北朝鮮の核・ミサイル問題について、日本では、米高官の「決断のときは近づいている」などの発言を根拠に、平昌五輪が終われば「待ったなし」になるかのようにメディアは報じています。しかし識者たちは、「北朝鮮問題」は米国が日・韓に高額な武器を売り込む格好の口実になっているので、米国がその旨みを解消する筈はないと、冷静に見ています。
いずれにしても、米国は目下エルサレム・イラク・シリアなど中東問題で手一杯なので、北朝鮮問題で動き出す余裕などはないというのが専門家の見方です。
いきおい米朝間の対話ムードが醸成される方向ですが、それでは完全に孤立してしまうと焦っているのが安倍首相です。
20日、政府は今月16日に、中国の上海の東およそ250キロ沖合の東シナ海の公海上で、北朝鮮船籍のタンカーが船籍不明の小型の船に横付けしている様子を、海上自衛隊のP3C哨戒機が撮影した画像を公表しました。国連安保理決議で禁止した洋上での物資の積み替え(=瀬取り)を行っていた疑いが強い、と安保理にアピールするためです。
政府は14日にも、13日に同じ東シナ海の公海上でP3Cが撮影した同様の写真を公開し、国連安保理に通報しています。
元外交官の天木直人氏は、「瀬取り」を取り締まることは「臨検」(=戦闘行為)と紙一重のことでなので、それは日・朝間の戦闘行為につながると警告しています。
そして日本の国防とは何の関係もない遠くの公海上を、わざわざ自衛隊機に「哨戒」させているのは安倍首相の意向によるものだとしています。
「世に倦む日々」氏は、
「米国にとっては、南北融和も米朝対話も悪くない政治の転がり方なのだ。それが都合が悪い国が一国だけあり」それは極右の安倍政権に牛耳られている日本であるとし、
「今、安倍晋三は焦っていて、~ 、昨年までにトランプと一緒に構築した北朝鮮制裁の国連スキームを使って、何とか有事発生のフェーズ(=様相)に持ち込もうと思惑している。具体的に何かというと、北朝鮮の “瀬取り船舶” の臨検だ」と述べています。
そしてもしも臨検が可能になる取り決めが出来れば、米国はそれを日本にやらせる筈だとしています。そうなれば直ちに「日・朝間の戦争状態」が生まれることになり、安倍首相はそれを狙っているというわけです。
以下に「北朝鮮との戦争は海自の臨検から始まる - 米朝戦争ではなく日朝戦争」(世に倦む日々)を紹介します。
注) 文中に登場する古川勝久氏は国連安全保障理事会・北朝鮮制裁委員会の前・専門家パネル委員で、「北朝鮮制裁法」の制定を提唱しています。
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北朝鮮との戦争は海自の臨検から始まる
- 米朝戦争ではなく日朝戦争
世に倦む日々 2018年2月20日
準備されている戦争は、米朝戦争ではなく日朝戦争なのではないか。ここ数日、急にそのように悲観するようになった。年明け以降、私は北朝鮮情勢については楽観的な見方が強くなり、米朝の軍事衝突は起こらないという判断に傾いていた。それには根拠がある。まず、東アジア・太平洋担当の国務次官補代行のスーザン・ソーントンが、15日の議会公聴会で「『鼻血作戦』は存在しない」と明言している。危機を煽る一方の日本のマスコミは報道しないけれど、このDCの事実は大きい。ソーントンは中国との協調重視の立場をとるハト派の外交官で、ティラーソンがずっと後押ししてきた人物だ。日本国内では、情報長官のコーツが13日に議会で証言した「決断の時は近づいている」という物騒な表現に注目が集まり、米国による先制攻撃が必至であるような報道で埋め尽くされているが、米国の動きは決して主戦論一色で染まっているわけではない。むしろ、対話に向けて北朝鮮に探りを入れている政府高官の発言が相次いでいる点に気づく。12日にはペンスが韓国からの帰路の機中で「北朝鮮が望むのならば、我々は対話する」と述べ、発言はニュースとして広く伝わった。18日にはティラーソンが「北朝鮮が対話の用意ができたと言うのを待っている」と発言している。
これらはどういう意味だろうか。普通に考えれば解釈は簡単で、北朝鮮が「米国と対話する用意がある」と言えばいいというメッセージだ。核・ミサイルを示威して脅す挑発外交をやめ、対話路線に転換する意思を明示せよという要求だ。そういうシグナルを明確に発信すれば、こちらも形を作って応じてやると呼びかけている。つまり、言葉どおり北朝鮮の対話外交を待っているという意味だ。現在、南北対話の方は順調に進んでいて、平昌五輪後にIOC会長のバッハが平壌を訪問することが決まっている。北朝鮮側はおそらく、金与正の指揮で五輪後に本格的な南北融和のプログラムを繰り出すはずで、少女時代のソヒョンらK-POPの歌手を平壌に招いてコンサートを開くとか、韓流作品の映画祭を開催するとか、文化交流事業の計画を打ち出してくるだろう。五輪閉会式から4日後の3月1日には、三・一独立運動を記念する三一節(サミルチョル)がある。今年は99周年で、来年は100周年の民族のメモリアル・イヤーだ。たとえば、私が北朝鮮指導部の政策参謀なら、来年の三一節に金正恩がソウルを訪問し、南北合同の政府主催記念式典を挙行するという大胆な戦略を発表する。それを金与正から動画か会見で公表させる。このサプライズには韓国国民も度肝を抜かれるだろうし、世界があっと驚くだろう。
このように南北友好の環境が醸成される中で、北朝鮮側が米朝対話に応じる外交カードを切ってきたら、ホワイトハウスの保守派も簡単に突っぱねるわけにはいかないし、文在寅政権の協調路線をバックアップする方針に転じ、軍事圧力と経済制裁を強化してきた従来の政策を修正せざるを得なくなるだろう。北が米朝対話に応じると表明する場面が出現することは、トランプ政権にとっては実は画期的な成功を意味する。自らの剛腕で中国と国連を引っ張った、対北朝鮮外交の勝利を喧伝できる成果の実現に他ならない。それは、11月の中間選挙のキャンペーンで自画自賛できる材料を得ることを意味する。米国にとっては、南北融和も米朝対話も悪くない政治の転がり方なのだ。それが都合が悪い国が一国だけあり、極右政権がハンドルする日本である。今、安倍晋三は焦っていて、焦りつつ、昨年までにトランプと一緒に構築した北朝鮮制裁の国連スキームを使って、何とか有事発生のフェーズに持ち込もうと思惑している。具体的に何かというと、北朝鮮の「瀬取り」船舶の臨検だ。16日の産経新聞の「主張」に詳しく説明されていて、まるで大本営たる安倍官邸の今後の北朝鮮戦略を予告するような記事だ。瀬取りは安保理制裁決議が禁止する密輸行為だから容認できないと言い、しかし、北朝鮮から出航して他国の港に寄港せず海上で積み荷を積んでいる船舶は現行の決議では拿捕できないのだと言っている。
そのため、新たな追加の制裁決議を通すか、日米の独自制裁で臨検と拿捕をやろうよと言っていて、それをするには国内法制の整備が必要だとある。まさしく、古川勝久の「北朝鮮制裁法」の構想と符合するではないか。そういうことだったのだ。すべての情報が繋がって一つの絵が描かれる。「北朝鮮制裁法」は、抽象的な戦争法案ではなくて、具体的な標的と日程が決まった直近の戦争法制で、すぐに北朝鮮のタンカーを臨検・拿捕する準備ができているのだ。国会を通した法律で合法化するだけなのだ。先週、東シナ海でベリーズ船籍のタンカーから北朝鮮のタンカーに「瀬取り」が行われている写真が公開され、NHKを始めとする全局のニュースで大きく報じられた。撮影したのは海自のP3Cである。偶然なのか、なぜかこのP3Cの偵察活動が17日のTBS報道特集で紹介されていて、奇妙な一致に胸騒ぎを覚えさせられる。臨検の任務を担当するのは海自の特別警備隊(SBU)で、米海軍のSEALsをモデルとして創設された特殊部隊だ。不審船の武装解除と無力化を主任務とする。江田島に配備されているこの特殊部隊(SBU)が臨検に出動する。公海上の臨検は海自、領海内の臨検は海保が分担となっている。もし、海自SBUが実際に北朝鮮船舶を相手に動けば、初めての任務発動になり、他国船舶への軍事力の行使になる。どういう法的正当化(事態定義)を図るか不明だが、隊の作戦準備は確実に進んでいる。
北朝鮮の「瀬取り」船舶への臨検を、どうやら米国は日本の自衛隊にやらせる魂胆だ。われわれの通念では、北朝鮮との戦争は、米国が最初に一撃を入れ、巡航ミサイルと無人機と戦略爆撃機を使い、空から北朝鮮の地上を派手に攻撃するところから始まると考えられていた。「鼻血作戦」の開始と進行であり、(1)レーダー通信網を潰し、(2)軍事境界線に張りついた長距離砲と多連装ロケット砲を殲滅し、(3)核開発施設を破壊するものと想定されていた。だが、何とも予想外なことに、戦争は北朝鮮から遠く離れた海から始まり、しかも最初の攻撃を担うのは自衛隊らしいのだ。臨検と拿捕を受けた北朝鮮は、当然、この行為を自衛隊(日本軍)による侵略戦争の先制攻撃と断定、非難し、主権を守る自衛戦争の突入を布告、朝鮮人民軍による日本への反撃と報復を宣言するだろう。そこから先はどうなるか分からないが、古川勝久の「北朝鮮制裁法」の有事フェーズの国内措置が次々と起動し、あの三浦瑠麗の不気味な妄言が、単なるお笑い番組のネタではなく、安倍晋三が周到に仕込んだ戦時環境作りの一環であった真実が判明する恐怖の展開になるかもしれない。北朝鮮には基本的に海軍の部隊がない。海上で自衛隊と戦闘する能力がなく、シーレーンを防衛する戦力がない。したがって、人民軍による反撃と言ってもできることは自ずと限られてしまい、使える軍事力はミサイル(BC弾頭含む)と特殊部隊だけという前提になる。
胸騒ぎがしたもう一つの理由は、偶然かもしれないけれど、街の書店の店頭で、池上彰の『知らないではすまされない自衛隊の本当の実力』という新刊が発売されているのを見たことがある。海自のP3CやSBUのことが書かれていた。本の内容は、昨年8月にフジテレビで放送した番組を文字印刷しただけの粗雑なものだが、奥付に2月15日発行とあり、何やら急いで出版した事情と背景を窺わせる。不吉な思いで帰宅すると、TBSの報道特集でP3Cの搭乗員の訓練の様子が流されていた。まさか、近々プライムニュースに古川勝久が出演して、「北朝鮮制裁法」と船舶臨検の話をするのではあるまいか。あるいは、NHKのNW9かテレ朝の報ステの小特集で、呉の特別警備隊(SBU)が特集され、不審船を急襲して制圧する訓練の模様が放映されるなどということがあるのではないだろうか。いずれにせよ、外務省はP3Cが撮影した「瀬取り」の証拠写真を国連の北朝鮮制裁委員会専門家パネルに送っていて、「瀬取り」船舶の臨検を認める追加制裁決議を迫る動きに出ている。南北融和が着々と進展して効果を上げている中、安倍晋三は焦って急いでおり、平和へと向かっている半島情勢を覆して有事を到来させる狙いで、一刻も早く海自SBUを臨検に出動させたいだろう。あるいは、「瀬取り」の原油を積載して北朝鮮に帰るタンカーを海自ヘリで挑発し、艦の船員からヘリに小銃を発射させて既成事実を作るという謀略も考えられる。
安倍晋三の立場と論理に内在して考えたとき、南北融和と米朝対話の動きを邪魔するためには、この男はどんなことでも手段を選ばずやりたいだろう。支持率も高止まりしているし、9条改憲に世論を押し流すには絶好のタイミングと案件だし。