2018年2月2日金曜日

自衛官の安保法違憲訴訟 東京高裁が審理やり直しを命じる

 安全保障関連法に基づく防衛出動は憲法違反だとして、自衛官が国を相手取り、出動命令に従う義務がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は31日、訴えを却下した1審・東京地裁判決(昨年3月)を取り消し、審理を東京地裁に差し戻しました。

 1審は「原告の部隊に出動命令が出る具体的な可能性があるとは言えず、訴える利益がない」と提訴すること自体が不適法だと型どおりの門前払いをしました。しかしそれは実際に外地への出向命令が出てからでないと提訴できないとでもいうべきもので、それでは全く間拍子に合いません。
 2審は、  、あとから救済することはできない」と述べていますが当然の指摘です。もしも当人が海外に派遣され、そこでの戦闘で相手を殺めるなり自分が殺されるなりした後で、司法判断をくだしたところでどうなるものでもありません。特に日本の裁判は異常に長期間を要し、現実に1審判決が出てから2審の判決が出るまででも10か月も掛かっています。高裁の極めて当然の差し戻し判決に対して、再度の判決までにまたどれほど時間が掛かるのか見ものです。

 何よりも70年近くも「集団的自衛権の行使は出来ない」とされてきた国家の常識が、一内閣によって簡単に覆されたことに対して、司法が何の判断もくださないというのはあり得ないことです。
 これを機会に、「訴える利益がない」という決まり文句で違憲立法審査の要求を門前払いにする悪習は止めるべきです。
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自衛官の安保法違憲訴訟 東京高裁が審理やり直し命じる
NHK NEWS WEB 2018年1月31日
現職の自衛官が、安全保障関連法は憲法9条に違反するとして出動命令に従う義務はないと訴えた裁判で、2審の東京高等裁判所は訴えを退けた1審判決を取り消し、審理のやり直しを命じました。

3年前に成立した安全保障関連法では、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃によって日本の存立が脅かされるような「存立危機事態」が起きた場合、集団的自衛権によって武力行使ができると定められています。

茨城県の陸上自衛隊員は、憲法9条に違反しているとして、国に対して、出動命令が出ても従う義務がないことを確認する訴えを起こしました。

1審の東京地方裁判所は「出動命令が出る事態に直面しているとはいえない」として訴えを退け、自衛官が控訴していました。

2審の判決で東京高等裁判所の杉原則彦裁判長は、国が「将来的に存立危機事態が発生することを具体的に想定できる状況ではない」などと主張していることについて「安全保障関連法が成立したことに照らして採用できない」と指摘しました。
そのうえで「命令に従わない自衛官は免職を含む重大な処分などを受けることになり、あとから救済することはできない」として、東京地裁で審理をやり直すよう命じました。

今後の裁判では安全保障関連法が憲法に違反するかどうか判断が示される可能性もあり、現職の自衛官の訴えがどう評価されるか注目されます。

防衛省「平和安全法制は合憲」
防衛省は「判決内容を精査し、適切に対応していく。平和安全法制は憲法に合致したものであり、安全保障環境が一層厳しさを増す中、国民の命と平和な暮らしを守るために必要不可欠なものだと考えている」とするコメントを出しました。


安保関連法・防衛出動 自衛官の命令従属義務なし 請求却下
毎日新聞2017年3月23日
東京地裁「訴える利益がない」
 安全保障関連法に基づく防衛出動は憲法違反だとして、関東地方の補給部門に勤務する陸上自衛官が国を相手に命令に従う義務がないことの確認を求めた訴訟で、東京地裁は23日、訴えを却下した。吉田徹裁判長は「原告の部隊に出動命令が出る具体的な可能性があるとは言えず、訴える利益がない」と指摘し、裁判で争うことはできないと判断した。

 集団的自衛権の行使容認を柱とする安保関連法は2015年9月に成立した。判決は防衛出動命令について「近い将来に発令される事態に現実的に直面しているとは言えず、原告の主張する危険や不安は抽象的なものにとどまる」と指摘した。

 自衛官は1993年入隊。「入隊時に憲法順守を宣誓し、集団的自衛権行使に従うことは同意していない。命令を拒否すると罰則が科される恐れがある」と主張していた。【伊藤直孝】