2019年2月26日火曜日

県民投票で反対が多数 埋め立て直ちに中止せよ(琉球新報.・沖縄タイムス)

 沖縄県民投票から一夜明けた25日朝、辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前では、「民意は示された」「県民は屈しない」と書かれたプラカードを持つ市民ら約40人が座り込みましたが、午前9時半前に県警機動隊員約20人に強制的に排除されました。その後資材を積んだトラックはこの日もいつも通り次々と工事現場に入って行きました。
 
 沖縄県の玉城デニー知事は、首相や在日米大使館へ投票結果を通知するため3月1日にも上京する方向で調整していますが、安倍首相は25日朝、県民投票で辺野古沿岸部の埋め立てに「反対」が7割超となった結果に関し、普天間の固定化は避けなければならないとして「移設をこれ以上、先送りすることはできない」と記者団に語りました。
 ハガティ駐日米大使は25日、大阪市での講演後、記者団に、辺野古移設は沖縄の負担軽減や普天間返還のための「唯一の解決策」で、移設を推進するトランプ政権の方針は変わらないと述べました。
 
 共産党の志位委員長は24日、安倍政権に対して、県民投票に示された沖縄県民の民意を重く受け止め、辺野古新基地建設のための埋め立てをただちに中止すること、普天間基地は、「辺野古移設」という「条件付き」では、永久に返って来ないので、無条件での撤去を求め米国と交渉することを、強く求めるとする談話を発表しました。
 
「辺野古移設が日米両政府が合意した唯一の解決策」を繰り返すだけの安倍首相では埒があきません。琉球新報は社説で、「政府辺野古移設が唯一の解決策と繰り返し述べているが、それは安倍政権にとっての解決策という意味しか持たない」と述べています
 天木直人氏は、安倍首相との会談は無意味なのでまっすぐにアメリカに行きトランプ大統領と直談判すべきであるとしています。
 
 玉城デニー知事は、政府に工事中止を要請すると表明し、国への対抗措置として昨年8月に続き、埋め立て承認を再び撤回することも検討するとしています。
 
 琉球新報は25日の社説で、「普天間飛行場の返還1995年の少女乱暴事件がきっかけで、当初、普天間のヘリコプター部隊を、嘉手納飛行場など県内の既存の米軍基地内にヘリポートを建設し移転することだったのが、曲折を経て大規模な基地建設へと変容していった。
 新基地を建設したとしても普天間が返還される確証はなく、さまざまな理由を付けて返還が先送りされる可能性が大きい。政府は、県内移設を伴わない全面返還に方針を転換し、米側と交渉してもらいたい。
 さらに、海面下90mに達する地盤改良工事は世界的にも例がなく、建設工事の実現性も大きく揺らいでいて、沖縄の民意に反するばかりか、膨大な血税を浪費する荒唐無稽な工事と言わざるを得ない」と述べ、玉城デニー知事は今回示された民意を足掛かりにして、断固たる決意で政府との交渉に臨んでほしいとしています
 
 沖縄タイムスの社説も併せて紹介します。
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<社説>県民投票で反対多数 埋め立て直ちに中止せよ
琉球新報 2019年2月25日
 名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票で、反対の民意が明確に示された。特定の基地建設を巡り、民主主義で定められた制度によって県民が自ら意思表示をしたのは初めてだ。2月24日は沖縄の歴史の中で特筆すべき日になった。
 
 法的拘束力がないにもかかわらず、有権者の過半数が投票し、43万人を超える人々が新基地建設にノーを突き付けた。この事実を政府が無視することは断じて許されない。
 政府はこの結果を尊重し、新基地建設工事を直ちに中止すべきだ。市街地の真ん中にある米軍普天間飛行場は、県内移設を伴わない全面返還に方針を転換し、米側と交渉してもらいたい。まずは県民投票の結果をありのままに米国に伝え、理解を求めることだ。
 地元が反対する場所に基地を置くのは米国にとっても得策ではない。沖縄側の意向をくみ取る方が賢明だ
 
 県民投票をせざるを得ないところまで沖縄を追い込んだのは、米国追従の姿勢を崩さず、知事選の結果さえ顧みない安倍政権だ。その背後には、沖縄に基地を置くのは当たり前だと思い込んでいたり、あるいは無関心であったりする、多くの国民の存在がある
 県民投票を機に、基地問題を自分の事として考える人が全国で増えたのなら、投票の意義はさらに高まる。
 
 普天間飛行場の返還が具体化したのは1995年の少女乱暴事件がきっかけだ。米軍基地の整理縮小を求める世論の高まりを受け、5~7年で全面返還することを日米両政府が96年に合意した。
 当初示された条件は、普天間のヘリコプター部隊を、嘉手納飛行場など県内の既存の米軍基地内にヘリポートを建設し移転することだった。それが曲折を経て大規模な基地建設へと変容していった
 23年前の県民投票で基地の整理縮小を求める強い意思が示された。だが今日、多くの県民の意向に反し、新たな米軍基地の建設が進められているのは由々しき事態だ。
 
 政府は辺野古移設が「唯一の解決策」と繰り返し述べているが、それは安倍政権にとっての解決策という意味しか持たない。新基地を建設したとしても普天間が返還される確証はない。「5年以内の運用停止」の約束をほごにしたように、さまざまな理由を付けて返還が先送りされる可能性が大きいからだ。
 さらに、建設工事の実現性も大きく揺らいでいる。予定地の軟弱地盤に対応し7万7千本のくいを打つ必要があるが、水深90メートルに達する大規模な地盤改良工事は世界的にも例がない。建設費は県が試算した2兆5500億円よりも、さらに膨らむ。
 沖縄の民意に反するばかりか、膨大な血税を浪費する荒唐無稽な工事と言わざるを得ない。玉城デニー知事は今回示された民意を足掛かりにして、断固たる決意で政府との交渉に臨んでほしい。
 
 
社説 辺野古「反対」7割超 計画断念し代替策探れ
沖縄タイムス 2019年2月25日
 信念や確信、悩みや戸惑い。3択のどちらに投じられた票にも、それぞれの思いが込められているはずだ。
 県民投票の結果を厳粛に受け止めたい。今こそ「辺野古」を巡る対立と分断に終止符を打つ第一歩を踏み出す時である。
 
 普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票が24日、すべての市町村で実施された。
 投票率は52・48%。反対票は、賛成票と「どちらでもない」票を合わせた数を大幅に上回り、投票資格者の4分の1を超えた。
 新基地建設に反対する玉城デニー知事は、県民投票によって今後の政策推進の原動力を手に入れたことになる。
 反対票は、昨年の知事選で玉城知事が獲得した過去最多の得票を上回り、40万の大台に乗った。
 辺野古埋め立てについて、県民投票で沖縄の民意が明確に示されたのは、今度が初めてである。
 このことは安倍政権の強引な埋め立て政策が民意によって否定されたことを意味する。
 軟弱地盤の改良工事に伴う「工事の長期化」という点からも、県民投票で示された「明確な民意」という点からも、新基地建設計画は、もはや完全に破たんした。
 政府は直ちに工事を中止し、県と見直し協議に入るべきだ。
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 戦後、基地優先政策の下で自己決定権をないがしろにされてきた県民にとって、投票結果の持つ意味は大きい。
 米軍基地の整理縮小や日米地位協定見直しの賛否を問う1996年9月の県民投票は、労組が発案し主役を担う労組主導の運動だった。
 今回、署名活動を中心になって担ったのは、さまざまな立場の市民である。
 とりわけ対話を求める若い人たちの取り組みは、幅広い層の共感を呼んだ。
 昨年9月の県知事選で玉城知事を誕生させた「新しい政治」を求めるうねりは県民投票に引き継がれていたのである。
 
 政府の強引な土砂投入に対し、国内外から工事停止を求める声が相次いだ。
 ハワイ在住県系4世のロブ・カジワラさんが始めた米ホワイトハウスの請願サイトへの電子署名は、21万筆を超えた。
 県民投票に法的な拘束力はないが、だからといって、政府がこの結果を無視することは許されない。
 稲嶺恵一元知事も仲井真弘多元知事も、「軍民共用」「15年使用期限」、普天間飛行場の「5年以内の運用停止」などの条件を付して辺野古移設を認めた。
 だが、政府はいずれの条件も一方的にほごにし、説明責任すら果たしていない。
 地盤改良工事に伴って事業費が大幅に膨らむのは確実だ。工期の長期化も避けられなくなった。
 にもかかわらず、政府は工期も事業費もまだ明らかにしていない。
 県民投票に対して「静観」の姿勢を示した自民、公明支持層からも埋め立て「反対」の声が数多く示された。政府はこの事実を真剣に受け止めなければならない。
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 衆参で3分の2を超える議席にあぐらをかいて、上から目線で工事を強行することは許されない
 政府は、埋め立て工事を強行することで「もう後戻りはできない」というあきらめの空気を広げようとしたが、県民感情を逆なでしただけで、期待していたほどの効果は生まなかった。
 沖縄戦後史への深い理解なくして辺野古問題の解決策を見いだすことはできない。
 安倍内閣の政権運営は安定している。トランプ米大統領との相性の良さは抜群だ。  安倍内閣が持つこの政治的資産は、辺野古問題を終わらせることにも、沖縄を犠牲にして米国への従属を深めることにも、いずれにも活用可能である。
 安倍首相の賢明な判断を求めたい。辺野古新基地建設計画を断念し、普天間の早期返還に向け、日米協議を開始すべきだ