2019年2月1日金曜日

01- 施政方針演説に打倒ロシアの歌を引用した安倍首相の愚

 安倍首相が施政方針演説で得意げに引用した短歌
「しきしまの 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」
は、当時進行中の日露戦争に向けて、明治天皇が国民を鼓舞激励した歌でした。
 共産党の志位委員長は即日そのことを指摘していますが、安倍首相は多分「単に国民が心を一つにすることの偉大さを謳ったもの」とでも逃げるつもりだったのでしょう。
 しかし古来、詩歌の解釈がそんな浅薄なもので良しとされた例はありません。本当にそう弁解する積りだったのであれば、無知無学を天下に晒すことになります。
 
 日露戦争は日本にとっては輝かしい勝利の歴史ですが、ロシアにとっては屈辱の歴史に他なりません。
 何よりも北方領土問題が二国間のテーマになり、ぎくしゃくした関係に陥っているこの時期に、国会演説のなかでそんな歌を披露したのであれば、プーチン大統領がロシアへの当てつけであると受け取るであろうことは火を見るよりも明らかです。一体どう弁解する積りなのでしょうか。もしも上記のような逃げ口上を使おうとすれば、それこそプーチン氏を心底激怒させることになるでしょう。
 
 さすがに安倍首相にはプーチン氏を激怒させる積りはなかったのでしょうが、結果的にこんな事態となったのは、偏に安倍首相の浅はかさによるものです。
 つくづく彼に外交をさせるのは無理なことだということを分からせる話です。
 
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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プーチン激怒 安倍演説「打倒ロシア」号令短歌を引用の愚
日刊ゲンダイ 2019年1月31日
 どうして、このタイミングで、この短歌なのか。安倍首相が施政方針演説で引用した短歌が、問題になり始めている。短歌は日露戦争中、明治天皇が国民に勇気ある戦いを呼びかけたものだ。しかし、日露戦争は日本にとっては栄光の歴史でも、ロシアにとっては屈辱的な敗戦の歴史である。よりによって、今月22日、安倍首相はプーチン大統領と会談したばかり。ロシア国民が触れられたくない歴史に触れたことで、プーチン大統領を刺激したのは間違いない。
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 安倍首相の“間抜けな引用”は、今回が初めてじゃない。昨年9月の総裁選の時も、「薩摩と長州で力を合わせ、新たな時代を切り開いていきたい」と、鹿児島県をヨイショし、わざわざ桜島をバックに出馬を表明しながら、「我が胸の燃ゆる思ひにくらぶれば煙はうすし桜島山」と、幕末の志士が薩摩への失望を詠んだ歌を引用している。どうやら、歌の意味を知らずに「桜島」という単語で選んだらしく、無教養ぶりを露呈した。
 
 今回は無教養で済まない。
 「しきしまの 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」――。安倍首相が引用したのは明治天皇が詠んだ歌。「日本人の大和魂の勇ましさは、(平時では現れなくても)何か起こった時こそ現れるものだ」という意味で、日露戦争真っただ中の1904年に詠まれた。進行中の日露戦争に向けて、国民を鼓舞激励する天皇の「打倒ロシア」の号令なのだ。
 
 日本は大国ロシアを破り、ロシアから南樺太(サハリン島南部)などを奪っている。安倍首相は、日露戦争が大好きらしく、2015年の「戦後70年談話」でも、「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」と語っている。しかし、ロシアにとっては目を背けたい黒星だ。
 
 筑波大の中村逸郎教授(ロシア政治)が言う。
「どうして、北方領土問題が難航するこのタイミングで、“対露戦争”に号令をかける意味の短歌を引用したのか理解に苦しみます。ロシアに押されっぱなしの安倍首相は、国内向けのアピールを込めたのかもしれませんが、ロシアは戦争を仕掛けられたと受け止めるはずです。怒ったプーチン大統領は6月の大阪G20をボイコットするかもしれません。ロシアにとって日露戦争は、アジアの後進国に負けて、サハリンという領土まで奪われた屈辱の戦いですからね。第2次大戦後、ロシアが北方領土を占領し、その後も引き渡しに応じないのは、日露戦争の仕返しとの意味もあるのです」
 
 年頭会見でも、安倍首相は北方領土で暮らす住民の「帰属問題」を持ち出しロシア国民を怒らせた。外交のイロハが分かっていない。