2017年11月9日木曜日

09- 富裕層減税のための消費税大増税を阻止しよう

 逆進性が高い消費税は不公平税制の最たるものですが、評論家などからその廃止は勿論、税率の軽減や税率アップ反対論が殆ど出ないのは不思議なことです。

 消費税が導入された1989年度からの28年間に生じた変化は、所得税が4兆円減り 法人税が9兆円減り、消費税が14兆円増えたということです。
 要するに「法人税と所得税を軽減するために消費税が導入された」というのが経済学者の植草一秀氏が常々指摘していることです。
 
 改めて、7日付「植草一秀の知られざる真実」の記事を紹介します。
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富裕層減税のための消費税大増税を阻止しよう
(原題 TPP交渉差止・違憲訴訟控訴審第1回口頭弁論期日 
植草一秀の「知られざる真実」2017年11月7日
(阿修羅 2017.11.7市村 悦延 投稿より転載)
11月7日午後5時半より、札幌市所在の株式会社りんゆう観光主催の講演会「消費税について考える」が開催され、消費税についての講演をさせていただいた。
  (中 略)
私は安倍政権が推進する格差拡大推進政策の一環としての消費税増税方針の問題点を論じた。
安倍政権が推進する経済政策は、一般にアベノミクスと表現されているが、その本質は市場原理基軸の格差拡大推進政策である。
市場原理を基軸に経済政策を運営すれば、当然の結果として格差が拡大する。資本の運動法則として、労働コストの際限のない圧縮が推進される。

安倍政権は労働規制の撤廃を掲げるが、その内容は、
正規から非正規への移動の推進
外国人人労働力活用による労働コストの引下げ推進
残業代ゼロ労働の拡大
長時間残業の合法化
金銭解雇の全面容認
などである。すべては、労働者の処遇悪化、身分の不安定化をもたらすものである

アベノミクスが格差拡大を推進している最大の理由は、労働コストの圧縮、資本の利益極大化にある。
この基本政策方針はグローバリズムそのものである。グローバリズムとは、世界市場支配を目論む巨大資本が世界統一市場を形成しようとする運動であり、安倍政権は巨大資本の指令に基づいてグローバリズムを推進しているのだと考えられる。
その安倍政権が税制改変において消費税増税を基軸に置いている。その最大の目的は何であるか。それは、法人税減税である。法人税を減税するために消費税の増税を推進している
同時に安倍政権は所得税の軽減をも図っている。富裕層の税負担を軽減し、中低所得者層の負担を激増させている。
アベノミクスは成長戦略と税制改変の両面から格差拡大を全面的に推進しているのである。

同時に消費税増税には二つの副作用がある。
第一は日本経済をさらに悪化させることだ。2019年10月に消費税率が10%に引き上げられるなら、日本経済は完全に失速することになるだろう。
第二は、消費税増税で、消費税増税を価格に転嫁できない零細事業者は、消費者が負担するはずの消費税を自己負担させられ、完全に破たんしてゆくだろう。中小零細事業者を消滅させるために消費税増税が推進されているのである。

消費税の問題は後段でさらに掘り下げるが、安倍政権がグローバリズム推進の一環として推進しているTPPに関する、重要な法廷日程が明日11月8日に予定されている。
11月8日午後1時半から、東京高等裁判所前で、TPP交渉差止・違憲訴訟の控訴審第1回口頭弁論期日に向けての門前集会が予定されている。 https://goo.gl/72TF34 

第1回口頭弁論期日は午後2時半より東京高等裁判所101法廷で開廷される。
  (中 略)

安倍首相は米国が参加しないTPPに参加する意思のないことを国会で何度も明言している。米国抜きのTPP発効には、TPP最終合意の修正が必要であるが、安倍首相は国会答弁で、TPP最終合意文書の修正に応じないことを何度も明言した。
最終合意文書を一切変更させないためにも、TPPの早期批准が必要だと強弁して、国会でTPPを批准したのである。
ところが、その後に米国がTPPから離脱して、安倍政権の行動が変質した。米国抜きのTPPを推進すると言い始め、さらに、TPP最終合意の修正を求めるとまで言い始めたのである。
このような行動が許されるわけがない。
安倍政権は憲法を破壊し、憲法を転覆させることを目論んでいる。国会での答弁の有名無実の行動を示している。日本の議会制民主主義は崩壊していると言わざるを得ない。

消費税の問題に話を戻すが、消費税は低所得者に過酷で富裕層に極めて優しい税制である。
所得税の場合、夫婦子二人世帯では、年収285万円までが無税、税率ゼロである。
所得が多くなると税率が高くなる累進税率構造が採用されている。
しかし、消費税は所得がゼロの個人も8%の税金をむしり取られる。所得がゼロの5歳の子供に対しても、8%の税率で税金をむしり取るのである。その一方で、所得が10億円の超富裕層も、税率は同じ8%だ。このような消費税を逆進的であると表現する。

消費税が導入された1989年度の国税収入は54.9兆円。2016年度の国税収入55.5兆円とほぼ同額である。
この28年間に生じた変化は、所得税が4兆円減り 法人税が9兆円減り、消費税が14兆円増えた。これだけなのだ。
社会保障の支出が増えて消費税増税がどうしても必要になった。日本財政が危機に直面して消費税増税が必要になった。
これらの話はすべて嘘八百、虚偽なのである。

法人税と所得税を大幅に減税するために消費税を増税してきた。これが真実なのである。
このような財政の横暴を許してよいのか。許してよいわけがない。
2009年の総選挙に際して、野田佳彦氏は、「シロアリ退治なくして消費税増税なし」
と声高らかに宣言した。その野田佳彦氏が、シロアリを一匹も退治せずに消費税増税に突き進んだ。

財務省は消費税増税を唱えるなら、その前に、まず、財務省の天下り氷山の一角を切るべきだ。私はこれを20年前から主張し続けてきた。
日本銀行、日本取引所、日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、国際協力銀行、日本たばこ、横浜銀行、西日本シティ銀行への天下りを、まず全廃するべきだ。
財務省が「わが身を切る改革」の第一歩を踏み出して、初めて天下りの根絶がスタートする。
これはあくまでも氷山の一角だ。しかし、その氷山の一角の天下り廃止さえ、20年間、議論だけしかない。一切の行動は取られてきていないのだ。

消費税率が10%になれば、日本の個人消費が凍結状態に移行することは明白である。
他方、所得税制度は累進税率構造を採用しているとはいえ、これも抜け穴だらけである。
高額所得者の所得は資産所得に偏向している。
その資産所得において、利子配当課税は、20%の分離課税が適用されている。つまり、累進税率など意味を持たない。所得税を完全な総合所得課税とするべきだ。
また、富裕層の資産残高に一定の税率を課して資産税を徴収するべきである。法人税率を引き上げるとともに、内部留保課税を検討するべきである。これらの措置により、消費税の減税、消費税の廃止が可能になる。
2019年10月の消費税再増税を阻止し、消費税減税、消費税廃止に向けての方策を具体的に検討するべきである。