2018年2月6日火曜日

名護市長選 基地問題に触れなかった渡具知氏が当選

 4日投開票され名護市長選の結果は、安倍政権が推した渡具知武豊氏(56)が、移設に反対する翁長雄志知事が支援した現職の稲嶺進氏(72)の3選を阻み、初当選するという残念な結果になりました。
 移設を巡る政府と県の対立を反映した選挙戦でしたが、移設の是非を明言しない戦略を徹底し経済振興策などを訴えた渡具知氏が大差で勝利しました。米軍普天間基地の名護市辺野古移設阻止を公約に掲げる翁長知事には大きな打撃です。
 
 この結果について沖縄タイムスは5日の社説で、新人候補勝利の最大の理由は、一にも二にも自民、公明、維新3党が協力体制を築き上げ、徹底した組織選挙を展開したことにあったとして、前回自主投票だった公明が、渡具知氏推薦に踏み切ったことが大きかったとしました。
 そして、辺野古移設は「もう止められない」との諦めムードをつくり、米軍普天間飛行場の移設問題を争点から外し、経済振興を前面に押し出すのが渡具知陣営の一貫した戦術でそれが成功したとし、期日前投票が過去最高の21600余で、有権者の444投票数の577%という「異常に高い数値」になったのは、企業や団体による働き掛け締め付けが徹底していたことを物語っているとしました。

 問題はどちらの陣営が多かったのかですが、同紙などの出口調査で辺野古移設反対が646%に上っていたことは当日投票分では稲嶺氏側が優勢と見られるので、逆に事前投票者には渡具知氏支持者が圧倒的に多かったことを示します。これがもしも強制的な動員によるものであるならば、選挙の公平性を著しく阻害することになり、由々しき問題です。

 沖縄タイムスの社説は、渡具知氏は選挙中は基地問題に全く触れなかったものの、公明党と交わした政策協定書には「日米地位協定の改定及び海兵隊の県外・国外への移転を求める」ことがはっきりと書かれていると指摘し、市長就任後もぶれることなく「県外・国外移転」を追求し、地位協定見直しに向け積極的に取り組んでもらいたいとしています
 そして翁長知事今後公約である新基地阻止をどのように実現していくのか県議会与党とも早急に対応を協議し、新たな方針を打ち出す必要があるとしています。

「日々雑感」の記事も併せて紹介します。
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社説[名護市長に渡具知氏]「基地疲れ」経済を重視
沖縄タイムス 2018年2月5日
 名護市長選は、政府・与党が全面支援する前市議の渡具知武豊氏が、3400票余りの差をつけ初当選した。
 新基地建設に反対する翁長雄志知事ら「オール沖縄」勢力が推す稲嶺進氏は3選を果たすことができなかった。
 辺野古の海を切りさくように次々と護岸が造られる中で迎えた選挙である。
 「もう止められない」との諦めムードをつくり、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を争点から外し、経済振興を前面に押し出すのが渡具知陣営の一貫した戦術だった。
 渡具知氏は選挙期間中、全くといっていいほど辺野古を語っていない。現職の失政が市の閉塞感を招いたとして流れを変えようと訴え、暮らしの向上を求める市民の期待票を掘り起こした。

 勝利の最大の理由は、一にも二にも自民、公明、維新3党が協力体制を築き上げ、徹底した組織選挙を展開したことにある。
 菅義偉官房長官が名護を訪れ名護東道路の工事加速化を表明するなど、政府・与党幹部が入れ代わり立ち代わり応援に入り振興策をアピール。この選挙手法は「県政不況」という言葉を掲げ、稲嶺恵一氏が現職の大田昌秀氏を破った1998年の県知事選とよく似ている。
 注目すべきは期日前投票が2万1660人と過去最多となったことである。有権者の44・4%に及ぶ数字は、企業や団体による働き掛け、締め付けが徹底していたことを物語っている。
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 前回選挙との大きな違いは、自主投票だった公明が、渡具知氏推薦に踏み切ったことだ。渡具知氏が辺野古移設について「国と県の裁判を注視したい」と賛否を明らかにしなかったのは、公明との関係を意識したからだろう。
 両者が交わした政策協定書には「日米地位協定の改定及び海兵隊の県外・国外への移転を求める」ことがはっきりと書かれている。
 安倍政権が強調する「辺野古唯一論」と、選挙公約である「県外・国外移転」は相反するものだ。
 本紙などの出口調査では、辺野古移設反対が64・6%に上った。選挙によって辺野古移設反対の民意が否定されたとはいえない。
 渡具知氏が「県外・国外移転」を公約に掲げて当選した事実は重い。市長就任後もぶれることなく「県外・国外移転」を追求し、地位協定見直しに向け積極的に取り組んでもらいたい。
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 新基地阻止を強く訴えた稲嶺氏だったが、地域活性化や医療など生活に密着した課題への対応が見えにくかったという印象は否めない。
 稲嶺氏が敗れたことは、新基地建設反対運動だけでなく、秋の知事選に大きな影響を与えるのは確実だ。
 翁長知事による埋め立て承認撤回に不透明さが増し、一部で取り沙汰されている県民投票も見通せなくなった。
 翁長知事は今後、公約である新基地阻止をどのように実現していくのか。
 県議会与党とも早急に対応を協議し、新たな方針を打ち出す必要がある。


民主主義を考えよう。
日々雑感 2018年2月5日
 移設問題が浮上してから6度目の市長選。翁長(おなが)雄志(たけし)知事は移設に反対しているが、安倍政権は「地元の理解が得られた」として工事を加速させるとみられる。一方、翁長知事は苦しい立場に立たされる。
 結果を受け、渡具知氏は報道陣に「名護を変えてくれ、明るい街に発展させてくれということだと思う」と語った。辺野古移設については「裁判の結果に従う」と述べるにとどめた。

 選挙戦で渡具知氏は「基地問題にこだわり過ぎ、経済を停滞させた」と稲嶺市政を批判し、学校給食費の無償化や観光振興などを中心に訴えた。移設問題については「国と県の裁判を見守る」と繰り返す一方、米軍再編への協力が前提となる再編交付金を受け取って市の振興に活用すると主張してきた。

 自民党は知名度の高い国会議員を次々と応援に派遣し、小泉進次郎・筆頭副幹事長は選挙期間中に2度、応援に訪れた。党幹部らも昨年末から水面下で何度も沖縄に入り、全面的に支援した。

 一方、稲嶺氏は結果を受け「残念ながら、辺野古移設の問題がなかなか争点となりえなかった」と話した。選挙戦では、市長を務めた2期で、国からの米軍再編交付金がなくても地域振興を進めてきたと主張。「移設を受け入れて、子どもや孫に危険を残してはいけない」と「移設反対」を前面に出して訴えた。

 翁長知事もほぼ連日、名護市に入り「基地は経済発展の邪魔になる」と街頭などで繰り返し訴えたが、支持は広がらなかった。結果について翁長知事は「争点はずしをされたというのは残念だった。厳しい結果。これからいろいろ相談をしながら、やっていきたい」と述べた
(以上「朝日新聞」より引用)

 辺野古沖移設反対を主張していた現職名護市長候補が敗れたという。それに対して自公が推す候補が勝利して辺野古沖移設が促進される模様だ。

 沖縄から米軍基地を追い出すには普天間移設先を最低でも県外に移設しなければならない。出来ればグアムへ撤退させるのがベストだ。米国の防衛は米国領(委託統治を含む)で行うべきだ。
 しかし自公候補は選挙の争点からあえて辺野古沖移設を隠して、名護市の経済活性策を中心として、政権が後押ししている自分こそが名護市を活性化させる市長候補だ、と主張して勝利した。

 日本の民主主義はこの程度の経済的な利益最優先の民主主義だ。発展途上のガキの民主主義というよりもジコチュー民主主義だ。赤いニンジンは必ずしも誰もが食べられるものではない、と事実がお解りでないようだ。

 五年以上前から安倍氏が唱えているアベノミクスは国民を裕福にしただろうか。一握りの株式投機家や企業経営者たちは儲けたかもしれないが、圧倒的多数の国民は貧困化している。
 それが行政主導の経済政策の実態だ。多くの国民が富を手に出来るのは民間企業の経済活性化と労働分配率の向上しかない。そうした簡明な経済原理すら分からない、政府の回し者が名護市にやってきて「名護市の経済を良くします」と戯言を述べれば、それに釣られて投票して、辺野古に永久的な米軍基地を設置するのを容認する、というのは沖縄の問題を解決することではなく、沖縄の基地問題を固定化するものでしかない。

 しかし、これも民主主義の結果だ。民主主義は必ずしもフェアーではないし、正義でもない。しかし民主主義以上の政権決定システムがないのも事実だ。