2018年2月24日土曜日

三浦瑠麗氏が「正論新風賞」授賞式でもスリーパー・セル発言を正当化

 三浦瑠麗氏が、産経新聞の「正論新風賞」に選ばれたということです。〈日本の論壇に新風を吹き込んだ新進気鋭の言論人〉というわけです。
 彼女は、「国際政治学者」「東大政策ビジョン研究センター講師」の肩書きでテレビに出演し、高踏的というか“上から目線の発言”をしている人ですが、最近次のようなことを語り大炎上しました。
 曰く、「北朝鮮のテロリスト分子が「スリーパー・セル(眠っている細胞)」として日韓に潜んでおり」、「戦争がはじまったら都市で動きはじめると言われ」、「とりわけ大阪が危険」だと。

 根拠のない発言なので一斉に批判されたのは当然のことですが、当人としては引くに引けずに苦し紛れの弁明をするしかなく、結果として傷口を広げLITERAで痛烈に批判されました。
と言い出す

 安倍首相は彼女とは「会食」をする間柄で、新風賞の授賞式には、「既存メディアの論調などに決して流されることなく、持ち前の冷静な分析力とわかりやすい語り口で、評論活動をしておられる」と賞賛するビデオメッセージを贈っています。

 彼女は、「週刊新潮」(215日号)の「異端の学者4人が座談会『我ら9条改正賛成派』」にも登場しており、他の3人というのが百地章・日本大学名誉教授、八木秀次・麗澤大学教授、長尾一鉱・中央大学名誉教授でした。そうしたバリバリの日本会議系憲法学者のサークルに既に加わっていたわけです。
 アカデミズムの住人を謳うのであれば、中立性を装いつつ肝心なところで政権(体制側)をバックアップするのが有効だと思うのですが、「スリーパー・セル」発言の辺りからそろそろ本性を現した方がやりやすいと考えたのかも知れません。そうするとあの「フェイク」騒動は不用意に馬脚を現して「しまった」たのではなく、覚悟のデビューということになりますが、いずれにしてもお粗末だったことに変わりはありません。

 LITERAの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
三浦瑠麗が「正論大賞」授賞式でもスリーパー・セル発言を正当化!
安倍首相も応援メッセージで完全にあっち側の人に
LITERA 2018年2月23日
 2月19日、フジサンケイグループが主催する「フェイク大賞」、いや「正論大賞」の贈呈式が都内ホテルで行われた。

 周知の通り、正論大賞といえば“極右論壇のお手盛り賞”とも揶揄されている例のアレ。「正論」公式サイトによると、〈「自由と民主主義のために闘う正論路線」の基本理念を発展させた学者、文化人〉に「正論大賞」を、〈日本の論壇に新風を吹き込んだ新進気鋭の言論人〉に新人賞に当たる「正論新風賞」を授与するとのことだが、受賞者の顔ぶれをみると、ほとんどは産経新聞や「正論」執筆者の極右トンデモ文化人ばかり。特に最近は劣化が凄まじく、たとえば、2016年の「新風賞」は、昨年『ニュース女子』で取材とは名ばかりのフェイクレポートを展開した軍事ジャーナリスト・井上和彦氏が受賞する始末だった。

 そんな正論大賞だが、2017年の「新風賞」に小川榮太郎氏とあの三浦瑠麗センセイが選ばれたのだ。
 言わずもがなだが、小川サンといえば2012年に『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)という“安倍ヨイショ本”でデビューした文芸評論家。昨年は『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)なる本で“加計問題は朝日とNHKの共謀”等の陰謀論を展開し、あまりに荒唐無稽すぎて朝日新聞から提訴されちゃったあの人だ。
 しかし、意外だったのは、もうひとりの三浦センセイの受賞である。たしかに、三浦瑠璃といえば、最近、安倍応援団や歴史修正主義者の地金がどんどん出てきているし 先日は“北朝鮮のスリーパー・セルがいてとくに大阪ヤバイ”発言や“大震災で北朝鮮の工作員の迫撃砲が発見された”発言で大炎上。その差別性やフェイクぶりがあらわになった。

 しかし、一方で三浦氏はこれまで“知的なアカデミズムの住人”“中立的な立場で政治状況を俯瞰して検証できる学者”というセルフブランディングで売れっ子になった御仁。こんな極右トンデモ文化人に贈られる賞を、あの“陰謀論”丸出し評論家の小川氏と一緒に受けて、自分のブランディングを崩すなんてことはさすがにしないだろう、と思っていた。
 ところが、その三浦センセイが、この正論大賞の贈呈式に嬉々として登場し、「(北朝鮮危機の)Xデーについても、専門家はそれに伴うリスクやコストもしっかり情報発信していくべきだ」などと件の“スリーパー・セル発言”を正当化してみせたのだという。主催の産経新聞記事によると、〈今後もタブーなく発言していく決意を示した〉のだとか。

 三浦氏の“北朝鮮のスリーパー・セルがいてとくに大阪ヤバイ”発言や“大震災で北朝鮮の工作員の迫撃砲が発見された”発言は、別にタブーに触れたから炎上したのでなく、何の根拠もないデマだったことがバレただけなのだが、それはともかく、この姿勢を見ていると、いよいよ三浦センセイは、これまでの中立ブランディングを捨てて、完全にアッチ側へ身を置く決断をしたということなのだろうか。

「週刊新潮」では日本会議系の百地章や八木秀次に失笑アドバイス
 そういえば、三浦センセイ、ちょっと前にも「週刊新潮」(新潮社)18年2月15日号の「異端の学者4人が座談会「我ら9条改正賛成派」」なる企画に登場していた。この座談会では三浦センセイのほか、百地章・日本大学名誉教授、八木秀次・麗澤大学教授、長尾一鉱・中央大学名誉教授が参加。ようは三浦センセイ、集団的自衛権を合憲とするなどバリバリの日本会議系憲法学者のサークルに仲良く加わっていたわけだ。

 それだけでも、現在の三浦瑠麗という人の立ち位置がはっきりするというものだが、しかし、笑ったのが座談の内容だ。極右学者たちが悲願である9条改憲への課題について語るなか、三浦センセイは「なぜそんな9条が人気なのか」と切り出し、こんな珍解説を述べている。
「私は(9条が)日本におけるナショナリズムの代替物だと思っています。アイデンティティーを強化したい時、ごく普通にナチュラルに選ぶのって大体ナショナリズムなわけじゃないですか。けれども、敗戦国だし、今の保守政権に対して親近感を覚えられない人たちは、9条が世界に一つだけの花、みたいに捉え、世界でもユニークな存在だとして自らのアイデンティティーを支えている。だから、9条を信奉する人たちは、必ずしもナショナリズムと対極にあるのではなく、そういうものに対しアイデンティティーを強化する必要のある「弱い個」なのだと思います

“9条護憲派はアイデンティティを強化する必要のある「弱い個」”──これぞ三浦センセイの得意技である“ナンチャッテ分析”の典型だろう。実際、三浦氏の前提に従えば、9条改憲派はまさに「ナショナリズム」そのものを選択しているから、したがってアイデンティティを強化したい「弱い個」である、なんて言うこともできるはずだが、なぜか三浦センセイは9条護憲派だけをそうだと決めつけている。というか「弱い個」だからなんなのかって話でもあるのだが、ようするに三浦センセイの言論のレベルって、こういう小手先だけの中身スカスカをそれっぽく味付けして話しているに過ぎないのである。

 まあ、それはおくとしても、さらに笑えるのは百地氏から“どうすれば女性たちが9条改憲を選ぶよう説得できるのか教えてほしい”と請われた三浦センセイが、自信満々にこんなアドバイスをしていたことだ。
「あれはこうなっているとか「教える」形ではダメですよね。あと、「国際的には」という言い回しも禁句。“君は無知だからね”という本音が見え隠れしてしまいますから」
「優しくない言い方をしたり、何となく騙しているように聞こえる説得の仕方もよくない」
 いやはや、それってまさに三浦センセイが『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)でやってることなんですけど……。さすがに、自分のことは一番自分がわかっている。そういうことなのかもしれない。

安倍首相が三浦瑠麗センセイに送ったメッセージとは?
 いずれにしても、この記事を読むと、三浦氏が“知的な中立派の学者”から“極右論壇のアイドル”に舵を切ろうとしていることがよくわかる。
 まあたしかに、あっちの世界では、いくら差別発言をしようが、トンデモ歴史観を披露しようが、フェイクを連発しようが、批判されることはない。それどころか「よくくいった」「さすがルーリー」とちやほやしてくれる。
 知性や知識の欠如がどんどん露呈し、国際政治学者というのがハリボテ、フェイクであることが明らかになりつつある三浦センセイにとって極右論壇は、自尊心を守ってくれ、“上から目線”を続けられる唯一の場所なのだ。

 しかも、これからは、日本の最高権力者も三浦センセイのことを全面的にバックアップしてくれそうだ。昨年、三浦氏が安倍首相のメシ友デビューを果たしたのは記憶に新しいが、安倍首相は今回の正論大賞贈呈式にもビデオメッセージを贈り、「既存メディアの論調などに決して流されることなく、持ち前の冷静な分析力とわかりやすい語り口で、評論活動を通じておられる三浦さんには、初の女性受賞者としても、今後、さらなるご活躍をおおいに期待しております」と三浦センセイにエールを送ったという。
 安倍首相は三浦氏のことを相当に気に入っていると聞く。正論大賞に安倍首相がメッセージを送るのは恒例になっているが、このメッセージも社交辞令ではなく、「これからどんどん強力な安倍応援団になってくださいよ」という期待が込められたものだろう。

 三浦センセイがこの期待の声に応えて、いったいこれからどんな“御用文化人”ぶりを見せるのか。その“ご活躍ぶり”に注目していこうではないか。 (編集部)