2019年2月21日木曜日

21- 日銀は物価をカサ上げ 消費税アップ対策で“禁じ手”

 消費税は、導入した時点から大蔵省(当時)が「悪魔の税制」と呼んだもので、徴税側の者から見ればこれほど便利なものはなく、納税者にとってはこれほど非道な「逆進性」はありません。
 しんぶん赤旗が頻繁に消費税アップ反対の記事を掲げ、経済学者の植草一秀氏が折にふれて「消費税を増税すれば日本は破壊される」と警告※1する所以です。
※1 植草一秀氏18年11月30日)安倍内閣は消費税増税によって消滅する
 
 日銀は、これまで維持してきた「物価見通し増税要因を除外する」方針を捨て、10月の増税要因を物価見通しに含める方針に転換したということです。日刊ゲンダイが「前代未聞の禁じ手」だと批判しました。
 物価については、総務省が無理に物価上昇を抑えた数値にするために苦心惨歎していることが明らかにされた2ばかりなのに、一体どうしたのでしょうか。
 本来は政府から独立している筈の日銀が2%物価目標」の未達に苦しむなかで、背に腹は代えられないと決心したということのようですが、お粗末な話です。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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日銀もカサ上げ 消費税アップを物価に反映させる“禁じ手”
日刊ゲンダイ 2019年2月20日
「偽装バズーカ」が炸裂だ――。「毎月勤労統計」の賃金、GDP、「貯蓄ゼロ世帯」など、数値をよく見せる“かさ上げ”が相次いでいる。よりによって、このタイミングで、「2%物価目標」の未達に苦しむ日銀が、物価見通しのかさ上げを進めている。これまでの方針を百八十度転換し、10月の消費税アップを物価に加える“禁じ手”である。
 2013年3月に就任した日銀の黒田総裁は、2年で2%の物価目標実現を打ち出した。ところが、一度も達成せず、達成時期は6回も先送りされた。揚げ句、昨年4月の金融政策決定会合で「2019年ごろ」としていた達成時期を削除した。
 今年1月の金融政策決定会合でも、20年度の消費者物価(除く生鮮食品)見通しを、前回のプラス1.5%からプラス1.4%へと下方修正。この先、トランプ大統領の円高圧力による輸入品価格の下落、携帯電話の値下げ、教育無償化などの下げ要因が目白押しで、物価目標はいっそう遠のいている。
 そんな中、日銀が打ち出したのが、10月の消費増税要因を物価に反映させる前代未聞の“禁じ手”だ。
 
■毎月勤労統計の手口と同じ
 これまで日銀は、消費増税を特殊要因と見なし、増税の影響を除いて物価見通しを示してきた。ところが突然、今年1月、10月の増税要因を物価見通しに含める方針に転換したのだ。日銀に聞いた。
「10月の消費増税は、同じタイミングで行われる教育無償化とのパッケージと考えています。物価への影響はほぼ相殺されるので、従来のように増税を特殊要因として除かなかった。1月の『展望リポート』で、増税要因を含む数値を“参考値”とする報道がありましたが、違います。すでに、増税を含む数値の方を重視しています」(広報課)
 
 まるで毎月勤労統計の「手口」と同じ。実際、効果てきめんだ。
 1月の「展望リポート」によると、物価は消費増税で0・5%押し上げられるが、教育無償化で19年度0.3%、20年度0.4%押し下げられると試算している。これまでなかった消費増税要因を加えると、教育無償化のマイナスは打ち消される上、むしろ0・1~0・2%のプラスに転じるのだ。物価見通しを“改善”する起死回生のかさ上げである。経済評論家の斎藤満氏が言う。
 
「建前として、これまでも消費税は福祉に使われてきました。直接、間接に、物価を抑制したり、下げる効果もあります。政府が、増税と教育無償化をパッケージで示したからといって、今回だけ増税要因を物価に含むのはおかしい。過去との比較もできなくなってしまいます。物価目標が達成できない中、日銀が上昇要因を盛り込んで、“かさ上げ”したとみられても仕方がありません」
 4月の「展望リポート」からは増税要因を含む物価見通しに一本化される可能性も。そうなると過去との非連続は決定的。算出方法を変更した毎勤やGDPと同様、日銀の物価見通しもワケが分からなくなってしまう
 
 15年11月の経済財政諮問会議に出席した黒田総裁は、「直近の名目賃金のマイナスは、統計上のサンプル要因が影響」と、「毎勤」の統計方法にイチャモンをつけ、“上振れ方式”導入を後押ししている。そんな黒田総裁の下、方針変更で物価見通しが“改善”されたのだ。
 日銀にデリカシーがあるのなら、これまで通り「増税要因除く」を基本とすべき。「李下に冠を正さず」――。次回の物価見通しは4月の金融政策決定会合で示される。しっかり監視しよう。