北朝鮮問題で絶えず米国の強硬部分にのみ同調している安倍首相は、南北融和には全く対応できずに孤立するしかなく、米国が米朝対話の余地を仄めかすたびに梯子を外されかけます。
訪韓時の歓迎レセプションにも、安倍首相は断りなく米国とともに遅刻し、文大統領の演説が終わってから入場したということです。それも米国は事前に遅刻を通知していたそうですが、日本は通知しなかったということです。
孤影が深まるのは自業自得ですが、何故すべての隣国と対立するのでしょうか。
米国と良ければそれでいいという考えなのでしょうが、当のトランプ大統領はホワイトハウスで12日、不公平な貿易により米国の製造業が衰退し雇用が奪われることを、「殺人」という極端な言葉で表し、日本を中国や韓国と並列して、「殺人」を犯しておきながら許されていると非難したということです。⇒ http://kenpo9.com/archives/3273
二人の「友情!?」とはそんなものなのでしょうか。
五十嵐仁の転成仁語を紹介します。
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内外政策の行き詰まりの中で強まる安倍首相の焦りといら立ち
五十嵐仁の転成仁語 2018年2月14日
平昌オリンピックが始まり、NHKが占拠されてしまいました。オリンピック放送のためにニュースの時間が減り、見なくなってしまった私のような視聴者がいることをNHKは知っているのでしょうか。
このオリンピックの開会式に出席した安倍首相の写真が話題を呼んでいます。韓国の文在寅大統領と北朝鮮から来た高官代表団などの歓喜の輪から少し離れ、ぽつんと一人だけ前を向いている安倍首相の姿が写っていたからです。
トランプ大統領が来日したときゴルフ場でボールをバンカーに入れ、大統領の後を追いかけようとして焦り高いところから出ようとしてバランスを崩しひっくり返って一回転してしまった安倍首相の動画も話題を呼びました。この写真も動画も、今の日本と安倍首相の孤立と従米の姿を象徴しているようです。
オリンピックを契機にした北朝鮮高官代表団の訪韓と南北対話に対して、河野外相も安倍首相も「北朝鮮のほほ笑み外交にだまされるな」「対話のための対話は意味がない」と主張しています。開会式では、アメリカからやって来たペンス副大統領も安倍首相と同じような対応を取りました。
しかし、「ワシントン・ポスト」によると、帰国したペンス副大統領は「北朝鮮が非核化に向けた重要な行動をとるまで、圧力は止めない」と強調する一方で、「対話を望むならば、我々は話をするだろう」と述べ、圧力強化の方針は変えないものの北朝鮮と直接対話をする可能性を示したと報じられています。真っ向から対話を拒否する安倍首相は、アメリカからも取り残されてしまったようです。
自民党の二階幹事長も13日の記者会見で、韓国の文大統領と北朝鮮高官代表団による会談などの南北対話に関し「話し合うのはいいことだ。次のときに役に立つということもあり得る」と評価しました。二階に上がった安倍首相は、二階さんにはしごを外されたということでしょうか。
通常国会での審議が続いていますが、森友学園疑惑に関連する内部文書や録音テープが次々に明らかになり、「廃棄した」と言っていた佐川さんの証言は真っ赤な嘘だったことがはっきりしました。その内容も「価格交渉はしていなかった」「昭恵夫人が関与していたとは知らなかった」などの発言をくつがえすものです。
公文書の扱いという点でも森友学園疑惑の内容についても、佐川さんは偽りを証言していたことになりますから、改めて本人を国会に呼び、今度は偽証すれば罪になる証人喚問という形で証言してもらわなければなりません。安倍総理夫人の昭恵さんと「腹心の友」である加計さんの証人喚問も必要でしょう。
森友・加計疑惑はすでに1年以上も継続して追求されていますが、これだけ長く疑惑追及がなされているのは安倍首相が真正面から誠実に答えることなく逃げ回っているからで、しかも内部文書や録音テープは安倍総理の「ご意向」や総理夫人への忖度が強く働き、特別扱いによって行政が私物化され歪められたことを示しています。朝日新聞に八つ当たりしたり、質問をはぐらかしたりするような安倍首相の荒っぽい答弁は、森友・加計学園疑惑がますます深まることへの焦りといら立ちを示す以外の何物でもありません。
安倍首相の答弁の変化という点では、9条改憲問題についての対応も変わってきています。これまでは、野党の質問に対して総理と総裁の立場を使い分け、国会では正面から答えることを避け、憲法審査会での議論に任せるような形で自民党に丸投げしてきました。
しかし、通常国会が始まってからは、9条改憲に対する野党の質問に踏み込んだ答弁をするようになっています。例えば、2月5日の衆院予算員会で安倍首相は、自らの案について「9条第2項の規定を残し、自衛隊の存在を憲法に明記することによって、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と繰り返し、「自衛隊の正当性を明文化、明確化することは、わが国の安全の根幹に関わる。改憲の十分な理由になる」と述べ、「自衛隊が合憲であることは政府の一貫した立場で、国民投票でたとえ否定されても変わらない」と強調しました。
このような形で安倍首相自身がしゃしゃり出ざるを得なくなったのは、9条改憲論についての国民の理解が深まらないだけでなく、自民党内でさえなかなか議論が煮詰まらないからです。しかも、憲法を変えても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはな」く、「国民投票でたとえ否定されても変わらない」というのですから、いくら答弁しても一体何のために改憲するのか説明できないジレンマと矛盾に満ちたものになっています。
安倍首相は長期政権で飽きられ国会対応で呆れられているというのが、今の姿です。「一強多弱」の下で政権が長期化しても次第に内外政策が行き詰まってきていること、行く手に暗雲が広がり始めていることに、安倍首相は気が付いているのでしょうか。
華々しく展開され国民の注目を集めている平昌オリンピックの影で安倍政権の陰りが広がりつつあり、それにつれて安倍首相の焦りといら立ちも募ってきているようです。オリンピック開会式での孤立した姿や野党の質問にまともに答えない国会答弁のあり方などに、それが如実に表れてきているように思うのは私だけでしょうか。