2019年2月20日水曜日

官邸による取材・報道の自由侵害に抗議する緊急声明

 首相官邸が東京新聞の望月衣塑子記者の質問に「事実誤認があった」と極めつけて記者クラブ側に対応を求めた問題で、学者・文化人・法律家らが19日、国会内で記者会見し、「官邸による取材・報道の自由侵害に抗議する緊急声明」を発表しました。
 
 同声明への呼びかけ人は梓澤和幸弁護士、田島泰彦元上智大学教授、服部孝章立大名誉教授の3氏で、15~18日の4日間で346人の学者、弁護士、ジャーナリストらが賛同人に名前を連ねました
 会見で服部孝章立大名誉教授(メディア学)は、「内閣記者会が沈黙していることがおかしい。メディアが忖度し安倍を支えている。いまメディア全体のあり方が問われている」と厳しく批判しました。
 
 上記の記事では、日本マスコミ文化情報労組会議による声明を紹介しました。
 その後学者、弁護士らによる声明文を入手しましたので、日刊ゲンダイの「内閣記者会を批判した記事」と併せて紹介します。
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官邸による取材・報道自由侵害に抗議する緊急声明
2019年2月19日
 
 上村秀紀内閣官房総理大臣官邸報道室長は、2018年12月28日、内閣記者会宛に記者会見における菅義偉官房長官に対する東京新聞の特定の記者の質問について事実誤認があるとした文書を示し、問題意識の共有を求めた。
 
 この文書は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事に関するものであり、この件については政府と野党の認識が鋭く対立している。野党による国会質問や政府の答弁を見れば、政府側の認識に誤りがないなどと断定することはできない。政府の一方的認識を前提として、質問者から寄せられた赤土が広がっているという事実認識を事実誤認と断定し、説明を免れ、質問を抑圧することは許されない。これは取材の自由、報道の自由への侵害である。
 
 また、事実認識を内閣記者会に共有したいなどとすることは自由で批判的な質問をする記者の官房長官記者会見からの排除にもつながりかねない。内閣官房長官の記者会見は日々2回開催されている。それは国防・外交・災害・国際紛争など、国民の将来を左右する重大事を取り上げる場であり、知る権利は最大限尊重されなければならない。西村康稔官房副長官は、報道室長からは質問権を制約したり、知る権利を制限したりする意図はまったくないと報告を受けていると発言したが、本件文書の与える影響は深刻なものであって看過できない。
 
 表現の自由、知る権利に関心を寄せる私たちはこの問題について深刻な憂慮を表明するとともに、政府に対しこの文書を直ちに撤回するように要求する。
以上
 
官邸文書申し入れ問題 記者イジメなぜ内閣記者会ダンマリ
日刊ゲンダイ 2019年2月20日
 これは戦前の治安警察法の「弁士注意」や「弁士中止」命令と同じ――。首相官邸が昨年12月、東京新聞記者の質問を「事実誤認」などとして、内閣記者会に対して「正確な事実を踏まえた質問」をするよう文書で申し入れた問題。弁護士や法律家、ジャーナリストが19日、参院会館で会見し、申し入れは「取材の自由、報道の自由への侵害」「文書をただちに撤回するよう要求する」とした緊急声明を読み上げた。
 
 呼び掛け人となったのは、梓澤和幸弁護士(東京弁護士会)、田島泰彦早大非常勤講師、服部孝章立大名誉教授の3人で、趣旨の賛同者は19日までで346人に上っているという。
 
「(官邸の申し入れは)12月28日。それが2月のアタマまで内閣記者会が沈黙していたのはなぜなのか」
 出席者が安倍政権の政治姿勢を批判する中で、内閣記者会の在り方に疑問を投げかけたのが服部氏だ。申し入れに対し、新聞労連は5日に「決して容認できない」と抗議する声明を発表したものの、“現場”となった肝心要の内閣記者会はダンマリを決め込んでいるからだ。
 
 会見の場で菅官房長官に脅しスカシまがいの対応をされ、上村報道室長には質問を制限される。そんな状況にジワジワ追い詰められる東京新聞記者を目の前で見ていれば、菅氏や上村氏に向かって「おかしいだろう」と詰め寄るのがジャーナリストというものだろう。
 ところが、内閣記者会の記者たちは見て見ぬフリ。文句を言うどころか、東京新聞記者を冷ややかな目で黙って眺めているだけ。学校でイジメを受けている被害者の様子を傍観している卑怯な連中と何ら変わらない
 
 1月25日の首相動静には〈東京・赤坂の中国料理店「赤坂飯店」。内閣記者会加盟報道各社のキャップと食事〉とあるが、誰かひとりでも安倍首相に向かって「あの申し入れはおかしい。撤回しろ」と迫った記者はいるのか。恐らくいないだろうが、内閣記者会が政権ベッタリだから、安倍政権がツケ上がるのだ。