日刊ゲンダイが、元日銀金融研究所長の翁邦雄氏にインタビューしました。
翁氏は、アベノミクス=異次元金融緩和 は、「徹頭徹尾、何もかもが間違っている(要旨)」と述べています。
インタビューでは、淡々と且つ端的に結論だけが述べられていますが、それだけにアベノミクスが根本的に誤っていることが伝わります。
アベノミクスの理論的基礎を提供したノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンは、2015年10月に発表した「日本再考」で、「人口減少が起きている日本では急激な財政拡張策は政策にはなり得ない」と述べ、アベノミクスを否定しました。
そのことは日本経済の実態でも示されているのに、安倍政権はいまだに大間違いの政策を強行しようとしています。
日本経済も、国家の財政も、この先は更にメチャクチャになる方向に進んでいます。
いまは出口を求めるしかないのですが、出口論(=異次元緩和から抜ける方法論)がない(=出口に向かった途端に日本経済が破綻する)ことは当初から指摘されていたことです。
一体、安倍首相はどのように責任を取るつもりなのでしょうか。
註)イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)
2016年1月から始めた短期金利のマイナス金利政策に加え、10年物国債の金利が概ねゼロ%程度で推移するように買入れを行うことで短期から長期までの金利全体の動きをコントロールすること。(野村証券用語解説集より)
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スペシャルインタビュー
2%目標に拘泥 黒田総裁続投に元日銀金融研究所長が警鐘
日刊ゲンダイ 2018年2月24日
4月8日に任期切れを迎える日銀の黒田東彦総裁について、政府が今国会に再任案を提示した。安倍首相は衆院予算委で「手腕を信頼している。2%の物価安定目標に向けて着実に進んでいただきたい」と実績を“評価”していたが、果たしてそうなのか。
黒田日銀が2013年4月から始めた「異次元緩和」は当初、「2年で2%の物価上昇」を掲げていたが、5年近く経っても1度も達成していない。この間、日銀は年間80兆円をメドに国債を“爆買い”し続け、年間6兆円規模のETF(上場投資信託)も購入。なりふり構わぬ緩和策を講じてきたが、物価至上主義による弊害も表れ始めた。
元日銀金融研究所長の翁邦雄・法大客員教授に、黒田続投が日本経済にもたらす影響を聞いた。
――黒田総裁をどう評価していますか。
「黒田総裁は就任当初から、物価目標の2%達成を至上命題としてきました。しかし、現時点でも目標達成には程遠く、黒田さん自身の物差しでは落第と言わざるを得ません。私自身は2%目標達成自体が至上命題と考えておらず、その達成が評価の物差しとは考えていませんので」
―― 一部のリフレ派は、マネタリーベース(資金供給量)を増やせば物価は上がる、と主張していました。日銀は13年4月から「異次元緩和」を始めて以降、マネタリーベースを約340兆円も増やしましたが、物価は上昇しませんね。
「2つのことが言えると思います。1つは『デフレが経済停滞の最大の要因』という経済観が否定されたことです。例えば、17年11月の完全失業率は2.7%まで低下しているが、日銀が重視している同時期の消費者物価指数(コアコア指数)は前年比0.3%。つまり、国内インフレは必ずしも好況の必要条件ではないことが確認されたのです。
2つ目は、金融緩和すれば直ちにインフレにできる、という政策観も否定されました。黒田総裁が本気でインフレ目標達成に取り組んだことによって『金融政策だけではデフレ脱却はムリ』だということが鮮明になったのです。これらは、今後の金融政策の課題を考える上で重要な成果といっていいでしょう」
――黒田総裁は現状の政策を「粘り強く続ける」と断言しています。
「あくまでも2%のインフレ目標達成を最優先課題に掲げることは、金融政策の硬直化を招き、経済の不安定化をもたらしかねないでしょう。資産価格バブルの発生や、物価が上がらないまま不況が到来するかもしれません。日銀はすでに目いっぱいの緩和策を続けているため、このままでは不況に対処するのは難しいと思います」
――日銀は今後、どうあるべきでしょうか。
「白川方明前総裁時代の13年1月の『日銀と政府の共同声明』を再確認するべきです。この声明では、日銀は2%の物価目標を掲げる一方、政府は日銀と連携強化し、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進する――としました。金融政策の強化が財政ファイナンスにつながる懸念に配慮した内容です。
しかし、今は日銀によるイールドカーブ・コントロールで、政府は財政規律を失い、銀行は経営を圧迫され、株式市場や債券市場も日銀による買い支えで歪むなど、金融の不均衡は著しく増している。中央銀行の責務は経済の中長期的な安定を守ること。共同声明の原点に立ち返って、こうしたリスクにもっと目を向けるべきです」