ロシアの米大統領選干渉疑惑を捜査しているマラー特別検察官は16日、メール、フェイスブック、ツイッターなどを通じて共和党候補だったトランプ大統領を応援する集会を組織するなどの干渉を行ったとして、ロシア人13人やロシアのネット企業など3社を連邦大陪審が起訴したと発表しました。
起訴状には、トランプ陣営がロシア側と「共謀」した事実の記載はないということです
これがいわゆるロシアゲートに関して「検察側が主張する内容」で、この1年間の大騒ぎはいったい何だったのかということです。そんなことが選挙戦に影響するとはとても思えないし、外国の組織が違法を覚悟でこの程度のことにわざわざ参入するものでしょうか。
海外の情勢に詳しい「櫻井ジャーナル」は、NSA(米国家安全保障局)史上最高の分析官が、「もしもロシアゲートなるものが存在しているならNSAは証拠を持っているので調査は不要」と述べたとして、マラーが特別検察官になった段階でこの疑惑がインチキだと言うことははっきりしていたと、この疑惑を一蹴しました。
また当初から、ロシアゲート疑惑を、FBIやCIA、ヒラリー陣営の幹部連中や体制側メディアが、大統領選挙の結果を覆し大統領を退陣させるために仕組んだクーデターの策謀だと見做していた「マスコミに載らない海外記事」主幹のPaul Craig Roberts氏は、この結末について「9ヶ月間の捜査で得られるものとして、一体何と惨めな結果だろう!」、「マラー捜査官によって得られたものは皆無」と片付けました。
トランプ大統領が当選してからずっと続いていた国家を挙げての大統領罷免の策謀=しかもそれは体制派が憎悪してやまないロシアを絡めたもの=は失敗に終わりました。
「櫻井ジャーナル」と「マスコミに載らない海外記事」の記事を紹介します。
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存在しないロシアゲートを宣伝する米国は軍事侵略やクーデターだけでなく
選挙にも介入してきた
櫻井ジャーナル 2018年2月19日
13名のロシア人とロシアの3機関を起訴するとロバート・マラー特別検察官は2月16日に発表したが、起訴状の中身は空っぽと言える代物だった。NSA史上最高の分析官のひとりと言われているウィリアム・ビニーが早い段階から指摘しているように、もしロシアゲートなるものが存在しているならNSAは証拠を持っているので調査は不要、つまり特別検察官を任命する必要はなかった。つまり、マラーが特別検察官になった段階でこの疑惑がインチキだと言うことははっきりしていたと言える。
ロシアゲート事件はインチキだが、アメリカ政府は世界中で選挙に介入してきた。それだけでなく軍事侵略、軍事クーデター、1980年代からは傭兵を使った侵略を繰り返している。
第2次世界大戦後に行われた有名なクーデターだけでも1953年のイラン、54年のグアテマラ、60年のコンゴ、64年のボリビア、ブラジル、66年のガーナ、71年のボリビア、73年のチリなどがすぐ頭に浮かぶ。
そのほか、1961年には亡命キューバ人を使ってキューバへの軍事侵攻を試み、79年から89年にかけてはアフガニスタンで秘密工作を実施、81年から87年にかけてはニカラグアの革命政権を倒すために前政権の戦闘員を使ってコントラを編成して攻撃している。1960年代から80年代にかけてのイタリアではCIAを黒幕とする極左を装った爆弾攻撃(テロ)が繰り返された。その工作を実行したのがNATOの秘密部隊のひとつグラディオだ。
このイタリアは戦略上、重要な位置を占めているのだが、コミュニストの影響力が強い国でもあった。第2次世界大戦中、西ヨーロッパでファシストと戦ったのはレジスタンスで、その中心はコミュニスト。そうしたこともあり、1948年に予定されていたイタリアの総選挙ではコミュニストが優位だと見られていた。そこでアメリカ政府は総選挙に介入している。
その際、創設から間もないCIAが重要な役割を果たした。その工作資金1000万ドルを洗浄するため、無数の銀行口座を経由させている。その資金はドイツがヨーロッパで略奪した財宝、いわゆるナチゴールドの一部が使われたという。
ローマ教皇庁のフランシス・スペルマン枢機卿によると、アメリカ政府は密かに、「イタリアにおける多額の『裏金』をカトリック教会に流していた」。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌之訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年)
このスペルマンの高弟だというブルーノ・ビッター(ビッテル)という神父が日本で活動していた。朝日ソノラマが1973年に出した『マッカーサーの涙/ブルーノ・ビッテル神父にきく』によると、GHQ/SCAPの内部で高まっていた靖国神社を焼き払えとい意見を押さえ込んだのがビッターだという。
ビッターは日本で闇ドルを扱っていたことでも知られ、その資金がリチャード・ニクソンを副大統領にするために使われたとも言われている。副大統領になった最初の年、1953年にニクソンは日本を訪れている。月刊誌「真相」の1954年4月号によると、日本でニクソンはバンク・オブ・アメリカ東京支店の副支店長を大使館官邸に呼びつけて「厳重な帳簿検査と細かい工作指示を与え」ているが、この会談にビッターも同席していたという。
その会談の後、霊友会の闇ドル事件にからんでビッターは逮捕された。外遊した同会の小谷喜美会長に対し、法律に違反して5000ドルを仲介した容疑だった。当時の日本人エリートは海外旅行する際、日本カトリック教団本部四谷教会のビッターを介して闇ドルを入手していたとされている。
この事件を掘り下げていくとCIAの秘密工作やアメリカ政界の暗部が浮かび上がる可能性がある。そこで、ビッターが逮捕された際に押収された書類はふたりのアメリカ人が警視庁から持ち去り、闇ドルに関する捜査は打ち切りになってしまった。秘密裏に犬養健法相が指揮権を発動したと言われている。
オーストラリアで労働党のゴウ・ウイットラム政権がアメリカに潰されたことも知られている。1972年12月の総選挙で労働党が大勝したことで成立したのだが、ウイットラム首相は自国の対外情報機関ASISに対し、CIAとの協力関係を断つように命令した。
1973年9月にチリで実行されたオーグスト・ピノチェトのクーデターで社会党のサルバドール・アジェンデ政権を倒しているが、ジャーナリストのデイビッド・レイによると、チリでASISがCIAと共同でアジェンデ政権を崩壊させる工作を展開していたことをウイットラムが知っていたことを示す文書が存在するという。(David Leigh, "The Wilson Plot," Pantheon, 1988)
1973年3月にウイットラム政権の司法長官は情報を政府に隠しているという理由で、対内情報機関ASIOの事務所を捜索、翌年8月には情報機関を調査するための委員会を設置している。(前掲書)
こうした動きに危機感を抱いたCIAは1975年11月、イギリス女王エリザベス2世の総督、ジョン・カー卿を動かし、ウイットラム首相を解任してしまう。ジョナサン・ウイットニーによると、カーは第2次世界大戦中の1944年、オーストラリア政府の命令でアメリカへ派遣され、CIAの前身であるOSSと一緒に仕事をしている。大戦後はCIAときわめて深い関係にあった。(Jonathan Kwitny, "The Crimes of Patriots," Norton, 1987)
マラー捜査の結果: 皆無
マスコミに載らない海外記事 2018年2月18日
Paul Craig Roberts 2018年2月16日
今日(2018年2月16日、金曜日)13人のロシア人と、3つのロシア組織がソーシャル・メディアを利用して、2016年選挙に影響を与えようと策謀したと起訴して、ロバート・マラーは、彼自身と彼が画策したロシアゲート捜査の信用を傷つけたのだ。連中の狙いは、“アメリカ政治体制に不和の種を蒔くこと”だったとマラーは言う。
9ヶ月間の捜査で得られるものとして、一体何と惨めな結果だろう!
ヒラリーの電子メールをロシアがハッキングしたという喧伝され、毎日聞かされた話題は、マラー起訴のどこにも見あたらない。その代わりに“不和の種を蒔くため、ソーシャル・メディアを使った”のだと言う。本当だ! たとえ起訴が正しいにせよ、民主党がトランプに投票した人々を、人種差別主義者、性差別主義者、同性愛嫌い白人のくずのみじめな連中と呼んだ前回の大統領選挙での大変な不和を考えると、たった13人のロシア人がソーシャル・メディアを使って、一体どれだけ不和を増やせるのだろう?
トランプ/プーチン共謀も、マラーの起訴には含まれていないことにも注目しよう。マラーの起訴は、不和の種を蒔こうというロシアの計画は,トランプが、2017年に大統領に出馬するだろうという何らかの考えが現れる前の2014年に始まったと言う。策謀とプーチンとのつながりは、策謀にはサンクトペテルブルクのレストラン経営者が資金を提供したが、彼とプーチンとのつながりは、彼の会社が、ロシア高官と外国首脳の公式晩餐会の仕出しを一度したことだという主張に成り下がった。
最後に、マラーの起訴公表が、ニュースが無い週末だったのは、トランプに対するプーチンと共謀したという売女マスコミがたっぷり我々に与えてくれた膨大なプロパガンダ猛攻を正当化するものが皆無だと、マラーが知っていたことを意味するのに留意しよう。もし起訴が、なんらかの価値ある代物だったら、月曜日朝に発表されたはずで、売女マスコミはFBIとCIAから、新聞に掲載するためのニュース記事を手渡されていたはずなのだ。
13人のロシア人は、一体どうやって不和の種を蒔いたのだろう? これを聞く用意がおありだろうか? 彼らはアメリカ人を装った政治集会を開催し、彼らは、ある人物(身元不明)に平床型トラックに載せる檻の制作費を支払い、別の人物には、囚人服を着せ、ヒラリーを演じさせたのだ。
この策謀に一体どれだけの金が使われたのだろう。月120万ドルという予算は、前回の選挙で、ヒラリーとトランプが使った26.5億ドルと、連邦議会の全候補者が使った68億ドルからして、遙かに些少な額だ。
マラーは、ロシア人13人の一部の電子メールを入手していると主張している。もし電子メールが本物なら、これはまるで少人数の子供が大きなことをするまねゴッコ遊びのようだ。電子メールの一つは、FBIが彼らを追跡しているので、証拠を隠蔽するのに多忙になったと自慢している。
ポール・ライアン下院議長はマラーの策略に引っかかった。
NSAスパイ・プログラムの設計者、ウィリアム・ビニーが言ったことを想起されたい。もし何かそのようなロシアゲート策謀が存在していれば、NSAは証拠を持っているはずだ。捜査など不要なはずだ。
彼らのスパイのFISA裁判所による承認要求が欺瞞に基づいていたことが知られてしまった以上、マラーとローゼンシュタインは自分たちの命を守るために戦っているのだと結論づけられる。以下を参照。
マラーは、 FBIによるFISA裁判所欺瞞から注目を逸らせ続けられるだろうと願って、ロシア政府職員ではない人々に対するこのばかげた起訴をしたのだ。
マラーは、FBI長官として実証したのと同様、特別検察官として、道徳の欠如を実証したのだ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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