2019年2月22日金曜日

22- 軟弱地盤伏せ土砂投入 「国はいつも問題を後出し」(東京新聞)

 東京新聞が<税を追う>のシリーズの中で、「辺野古埋め立て強行」を、別建てで報じました。
 その(上)です。国は軟弱地盤を公表しないまま工事を強行し、後戻りできなくなってから明らかにするという、いつものやり方をここでも採りました。
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<税を追う 辺野古埋め立て強行>
(上)軟弱地盤伏せ土砂投入 住民憤り「国、いつも問題後出し」
東京新聞 2019年2月21日
 エメラルドグリーンの美(ちゅ)ら海に、赤茶けた土砂の投入が始まって一カ月以上がたっていた。一月三十日、衆院本会議。安倍晋三首相はこう力説した。
 「地盤改良工事は必要であるものの、一般的で施工実績が豊富な工法で工事は可能だと確認された」
 沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、埋め立て海域にある軟弱地盤の存在を政府が初めて認めた瞬間だった。
 
 「何を今更。政府のやっていることは偽装だらけに見える。故郷がズタズタにされるようで悲しい」。名護市出身で、今は那覇市で暮らす横田真利子さん(66)は吐き捨てるように言った。「辺野古の海に厚さ四十メートルの軟弱地盤が広がっている」-一年前に地元紙が報じていた。
 暴いたのは、基地建設に反対する沖縄平和市民連絡会の北上田毅(きたうえだつよし)さん(73)。昨年三月、防衛省沖縄防衛局から開示された文書を見て目を疑った。埋め立て予定地の複数の地点で、海底の地盤の固さを示す「N値」がゼロとなっていた
 
 勝手に杭(くい)が地中に沈んでしまうほど軟らかい地盤。長年、役所で公共事業に関わってきた土木技術者だったからこそ見抜けた欠陥だった。「豆腐のような地盤の上に基地を造るなんてありえない」。慌てて県やマスコミに伝えた。
 防衛局は当初、軟弱地盤の存在を想定していなかった。基地を造るには地盤改良が必要で、大幅な設計変更は避けられない。工費も工期も莫大(ばくだい)にかかる
 
 県が昨年八月に埋め立ての承認撤回の理由に挙げたほど、軟弱地盤は基地建設の帰趨(きすう)を握る重大な問題だった。それでも防衛省は県に伝えていなかった。
 驚くのは、北上田さんが情報開示請求する二年前の二〇一六年三月、地盤を調べた業者から防衛局に調査結果が出ていたことだ。防衛局は一四年度から海底ボーリング調査をしており、県によると、以前から防衛局に調査結果を求めていたという。
 「隠していたわけではない。調査結果は行政文書なので、行政手続きに則(のっと)って対応するだけ」と平然と答える防衛省。昨年六月になって調査結果を県に示したのは、県の開示請求を受けてのことだった。建設が危ぶまれるほどのリスクを抱えながら防衛省の態度は頑(かたく)なだった。
 
 「N値0」が公然の事実となっても、「総合的に判断しないと分からない」「土によって強度を持つ可能性がある」と、軟弱地盤の存在を認めようとしない。工事をいったん中断して計画を再検討するどころか、昨年十二月に埋め立て区域への土砂投入を強行した。
 しかし、その裏で防衛省は、軟弱地盤を改良するための大掛かりな工事をひそかに検討していた。
 本紙は防衛省の委託業者が今年一月にまとめた「地盤に係る設計・施工の検討結果」という百七十四ページの内部報告書を入手した。
 そこには軟弱地盤は最深部で海面から九十メートルの深さまで達しているとあった。世界でも地盤改良の実績がない深さで、七万本以上の砂の杭を地中に打ち込む強化策を想定しているが、杭は最大で深さ七十メートル程度で完全には改良できない。
 
 「実績が豊富」という首相答弁を覆すような内容。報告書に関する記事が出ると、岩屋毅防衛相は「報道は臆測の域を出ない」と否定。防衛省も沈黙を貫く。
 首長や県議として辺野古問題に二十年以上かかわり、現在は県政策調整監の吉田勝廣氏(74)には、政府の狙いが透けて見える。「都合の悪いことは、後戻りできなくなってから明らかにする。国のやり方は、いつも後出しなわけさ」
 
 二十四日に辺野古埋め立ての賛否を問う沖縄県民投票が行われる。政府は「沖縄の気持ちに寄り添う」と言いながら、昨秋の知事選で示された民意を置き去りに工事を強行する。論点をずらし、不都合な事実を隠そうとする権力の暴走を追う(中沢誠、望月衣塑子が担当します)