米紙ワシントン・ポストが報じたところによると、米国のユン北朝鮮担当特別代表のオフレコ会合での発言で、北朝鮮が核・ミサイル開発を60日間停止すれば、米国は直接対話に向けたシグナルと見なす考えを示したということです。日刊ゲンダイが報じました。
アメリカはいまも空母を3隻もそろえて軍事演習をする示威と挑発行為を続けていますが、北朝鮮は9月15日のミサイル発射以降は核実験とミサイル試射を控え、沈黙を守っています。
米・朝が戦火を交えるなどということは絶対にあってはならないことです。
別掲の記事の通り、米朝が戦火を交えれば日韓にも甚大な被害が及び、もしも北朝鮮が核兵器を使えば10万人の在韓・在日アメリカ人を含めて、数百万人の市民の命が危険になるということです。
安倍首相は、米朝開戦を含むアメリカの選択肢に何の留保もつけずに賛成を高言していますが、彼にそんなことをする権限はありません。アメリカのポチと言われる所以です。
アメリカは派手な言動を繰り返して来ましたが、その裏ではそうした世界の首脳たちが望んでいる「落としどころ」に収める動きも密かに進めているわけです。
そうなると首脳たちの中で唯1人、トランプ氏のあらゆる選択肢に賛意を示していた安倍首相は一体なんだったのかということになります。
それが日刊ゲンダイが付けたタイトルの意味するところです。
それとは別に天木直人氏は「安倍首相にとってすべてがうまく行かなかった今度のアジア歴訪」とする記事を発表しました。
日刊ゲンダイと天木直人氏の記事を紹介します。
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安倍首相は孤立 米ロが裏で握っていた北対話再開シナリオ
日刊ゲンダイ 2017年11月12日
潮目が一気に変わるのか。核・ミサイル開発を強行する北朝鮮をめぐり、対話再開のアドバルーンが打ち上げられた。米紙ワシントン・ポスト(電子版)が報じた米国のユン北朝鮮担当特別代表のオフレコ会合での発言で、北朝鮮が核・ミサイル開発を60日間停止すれば、米国は直接対話に向けたシグナルと見なす考えを示したという。北朝鮮は9月15日のミサイル発射以降は武力挑発を控え、沈黙を守っている。
「北朝鮮問題のキーパーソンは北朝鮮外務省の崔善姫北米局長、ロシアのブルミストロフ特任大使、ユン代表の3人です。崔局長は9月末にモスクワを長期訪問し、ブルミストロフ大使と核・ミサイル問題への対応を協議している。ベトナムで開催中のAPEC首脳会議は、北朝鮮をのぞく6者協議関係国のトップが顔をそろえています。トランプ大統領はアジア歴訪を終える14日にも、北朝鮮のテロ支援国家再指定について結論を出すとみられている。このタイミングでユン代表の発言が流れたのは、米国が対話再開にかじを切る用意があるとのメッセージです」(外交関係者)
日米首脳会談で「圧力を最大限まで高めていくことで完全一致した」と高揚した安倍首相は、完全にハシゴを外された。2泊3日のベッタリ接待で空手形をつかまされ、“取引”したのは米国製防衛装備品の大量購入。ビジネスマンのトランプは日本を飛び立った途端にトーンダウンし、韓国では「軍事的行動ではない全ての可能な手段を使ってこの問題を解決する」にとどめ、圧力強化に反対する中国では「経済的な圧力を強めていくことで一致した」と後退した。
■プーチンが気にする「平昌五輪」と「大統領選」
北朝鮮問題のカギを握る米ロ首脳会談は、開催日程をめぐって両国の説明が二転三転。ドタバタで見送られたが、そもそも北寄りのロシアのプーチン大統領は、対話再開に前のめりだという。筑波大教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。
「米ロ会談の最重要テーマは対話再開のスケジュールになるとみられていました。その背景にあるのは、プーチン大統領が抱える2つの課題で、来年の韓国・平昌冬季五輪(2月9~25日)への参加の是非と、2度目の2選を目指す翌月の大統領選(3月11日)です」
ベトナム入り前にシベリアに立ち寄ったプーチンは現地工場を視察。従業員から「五輪参加はどうなるんですか?」と直撃され、「来年の2月だったな」と応じる様子が9日夜のニュース番組で放送された。プーチン政権にとって、それだけ懸案事項だからだ。ロシアはドーピング問題を抱え、五輪参加に黄信号がともる。世界に誇る軍事力とスポーツ大国を国威発揚に利用するプーチンにとって、五輪は大統領選の結果に直結する。
「五輪を仕切るIOC(国際オリンピック委員会)に最も影響力があるのは米国です。五輪参加が国是のようなロシアからすれば、その見返りに北朝鮮を抑え込むくらいの寝技は造作もない。ロシアも北朝鮮も参加となれば開催国の韓国にも花を持たせられますし、国際社会が案じる米朝軍事衝突も回避できる。平昌五輪のエントリー受け付けは1月29日までですから、ユン代表の言う『60日』とも符合します」(中村逸郎氏)
モリカケ隠しの「国難突破解散」に血税600億円を注ぎ込んだ安倍首相は許し難いが、こうなってくると小物ぶりが際立つ一方だ。
安倍首相にとってすべてがうまく行かなかった今度のアジア歴訪
天木直人のブログ 2017年11月12日
私は安倍首相にことさら批判的な事を書いてるのではない。
それどころか、少しは期待していたほどだ。
しかし、今度の安倍首相のアジア歴訪は、気の毒なほどうまく行かなかった外遊だったと思う。なにしろすべてが裏目に出たからだ。
なんといっても、日本が率先してまとめようとしたTPPがカナダ首相の突然の反対で合意できなかったことだ。どんなに言いつくろっても、これは大きな衝撃であり誤算だ。
そして習近平主席と文在寅大統領の和解である。これにより安倍首相の北朝鮮への圧力包囲網は一気に揺らぐことになった。
それだけではない。この中韓の和解は、日米韓三か国の軍事同盟にくさびを打ち込んだ。
そして習近平主席との首脳会談だ。一強支配を高めた両首脳の間で日中関係が進むと見られていた。私もそう思っていた。しかし、安倍首相が念願する相互訪問について何の進展もなかった。このことは、中韓首脳会談で文在寅大統領の訪中が決まった事と対照的だ。
おまけに、プーチン大統領との会談では、日米安保条約が再びプーチン大統領から持ち出された。つまり北方領土に米軍を駐留させるような日本にどうして北方領土が返還できるか、とダメオシされたのだ。
もちろん安倍首相のアジア歴訪は、まだ、ベトナム、フィリピンと続く。
それを待ってから評価してもいい。しかし、それらはもはや消化試合のようなものだ。不毛な旅を続けることになるだけだ。
だから早く帰ってこい、と安倍首相を批判しているのではない。気の毒な外遊だと同情しているのである(了)