安倍首相は、北朝鮮との対話は無用と否定しひたすら圧力を強めることを主張する、世界でただ一人の首脳です。今回の東アジアサミットなどでもアジア各国の首脳たちに賛同を求めていたと報道されました。。
それがもしも、いざ米朝が戦火を交えることになった時のことを熟考した上のものでないとしたら、その軽薄さをどんなに批判されても甘受すべきでしょう。
ジャーナリストの高野孟氏が、いざ開戦になれば在韓邦人4万人の引き上げを米軍にも韓国にもとても頼める状況でないし、韓国から拒否されていて自衛隊の出動も出来ない以上、日本には最早何の手立てもないことを明らかにしました。
一体どうするつもりなのか、安倍首相はチャンと答えるべきです。
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永田町の裏を読む
能力も覚悟もないのに戦争を煽る安倍首相の幼稚な論理
高野孟 日刊ゲンダイ 2017年11月16日
トランプ来日に始まる一連の東アジア外交舞台を通じて明らかになったことのひとつは、北朝鮮に対して「対話」という落としどころを用意せずに圧力一本やりで突き進むと主張しているのは、安倍晋三首相ただ一人だということである。中韓露は「戦争はあり得ない。平和的解決を」ということで一致しており、トランプは安倍と「圧力を強める」ことでは一致したが、平和的解決があり得ないとは言っていない。
そうやって戦争を煽るような勇ましい姿勢をとってはいるものの、自分で戦争を仕掛ける能力も覚悟もなく、米国が戦争をやってくれれば後からついていくという程度である。
せめて今から準備できることはイザという場合の在韓邦人の退避だが、これとて韓国が日本自衛隊の上陸を認めるわけがないから、ソウルなどから釜山までの陸送は米軍に依頼するということになっている。元外交官に聞くと、「まったくのおとぎ話だ」と笑ってこう言った。
「もう民間航空機が飛べないような緊迫した事態だから陸送するのだが、その時は在韓米軍は戦闘準備に突入していて、しかも在韓米国人15万人と在韓米軍家族数万人の退避も完了していないかもしれない。4万強の邦人など構っている暇などあるはずがない」
米国が「よし、米軍が責任を持つ」と約束してくれないので、最近は「米国やオーストラリア、カナダを中心とした有志連合による枠組みで対処を検討」し、その際に軍事作戦とは切り離した人道的措置であることを印象づけるため、「国連決議の採択を求めることも視野に入れている」(10月25日付産経ニュース)という。
これもまた錯乱的で、有志連合といっても単なる任意の組み合わせでしかなく、それを国連決議をもって正当化しようというのは無理がある。国連ベースで考えるなら、自国民だけ、有志の国だけということではなく、何国人であろうと全部救うということでなければ論理が立たない。
ところで、在韓外国人で一番数が多いのは中国の何と105万人で、その半分は東北地方出身の朝鮮族。これを退避させるなど不可能だから、中国は絶対に戦争をさせない。以下、米国15万、ベトナム14万、タイ9万などで、こういう人々を差し置いて「邦人だけ優先して助けてくれ」とあちこちにお願いしている日本は、自分のことしか考えない幼児とみなされても仕方がない。
高野孟ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。