「森友学園」への国有地売却でごみの撤去費用などとして8億円余りが値引きされた問題で、会計検査院は「値引き額の算定方法には十分な根拠が確認できない。ごみの量は国交省の推計値の3割から7割にとどまる」などとする検査結果を22日、国会に提出しました。
この問題を見過ごしにしなかっただけまだマシですが、実際のごみの量を3割~7割の範囲に認定したことは大甘のそしりを免れません。
田中龍作氏は、「検査報告は国交省と近畿財務局を一応、悪者にした格好だが、ことの核心をズラしているとの見方もある」として、「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」の告発状に示されている「地中のゴミによる値引き代はゼロでよい」という考え方を紹介しています。
原告の一人 醍醐總名誉教授は、会計検査院はゴミの混入率など複雑怪奇な計算式を持ち込んだことで「袋小路に入ってしまっている」と指摘しています。
文中に「有益費」という当初から物議を醸した言葉が出てきますが、これは2015年5月の定期借地契約で、賃借中に森友学園が土壌汚染・地下埋設物の除去を行い土地の価値を増大させた場合はその除去費用を「有益費」の名目で国が支払うというもので、実際に2016年度末に1億3176万円を支払っています。
「市民の会」の告発の行方には注目したいと思いますが、会計検査院の報告は「問題点を指摘した」ということに留まりそうです。
ところで不必要といわれている籠池泰典前理事長と妻の勾留は、真夏には蒸し風呂となる独房内ですでに4か月に及び、この間家族との面会も認められないでいますが、大阪地裁は22日、またしても保釈を認めませんでした。2人は調べに対し黙秘しているということです。
証拠隠滅等の惧れがなくとも検察が求める自供をしないことには釈放しないというのが「人質司法」の実態です。普通の人は一刻も早く家庭に戻らないことには収入が途絶え家族が生きてゆけなくなるため、検察が求めるままに泣く泣く無実のまま自供を強いられることになります。裁判所も検察と一体になって「人質司法」を成り立たせていることは、籠池夫妻の例でも明らかです。
関係の記事を4本紹介します。
お知らせ
都合により25日、26日は記事の更新ができません。27日は午後更新します。
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森友 国有地値引き 「慎重な調査検討欠いていた」 検査院
NHK NEWS WEB 2017年11月23日
大阪の学校法人「森友学園」に国有地がごみの撤去費用などとして8億円余り値引きされて売却された問題で、会計検査院は「値引き額の算定方法には十分な根拠が確認できない」などとする検査結果を22日、国会に提出しました。独自に行った複数の推計では、いずれもごみの量が国土交通省の推計の3割から7割にとどまり、会計検査院は「慎重な調査検討を欠いていた」と指摘し改善を求めました。
去年6月大阪・豊中市の国有地が、地中のごみの撤去費用などとしておよそ8億2000万円値引きされ、「森友学園」におよそ1億3400万円で売却された問題では、会計検査院が、国会の要請を受けて検査を行い、22日国会に結果を報告しました。
最大の焦点の値引き額が適正だったかどうかについて、会計検査院は、ごみの撤去費用などの見積もりを依頼された国土交通省が、地中のごみの混入率をおよそ47%としたうえで、少なくとも3.8メートルの深さまでごみがあるなどと算定した方法は「十分な根拠を確認できない」と指摘しました。
検査院が、国土交通省が用いたデータをもとに、複数の別の方法で独自に推計を行ったところ、ごみの混入率については32%、ごみのある深さは2メートル以下となり、ごみの量は国土交通省の推計の3割から7割といずれも少なくなったということです。
検査院は「仮定のしかたによって、ごみの処分量の推計値が大きく変動する状況などを踏まえると、算定に必要とされる慎重な調査検討を欠いていた」などと指摘し、今後、適切に算定するよう改善を求めました。
一方、適正と考えられる値引き額については必要な資料がなく、検証が難しいとして報告書には盛り込まず、検査院は「値引き額は仮定のしかたによって変わるもので、いくら損をしたか責任を持って示すことはできない」としています。
【森友値引き】核心をずらした会計検査院報告はガス抜きに使われる
田中龍作ジャーナル 2017年11月22日
会計検査院までもが安倍首相の意向を忖度するようになったのだろうか。
国有地が学校法人・森友学園に8億円値引きされて売却された問題で、会計検査院はきょう、国会に検査報告を提出した。
「値引き額の算定基準が十分でない」「資料が保存されておらず検証が十分に行えない」などと一見厳しい。問題の中心であるゴミについては「国土交通省の推計の3割から7割しかない」とした。
検査報告は国土交通省と近畿財務局を一応、悪者にした格好だ。だが事の核心をズラしているとの見方もある。
森友学園への国有地売却問題で1円の値引きをする必要もなかったのにゴミ処理の名目で8億1900万円の値引きをして、国に損害を与えた ― 市民団体が近畿財務局の美並義人局長を背任の疑いで、きょう、東京地検に告発した。
告発をしたのは「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」。告発状によるとこうだ。
地下埋設物(ゴミ)は2層に区別される。深さ①「0~3・8m」と②「3・8~9・9m」だ。
①「0~3・8m」のゴミ
森友学園との借地契約時代に有益費として国は支払い済み。
②「3・8~9・9m」のゴミ
校舎建設の支障になるようなゴミはなかった。原告らは工事関係者から証言を得ている。
実際、工事は進み校舎は出来上がった。
そもそも、ゴミの撤去にからんで国は森友学園に1円も払う必要がなかったのである。にもかかわらず会計検査院は「(ゴミは)3割~7割しかない」としている。つまり3割~7割は払う必要があったというのだ。
原告の一人で、醍醐總・東大名誉教授(会計学)は、会計検査院はゴミの混入率など複雑怪奇な計算式を持ち込んだことで「袋小路に入ってしまっている」と指摘する。
「国交省を担当している会計検査院のスタッフがそんなことも知らないのか、と驚く。本当に手抜きなくやったのかなという疑問すら持っている」。
「(会計検査院は)本質的、核心的な部分からズレた、それがわからなかったふりをしているのか、本当に分からなかったのか。およそプロの検査とは私には思えない」。
会計検査院の指摘は膨大だ。次期通常国会で野党は同院の指摘に沿って安倍政権を追及していくのだろうが、袋小路にはまり込むことは必定だ。追及は不発に終わるだろう。
“正義の指摘” はガス抜きの匂いがする。
~終わり~
籠池夫妻の保釈申請認めず
NHK 関西NEWS WEB 2017年11月23日
学校法人「森友学園」をめぐる事件で、詐欺などの罪で起訴され4か月近く勾留されている籠池泰典前理事長と妻の保釈の申請について、大阪地方裁判所が、22日、保釈を認めない決定をしたことが関係者への取材で分かりました。
森友学園の前の理事長の籠池泰典被告(64)と妻の諄子被告(61)は、▽大阪・豊中市で進めていた小学校の建設工事に対する国の補助金や▽学園が運営する大阪・淀川区の幼稚園に対する大阪府や大阪市の補助金をだまし取ったなどとして詐欺などの罪で起訴されています。
だましとった補助金の総額は1億8000万円余りにのぼるとされ、関係者によりますと2人は調べに対し黙秘しているということです。
2人はことし7月末に大阪地検特捜部に逮捕されて以来、4か月近く大阪拘置所で勾留されていて、弁護士は保釈を申請していましたが、大阪地方裁判所は22日、保釈を認めない決定をしたことが関係者への取材で分かりました。
2人については裁判の前に争点や証拠を絞り込む「公判前整理手続き」が始まっていますが、初公判の日程などはまだ決まっていません。
勾留中の籠池夫妻 大阪拘置所で蒸し風呂“独房生活”の過酷
日刊ゲンダイ 2017年8月5日
森友学園の補助金不正受給問題で、詐欺の疑いで逮捕された前理事長の籠池泰典容疑者と諄子容疑者。検察の取り調べに対し、一部黙秘を続けているというが、勾留されている大阪拘置所内はかなり過酷のようだ。
この時季の大阪市内の最高気温は35度を超える。湿気ムンムンのうだるような暑さの中、2人はエアコンもない広さ3畳程度の中で独房生活を余儀なくされているようだ。
「東京や立川の拘置所の独房にはエアコンが設置されているのですが、大阪は送風機だけで、エアコンは完備されていないと聞きました。接見に行った弁護士は『ここは暑すぎる』と収容者から愚痴ばかり聞かされるそうです」(在阪ジャーナリスト)
郵便不正事件で逮捕されたものの、証拠のでっち上げが発覚し、無罪が確定した村木厚子元厚労次官は大阪拘置所に160日以上も勾留された。村木氏はその時の状況を著書で〈24時間、カメラに監視される〉とつづっている。
酷暑の中で狭い独房に閉じ込められ、厳しい監視下に置かれていれば、どんなにタフな人間でも精神的に追い込まれてしまうだろう。2人の代理人を務める弁護士にそれぞれ今の拘置所暮らしの様子を聞いたが、そろって「答えられない」と回答した。
元大阪高検公安部長の三井環氏はこう言う。
「検察にとって真夏は勾留するのに“グッドタイミング”。収容者の中には、厳しい暑さの中でロクに睡眠をとれない人もいる。精神的にも身体的にも弱っていくと、長い取り調べにも耐えられなくなってきます。解放されたい一心で、意思に反する自白をするケースもあるでしょう。こういった人権を無視したような手法は許されません」
疑惑の“本丸”は補助金不正受給ではなく、財務省の「国有地8億円値引き」問題だ。大阪地検は証拠隠滅の恐れがある財務省職員をさっさと捕まえるべきだ。