時事通信などの世論調査では内閣支持率が微増しています。これについて日刊ゲンダイは、多くの国民は国会でどんな議論が行われているのか知らないのではないかと、疑問を呈しました。政府側の弁明はデタラメの羅列で、弁明もできないことは木で鼻を括るように開き直るというわけで、言論の府は崩壊しているというのにこれでは、そうとしか考えられないというわけです。
まず森友学園問題に関しては、佐川宣寿氏の答弁を否定する財務省の内部資料や音声データが次々に出てきて、野党からの佐川氏の国会出席の要求に応じるかどうかで、官邸と財務省の間でひそかにせめぎあいが行われているようで、この件についてはもう勝負がついているのですが。政府がどんな責任の取り方・付け方をするのかは未知数です。
「働き方改革」に関しても、安倍首相が最も基本となる労働時間の多寡に関して偽データを用い半月間もその撤回に応じませんでした。当然「撤回します」の一言で済まされる問題ではありません。
日刊ゲンダイは、
・共産党の志位委員長が、「政府は『生活保護を利用していない低所得世帯の生活水準が下がった』ことを理由に生活保護費のカットを決めたが、『低所得世帯の生活水準が下がった』のなら、アベノミクスは失敗と自ら認めたことにならないか」と追及した
・立憲民主党の枝野代表が、「政府はいまにも北朝鮮からミサイルが飛んでくると危機が煽っておきながら、自衛隊の安保法違憲の訴訟で、政府が裁判所に提出した書面には『現時点で存立危機事態は発生しておらず、国際情勢に鑑みても、将来的に発生することを具体的に想定し得る状況にない』と書かれている」と、国民向けと裁判所向けで正反対のことを述べていると批判した
の二つの例を上げ、こうした野党の鋭い指摘をメディアがキチンと報道していないので、多くの国民は知らないでいるのでは、と述べています。
金子勝・立正大名誉教授(憲法)は、「議会の骨抜きは、必ず独裁者がやることで、議会が無力化すれば、国民の政治に対する関心が低くなるので、独裁者には好都合」として、「日本の大手メディアが、野党が鋭い質問をしても取り上げようとしない」のは、その路線を行っているからと述べています。
もしも大手メディアがその極めて重い責任を放棄すれば、日本はますますおかしな方向に向かうことになります。
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言論の府は完全崩壊 新聞が書かないデタラメ国会の惨状
日刊ゲンダイ 2018年2月17日
(阿修羅 赤かぶ 2.17投稿 より転載)
まったく信じられない話だ。微増ではあるが、安倍内閣の支持率がアップしているのだ。時事通信の調査では、支持率は前月比2.1ポイント増の48.7%。不支持率は1.7ポイント減の31.9%だった。
多くの国民は、国会でどんな審議が行われているのか分かっていないのではないか。大新聞テレビは伝えようとしないが、国会では安倍政権のヒドさ、デタラメが次々に暴露されている。
アベノミクスの失敗も証明された。政府は生活保護費のカットを決め、その理由を「生活保護を利用していない低所得世帯の生活水準が下がったからだ」と釈明している。そのことについて共産党の志位委員長はこう問いただしている。
「総理は『安倍政権になって貧困は改善』と宣伝してきたが、『低所得世帯の生活水準が下がった』のなら、貧困は改善は嘘で、アベノミクスは失敗と自ら認めたことになりませんか」
痛いところを突かれた安倍首相はグウの音も出なかった。しかし、このやりとりを知る国民は皆無に近いのではないか。大手メディアは、ほとんど取りあげなかったからだ。
もし、国民が国会審議の中身をすべて把握したら怒り狂うに違いない。安倍政権の対応はヒドすぎるからだ。なかでも「森友疑惑」に対する答弁は、醜悪もいいところだ。
もはや、佐川宣寿国税庁長官が国会で虚偽答弁をしていたことは明らかだ。
森友学園との面会記録を「すべて廃棄した」と言い募り、賃料についても「先方に賃料を示すことはない」と明言していたが、財務省の内部資料に「学校法人を訪問し、貸付料の概算額を伝える」「貸付料の水準は1月に伝えている」と、ハッキリ明記されていることが分かった。
ところが、麻生財務相は、屁理屈をこね回して絶対に虚偽答弁を認めない。野党をバカにするようにニタニタと笑いながら質問を聞き、答弁席に立つと「あくまで省内での法律相談であって面会記録ではない」「具体的な金額は提示していない」と、佐川答弁は問題なしと強弁しているのだから信じられない。
■野党の鋭い質問は報じられない
かと思うと、豪華な“外相専用機”を要求している河野太郎外相は、国会審議中にグーグーと爆睡する始末である。完全に国会を軽視している。
とにかく、この国会は異常だ。野党の質問時間は大きく削られ、質問時間が増えた与党議員はヨイショ質問をつづけている。しかも、野党が安倍政権の急所を突く質問をしても、大マスコミは報じようとしない。
驚いたのは、立憲民主党の枝野代表が「安保法制」について、衝撃的な事実を明らかにしたのに、ほとんど伝えられなかったことだ。
昨年11月、政府が「存立危機事態」について裁判所に提出した書面を持ちだして、こう追及している。
「いまにも北朝鮮からミサイルが飛んでくると危機があおられているド真ん中で、政府が裁判所に提出した書面には『現時点で存立危機事態は発生しておらず、国際情勢にかんがみても、将来的に発生することを具体的に想定し得る状況にない』と書かれている」
なんと、国民の反対を押し切って「安保法案」を成立させておきながら、安倍政権は「存立危機事態」は、将来も発生しないと裁判資料で明言しているのだ。あれだけ危機をあおっておきながら、二枚舌もいいところだ。
ところが、大新聞テレビは、このビッグニュースを伝えようともしない。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「本来、この国会は、もっともっと注目されていいはずです。なにしろ、森友疑惑はクライマックスに差し掛かっている。サスペンスドラマだったら、犯人が崖の上に追いつめられた状態です。誰が考えても、佐川長官の虚偽答弁は明らかですからね。佐川長官の虚偽答弁が証明されたら、いよいよ次は昭恵夫人にターゲットが移る。ところが、国会に対する国民の関心が予想以上に低い。理由は、大手メディアが詳細を伝えないからですよ」
「働き方改革」に関して、安倍首相が偽データに基づいて答弁した問題も、「撤回します」の一言で許されそうなムードだ。
「国会の無力化」に手を貸す大マスコミ
大新聞テレビは、自分たちがなにをやっているのか、分かっているのか。なぜ、破廉恥国会の一部始終を伝えないのか。
安倍首相が総選挙で大勝した後、一番最初にやったことは、野党の質問時間を大きく削ることだった。慣例だった<野党8割・与党2割>の時間配分を、<野党64%・与党36%>に変えている。
もちろん、モリカケ疑惑を追及される時間を減らしたいという思いもあったのだろうが、隠れた狙いが「国会の無力化」にあったのは間違いない。大手メディアのやっていることは、安倍首相に手を貸すのも同然である。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。
「安倍首相は、国会を官邸の下部組織にするつもりなのでしょう。政府が提出した法案をベルトコンベヤーのように成立させる機関にする。議会の骨抜きは、必ず独裁者がやることです。議会が無力化すれば、国会審議がつまらなくなり、国民の政治に対する関心が低くなる。独裁者には好都合というわけです。それでも、メディアが権力を監視し、批判をつづければ、国民の政治への関心は維持されます。ところが、日本の大手メディアは批判精神を完全に失っている。野党が鋭い質問をしても取り上げようとしない。国民の政治への関心は低くなり、結果的に権力者が発信するニュースばかり耳にするようになるだけです」
これでは、安倍内閣の支持率も上がるというものだ。憲政史上、最悪の国会となっている。
■「働き方改革」のウソも許すのか
いい加減、大手メディアは目を覚ました方がいい。欧米先進国のメディアだったら、意地でも破廉恥国会の実態を報じているはずである。
アメリカのメディアは、トランプから「フェイクニュース」と攻撃されても、「OK、かかってこい」とファイティングポーズを取り、記者を増員してトランプ発言の“ファクトチェック”を続けている。
なのに、日本の大手メディアの幹部は、夜な夜な、安倍首相とうれしそうにグラスをかわしているのだから話にならない。
政治評論家の森田実氏が言う。
「ジャーナリズムが立脚すべきなのは“健全な常識”と“正義”です。必要なのは、権力者の嘘は許さないという態度です。権力者の嘘を許したら、必ず国は傾きます。安倍首相は偽データに基づいて“働き方改革”を押し進めようとした。“撤回します”の一言で許される問題ではありませんよ。しかも、与党議員にわざと質問させ、アリバイ的に“撤回します”と答弁し、すぐに他のテーマに移っている。やり方が姑息すぎる。ところが、大手メディアは“撤回”したことで、終わりにしようとしている。なぜ、首相の責任を追及しないのか。10年前、20年前だったら、森友疑惑にしろ、働き方改革にしろ、連日キャンペーンを張っていたはず。このままでは、いずれ大手メディアは存在意義を失い、国民から信頼されなくなるだけです」
大新聞テレビは、自分で自分のクビを絞めていることに気づいた方がいい。