2018年2月26日月曜日

自衛隊の最高指揮権者は首相だと明記する改憲案は「悪い冗談」

 軍隊の「文民統制」は、文民の方が軍事行動に抑制的なので軍の暴走が防げるという理念に基づいています。では具体的に文民の代表は誰になるかですが、一般的にはやはり総理大臣ということになるでしょう。
 でも、その人物が自衛隊とは逆に、並はずれて好戦的であったとしたらどうでしょうか。
 いわゆる「文民統制」とは正反対のものになることは間違いありません。いちいち好戦的な方向に口出しをする総理に対して、部下たる「参謀長」辺りが理を説いてそれを止めさせる手間だけでも大変なことになるでしょう。(^○^)

 そもそも憲法に自衛隊を明記すること自体が矛盾なのですが、その矛盾に満ちたものの文案がまとまりつつあります。
 自民党憲法改正推進本部は、憲法改正で自衛隊の存在を書き込む場合、総理大臣が自衛隊の最高指揮権を持つことを明記する方向のようですが、天木直人氏はそれは「悪い冗談」だと述べました。現状に照らせばそう言うしかありません。「悪い冗談というしかない」というのが日本の現実です。

 天木直人氏のブログと毎日新聞の記事を紹介します。
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自衛隊の最高指揮権者は首相だと明記する改憲案の悪い冗談
天木直人のブログ 2018年2月25日
 自衛隊を明記する事だけが目的の矛盾に満ちた改憲案を果たして自民党はまとめる事が出来るか。
 野党はお手並み拝見で見ているだけでいい。そして、そんな矛盾に満ちた改憲案が出てくれば、それを一蹴するだけでいい。
 決して野党のほうから議論に巻き込まれるような愚をおかしてはいけない。議論に巻き込まれてしまったら、議論は尽くした、あとは国民投票だという事になる。
 そうなれば国民投票で押し切られるおそれが出てくる。安倍首相の思うつぼだ。

 そんな見え透いた手に乗ることなく、安倍改憲案など一蹴すればいいのだ。
 そう私は繰り返して来た。その考えは、いささかも揺らぐことはない。
 それどころか、きょう2月25日の毎日新聞を見て、ますます強くなった。毎日新聞が何と報じたか。
 いわく、自民党憲法改正推進本部は、憲法改正で自衛隊の存在を書き込む場合、首相が自衛隊の最高指揮権を持つことを明記する調整に入ったと。
 シビリアンコントロール(文民統制)を明確にするためだと。ここまでくると、もはや悪い冗談だ。
 安倍首相の存在自体がシビリアンコントロール逸脱の安倍首相に、自衛隊の最高指揮権を与えると憲法に明記してどうする。もちろん、憲法案には首相と明記されるだけで、安倍首相とはどこにも書かれないだろう。
 しかし、自衛隊明記の改憲案を強行するのは安倍首相であり、改憲案が国民投票で承認されれば、その改正憲法の下で自衛隊を指揮する初代最高指揮官は安倍首相となるのだ。
 とんでもない事である。このままでは、我々は、そんなとんでもない安倍改憲成立の共犯者になる。
 そうならないためにも、我々は安倍首相の改憲案についての一切の議論を拒否し、一蹴するしかないのだ。
 その思いをあらためて強めてくれた毎日新聞の記事である(了)


自民党 首相の指揮権明記へ 文民統制明確化 改憲本部
毎日新聞 2018年2月25日
 自民党憲法改正推進本部は、憲法改正で自衛隊の存在を書き込む場合、首相が自衛隊の最高指揮権を持つと明記する調整に入った。シビリアンコントロール(文民統制)を明確にするためで、自衛隊を国会の統制下に置くことも明示する方向だ。

 自衛隊明記の条文案は、現在の憲法9条とは法的に別条となる「9条の2」を新設して追記する案が有力だ。「9条堅持」の姿勢を強調する狙いがある。「9条の2」の第1項に自衛隊の定義、第2項に文民統制を盛り込む案が浮上している。

 首相と自衛隊との関係については、首相を「最高指揮官とする」、首相が「最高の指揮監督権を有する」などと明記する方向だ。この際、首相について「内閣の首長たる」などとあえて内閣の代表であることに触れ、自衛隊が内閣から独立した「軍」ではなく、内閣に属する組織であることを明確にする。
 国会との関係では、「国会の統制に服する」と記す案や自衛隊が武力行使する場合などに「国会の承認を得るものとする」などと書き込む案を検討している。

 また、自衛隊が、9条第2項が禁じている「陸海空軍その他の戦力」には該当しないことを明確にするため、「必要最小限度の実力組織としての自衛隊」と明記する方針。「憲法上保持できる自衛力は、自衛のための必要最小限度でなければならない」との従来の政府解釈を踏まえた表現だ。

 自衛隊を明記する改憲に関しては「憲法に書けば、法律に根拠のある防衛省より上位の存在になり、文民統制上の問題が生じる」との指摘があった。推進本部は、自衛隊と内閣・国会との関係を明確にすることでこうした懸念を払拭(ふっしょく)したい考えだ。
 安倍晋三首相は昨年5月、9条第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持)を維持して自衛隊を明記する改憲案を提起した。10月には「シビリアンコントロールをしっかり明記していく」と説明。推進本部は首相方針に沿った条文案を検討している。

 推進本部は党所属の全国会議員に「自衛隊」明記に関する条文案を公募し、100件を超える提案が集まった。これらも精査し、首相方針に沿った案に集約したい考えだ。3月25日の党大会までに、党改憲案の策定を目指す。【田中裕之、小田中大】