14日の国連人権理事会の対日人権審査で、日本の報道の自由に関する問題について、欧州などが取り上げる可能性があるということです。
そこでは、特定秘密保護法や電波停止の根拠となる放送法4条がメディアの独立性を脅かしているとしてその改正を迫るとみられ、審査で取り上げられた場合、16日に発表される勧告内容に含まれる公算が大きくなります。
審査では米国、中国、韓国、欧州諸国など計110カ国が質問する予定で、報道の自由のほか旧日本軍の従軍慰安婦問題、死刑廃止や労働市場での性差別、福島原発事故後の住民の健康問題などが議題となりそうだということです。
報道の自由の問題を巡っては、デービッド・ケイ特別報告者が5月に公表した対日調査報告書で、特定秘密保護法がメディアを萎縮させている可能性に言及し、改正を勧告しましたが、日本政府は不正確な情報に基づく批判だと反論しています。
国連加盟国は193カ国もあるので、審査の対象になるのは数年に1回のようです。
2013年の国連拷問禁止委員会で、日本の司法は「中世の名残」を留めていると、時代遅れで人権蹂躙の司法のあり方が批判されましたが、そのときに同席していた上田秀明・人権人道担当大使が激高して、「シャラップ」(黙れ)と怒鳴り話題になりました。
日本はその委員会でも、毎回ほぼ同じ改善勧告を受けているにも関わらず、一貫して無視し続けています※。
※ 2013年6月15日 日本の人権大使が国連で「シャラップ」と
※ 2014年6月3日 「中世の名残り」の司法が続く
どうも日本は、アメリカの言うことであれば1兆円の拠出もいといませんが、逆にアメリカ以外の国からは、何を言われても言うことを聞かないという姿勢のようです。
卑屈と傲慢が表裏をなしているというわけです。
東京新聞の記事とデービッド・ケイ特別報告者の「表現の自由」に関する対日調査報告書の要旨を紹介します。
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日本の報道の自由に関心 国連人権理で議題の可能性
東京新聞 2017年11月11日
【ジュネーブ=共同】十四日に行われる国連人権理事会の対日人権審査で、特定秘密保護法などで萎縮していると指摘される日本の報道の自由に関する問題について、欧州などの数カ国が質問内容として取り上げる可能性があることが十日、分かった。関係者が明らかにした。
質問では、特定秘密保護法や政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条がメディアの独立性を脅かしているとして改正を迫るとみられる。審査で取り上げられた場合、十六日に発表される勧告内容に含まれる公算が大きくなる。
報道の自由の問題を巡っては、ケイ特別報告者が五月に公表した対日調査報告書で、特定秘密保護法がメディアを萎縮させている可能性に言及し、改正を勧告した。日本政府は不正確な情報に基づく批判だと反論している。
国連人権高等弁務官事務所によると、審査では米国、中国、韓国、欧州諸国など計百十カ国が質問する予定。旧日本軍の従軍慰安婦問題のほか、死刑廃止や労働市場での性差別、東京電力福島第一原発事故後の住民の健康問題などが議題となりそうだという。
関係者によると、報道の自由については欧州や中南米の数カ国が関心を示し、質問に前向きだという。しかし、最終的に他のテーマが優先されることもあり得るとしている。
デービッド・ケイ特別報告者 「表現の自由」に関する対日調査報告書
2017年5月30日発行
【要 旨 】
Ⅴ 結論と勧告
日本の民主的基盤をさらに強化するために、特別報告者は建設的関与の精神で以下の勧告を行う。
A.メディアの独立性
政府の干渉の法的根拠を取り除いてメディアの独立性を強化するために、放送法4条の撤廃を勧告する。独立した放送メディア規制機関の枠組みを進展させることを強く要請する。
公共放送や民放および活字メディアは、編集活動に直接的であれ間接的であれ圧力がかからないように注意しなければならない。特に、沖縄の基地問題や原発災害、第2次世界大戦における日本の役割など、センシティブな調査するジャーナリストの支援に注意を払わなければならない。
メディアの自由と独立は、ジャーナリストたちのより強い連帯なしには確保できない。
B.歴史教育に対する干渉
学校の教材における歴史的解釈に介入しないよう政府に求める。第二次世界大戦中に日本が関わった深刻な犯罪について国民に知らせる努力を支援することを求める。教科書検定について政府の干渉から守る方法を検討すべきである。
「慰安婦」問題を含む過去の重大な人権侵害に係る公開情報を検証していくため、政府は「真実の権利」国連特別報告者の訪問招請を検討すべきである。
C.選挙運動とデモ活動
公職選挙法を国際人権法に準拠させるために、政治活動に不当な制限を課す規定を廃止するよう求める。
沖縄での抗議活動に向けられた圧力を特に懸念している。公権力は国民に不均衡な処罰を科すことなく、公共政策への反対を表明する自由を侵害されずに抗議や取材を行えるよう努力を行うべきだ。
D.特定秘密保護法
政府に対し、報道関係者の業務に萎縮効果を与えないよう特定秘密保護法の改正を促す。日本の国家安全保障に危害を与えない国民の関心事項である情報を開示しても処罰されないことを保障する例外規定を含めることを奨励する。専門家を擁する独立した監視委員会の設置を求める。
E.差別とヘイトスピーチ
政府に対し、広範に適用される差別禁止法を制定するよう要請する。
F.デジタル権利
(略) (今週のMDS 1482号 2017年06月23日 より転載)