2019年2月28日木曜日

安倍首相の“妄想”にラブロフ露外相が激怒


 ロシアのラブロフ外相は24日、安倍首相が6月に北方領土を含む平和条約締結問題に「必ず終止符を打つ」と意気込んでいることについて「誰も一度も、平和条約締結の枠組み案など見たことがない。プーチン大統領も私も、他の誰も、そうした発言につながる根拠は与えていない日本側が何を考えているか私には分からない」と述べました。
 
 安倍首相は年頭会見で「北方領土には多数のロシア人が住んでいる。住民の方々に、日本に帰属が変わるということについて納得、理解をしていただくことも必要です」と語りましたが、そのときもロシアから1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約を加速するとした日ロ首脳の合意の本質を乱暴に歪め、両国の世論をミスリードするものだ」と厳しい抗議を受けました中村逸郎筑波大教授ロシア政治)は、安倍首相の発言『内政干渉にあたる暴走だ』とプーチン政権は受け止めた」と述べています。
 
 ロシアの各種世論調査では北方領土の引き渡し反対が7割を超えているため、プーチン大統領は「今後、辛抱強さを要する作業が待っている。合意は両国の世論の支持を得なければならない」と交渉の長期化を強く示唆してきました。
 「北方領土」に関するロシア側の主張は旧ソ連時代から一貫していて、「第2次大戦の結果 合法的に編入した」というもので、日本も無条件に受け入れるべきとの立場です。
 
 1月14日の日ロ外相会談でも、ラブロフ氏は、国連憲章や第2次世界大戦終結を巡る国際文書により、北方4島がロシア領であることには議論の余地がない」と主張し、歯舞群島と色丹島の日本への引き渡しを定めた共同宣言を基礎にした平和条約交渉の前提として、「第2次世界大戦の結果受け入れが絶対的な第一歩だ」と日本側に要求しました。また南クリール諸島が日本の国内法で「北方領土」と明記されていることは「ロシアにとって受け入れられない」とも述べました。
 
 要するに、第2次世界大戦の正当な結果として北方領土がロシア領になったと認めない限り平和条約交渉は進めないというもので、見解の相違はあるもののロシア側の主張は論理的で首尾一貫しています。
 それに対して安倍首相(あるいは河野外相)が何か内容のある反論をしたという話は全く聞かれずに、あるのはせいぜい菅官房長官「引き続き粘り強く対応していきたい」という意味不明の言い訳だけです
 そうでありながら安倍首相は国内向けには冒頭に述べたようなことを吹聴している訳なので、ラブロフ氏が怒りの談話を出すのは尤もなことです。
 前出の中村逸郎教授は、ラブロフ氏の一連の発言から「日ロ交渉の主体はラブロフ外相ということがはっきりした」と述べています。そういう認識が日本側に全くないのであれば、この交渉の帰趨は推して知るべきでしょう。
 
 国内では多数を背景に滅茶苦茶な政治手法が事実上通用するので、安倍首相は見境いがなくなったようですが、外交では国家が相手なのでそんなことは通用しません。「外交の安倍」が如何に無内容であったかの証明です。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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安倍首相の“妄想”に露外相激怒 平和条約締結は決裂一直線
日刊ゲンダイ 2019年2月26日
 どうやらカンカンのようだ――。安倍首相が「領土問題を解決して平和条約を締結する」と表明していることに、ロシアのラブロフ外相がブチ切れている。
 もはや“牽制”というレベルを超え、ほとんど安倍首相のことを“ウソつき”呼ばわりだ。
 ラブロフ外相は、ベトナムと中国の歴訪前に、両国メディアのインタビューに答え、24日にロシア外務省が公表した。
 安倍首相は6月に平和条約の枠組み合意を目指しているが、ラブロフ外相は「誰も一度も、枠組み案など見たことがない。日本側が何を考えているか、私には分からない」と一蹴。安倍首相が北方領土を含む平和条約締結問題に「必ず終止符を打つ」と意気込んでいることについて、こうこき下ろした。
「正直言って、その確信がどこから来ているのか分からない。プーチン大統領も私も、他の誰も、そうした発言につながる根拠は与えていない」
 要するに、「何も決まっていないのに、なに勝手なこと言ってんだ!」ということだ。
 
■「勝手に話を作るな」と言っているに等しい
 筑波大の中村逸郎教授(ロシア政治)が言う。
「ラブロフ外相は、これまでも4島の主権や北方領土という呼称について発言してきましたが、今回は質が違います。『勝手に話を作るな』と言っているに等しい。ロシア側が一切根拠を与えていないのに、平和条約締結について、確信に満ちて語る安倍首相の姿勢と人格を批判しているのです。安倍首相があまりにも話を盛り、しかも繰り返して口にするので、さすがに堪忍袋の緒が切れたのでしょう
 
 さらにラブロフ外相は畳みかけた。
「日本は米国主導の反ロ的な国連決議には賛成するのに、ロシアの提案には反対か棄権ばかり」
「5月のトランプ大統領訪日時、ロシアとの平和条約もテーマだという。日本にそこまで独立性がないとは、(呆れて)何も言えない」
 中村教授が続ける。
「日本では、ラブロフ外相に“強硬論”を言わせて、最後はプーチン大統領がうまくまとめるという見方がありますが、違うと思います。日本人は自分たちに都合よく解釈しすぎです。2人のスタンスは同じでしょう」
 安倍首相は25日、ラブロフ発言について「いちいち反応するつもりはない」とダンマリ。国民は現実を直視した方がいい。