部科学事務次官が本サイトのインタビューで述べたように、「設置審の審議は、既存の基準に照らして設置するかどうかを判断する」場であり、4条件については、それ以前に国家戦略特区諮問会議でチェックされるべきものだからだ。
しかし、安倍首相が「すべて公開されている」と言って憚らない国家戦略特区諮問会議の議事録を精査しても、4条件についての議論はまったくなされていない。設置審委員から疑問の声があがるのは当然だろう。
前川氏は「設置審に加計学園が提出した内容を、あらためて諮問会議で審査すべき」と主張していたが、そのとおりで、本来なら、定員やカリキュラムが出揃ったいま、国家戦略特区諮問会議が閣議決定された4条件に加計学園が合致するのか否かを検討し、その上で文科大臣が認可判断しなければならない。だが、そのような正当なプロセスはやはり踏まれることなく、本日、林芳正文科相は加計学園獣医学部新設を認可する予定だ。
弁護士や大学教授などで結成されたグループ「加計学園問題追及法律家ネットワーク」も指摘しているように、これは《内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する》という内閣法第6条違反にあたる可能性が極めて高い。
疑惑はまだある。獣医学部が設置される今治キャンパスをめぐっては、建築費水増しによる補助金詐欺疑惑が浮上しているが、校舎の設計を担当するSID創研の取締役は、加計孝太郎理事長の妻である泰代氏であるという。この問題について、「AERA dot.」の取材に応じた「今治市民ネットワーク」共同代表の村上治氏は、「加計孝太郎氏が今治市民の税金をSID創研を通じてマネーロンダリング(資金洗浄)して、妻に流す装置なのではとの批判は残ります」と指摘している。
加計問題は韓国の朴槿恵前大統領の事件と同じ問題だ
ここまで挙げてきた問題は当然、国会でしっかり追及されるべきだ。しかし、疑惑が湧き上がっても安倍首相がトンズラしてきたことによって、ついには文科相が新設認可をおこない、疑惑の校舎建築は着々と進むという状況にいたったのである。異例中の異例で国会を冒頭解散し、大義なき総選挙まで仕掛けて、疑惑から遁走すると同時に加計学園獣医学部の2018年4月開学という「総理のご意向」を貫徹させたのだ。ここまで国民を馬鹿にした話が、かつてあっただろうか。
藤井裕久元財務相は先日、「加計問題は韓国の朴槿恵と同じ問題」「朴さんは近親者に便宜を図り弾劾を受けている。安倍さんも弾劾を受けるべき」(TBS『時事放談』5日放送)と語った。だが、朴大統領の弾劾の背景には国民世論の高まりがあった一方、この国はメディアの忖度によって「怒り」がコントロールされてしまっている。だからこそ、加計問題は政治の私物化という弾劾に値する重大疑惑なのだということをいま一度確認し、政治の私物化にきちんと怒りを露わにしなければならないのだ。 (編集部)