2019年2月21日木曜日

<税を追う>辺野古埋め立て土砂単価は護岸用の3倍、地盤改良で大金が

 東京新聞の<税を追う>シリーズは、
「辺野古埋め立て見積もり 土砂単価、護岸用の3倍」(19日)、
「軟弱地盤 最深90メートル 辺野古 杭打ち70メートル限界」(20日)、
「辺野古 地盤強化に限界 関空は予測超す沈下 開港24年、今もかさ上げ」(20日)
を取り上げました。
 
「土砂単価」の件については1月19日にも紹介したとおり、防衛省(局)に節税という観点がないことが明らかになりました。
 
「軟弱地盤」の件は、地盤改良が必要なことは当局は早い時期から分かっていた筈なのに、そのことを隠蔽したままことを進め、土壇場になって明らかにしたものです。当然工事費は大幅に跳ね上がります。
 防衛省は総事業費を「3500億円以上」としていますが、沖縄県によれば、地盤改良費その他を加算すると2兆数千億円に達する見込みだということです。
 当初の予定額が何倍にも増えるというような話は民間ではあり得ないことで、防衛省の税金消費に関する驚くべき「無感覚ぶり」が伝わります。
 しかも軟弱地盤の分布が深すぎて地盤改良が出来ない個所は「そのままで完工」とするのですから、事後の維持費もまた莫大なものになります。
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<税を追う>辺野古埋め立て見積もり 土砂単価、護岸用の3倍
東京新聞 2019年2月19日
 沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、防衛省沖縄防衛局が埋め立て用土砂の単価について、同じ素材を使う護岸建設用の土砂に比べ、三倍も割高に見積もっていたことが分かった。発注時期は異なるものの、同じ現場で同じ資材の単価に大きな開きが生じるのは異例。埋め立て土砂の購入費は発注分だけでも、護岸用の単価で計算するより四十五億円も過大になる。 (中沢誠)
 
 沖縄防衛局は昨年十二月から、辺野古沿岸部の一部で土砂投入を始めた。この工区では、県内産の「岩(がん)ズリ」という砕石を使うことになっており、護岸建設にも岩ズリを使う。
        防衛省の岩ズリの見積もり単価
 
 
埋め立て用(1~5区)
護岸用(1、2区)
 
単  価
5370円/m3
1870円/m3
 
採 取 量
  
  
 
取 扱 量
129万4100m3
2220m3
 
発注時期
2017年度
2014年度
 
規  格
細粒分含有率40%以下
  
 
 防衛局が受注業者に工事内容を指示する特記仕様書には、岩ズリの単価や使用量が明記されている。それによると、二〇一四年度に発注した、埋め立て区域を「ケーソン」と呼ばれる巨大なコンクリートの箱で仕切る護岸建設では、約二千立方メートルの岩ズリを使う。単価は運搬費を除き、一立方メートル当たり「千八百七十円」となっている。
 一方、一七年度に発注した埋め立て工事で見積もった岩ズリの単価は運搬費を除いて「五千三百七十円」。護岸用の三倍となり、差額は三千五百円にもなる。運搬費を含めた単価は一万一千二百九十円に上る。
 現在、埋め立て区域のうち南側の五工区が契約済み。五工区で必要な土砂の総量は百二十九万立方メートルでいずれも護岸用と同じ県内産の岩ズリを使う。五工区の土砂購入額を、防衛局が見積もった単価五千三百七十円で計算すると六十九億円。護岸用の単価であれば二十四億円にとどまる
 
 防衛省では工事の材料単価を決める場合、内規で三社以上から見積もりを取ることになっているが、防衛局は埋め立て用土砂の単価を一社だけの見積もりで決めていた
 国の出先機関である沖縄総合事務局が見積もる岩ズリの単価は運搬費込みでも一立方メートル当たり三千円台。辺野古の埋め立て土砂の単価について、採石業界からも「相場より高い」との指摘が出ている。
 埋め立て土砂を巡っては、県がサンゴなど自然環境に悪影響を及ぼす粘土性の「赤土(あかつち)」が大量に含まれている恐れを指摘している。
 本紙は防衛省に岩ズリの単価が異なる理由を尋ねたが、十八日夜までに回答はなかった。
 
◆通常はありえない
<有川博・愛国学園大学教授(公共政策)の話> 発注時期に三年の違いがあっても、同じ資材の単価が三倍も開くことは通常、ありえない。しかも、大量発注した方が単価が安くなるものなのに、逆に高くなっている。一社からしか見積もりを取っておらず、急いで大量に発注しようとして、業者に足元を見られたのではないか。積算根拠が非常に不透明で、沖縄防衛局は国民や県民に説明する責任がある。
 
 
<税を追う>軟弱地盤 最深90メートル 辺野古
杭打ち70メートル限界
東京新聞 2019年2月20日
 沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、埋め立て海域の軟弱地盤が最も深いところで海面から九十メートルにまで達していることが、防衛省の報告書で分かった。世界でも深さ九十メートルまで地盤改良した実績はない。防衛省は砂の杭(くい)を最大七十メートル程度まで打ち込む改良工事により、基地は建設可能としている。専門家は「軟弱地盤が残れば、完成後も長期にわたって地盤沈下が続く恐れがある」と指摘。沈下防止のため多額の費用が継続的に生じる可能性がある。 (中沢誠)
 
 軟弱地盤のデータは、沖縄防衛局が業者に委託し、地盤改良工事を検討した報告書に記されていた。報告書は今年一月にまとまった。
 軟弱地盤が海面から九十メートルにまで達する地点は、「ケーソン」と呼ばれる巨大なコンクリートの箱で埋め立て区域を仕切る護岸部分の海域。水深三十メートルの海底に約六十メートルの厚さの軟弱地盤が存在していた。
 防衛局は、地盤改良のため砂の杭を地中に打って地盤を固める工法を検討している。工法自体は一般的だが、防衛省によると、海面から杭を打ち込む深さについて「国内で六十五メートル、海外では七十メートル」までしか実績がないという。報告書でも、現有する作業船の能力から、杭打ちの深さを最大七十メートル程度としている。
 
 軟弱地盤が海面から九十メートルの深さまで広がっている地点では、固い地盤まで杭が届かない。それでも報告書は、地盤沈下は工事中で三メートル超、運用後二十年間で約四十センチと見込み、「十分対応が可能」と結論付けている。
 防衛局は、地盤改良のために海上から作業船で打ち込む杭の数を六万三千本と想定している。
 この他に、防衛省が陸上からも一万三千本の杭を打つ工法を検討していることが、報告書から新たに判明した。改良が必要とみられる範囲が、作業船の入れない浅瀬にまで及んでいたためだ。
 浅瀬では、いったん土砂で埋め立てた後、陸上からパイプを打ち込み、砂などを流し込んで砂杭を造り、杭で地中の水分を抜いて地盤を固める。県は地盤改良の工費について、四万本の砂杭を海面から七十メートルの深さまで打った場合、約五百億円と独自に試算している。
 防衛省は総事業費を「三千五百億円以上」としているが、地盤改良費を見込んでおらず、工費がさらに膨らむのは必至だ。
 
◆埋め立ては可能
<沖縄防衛局報道室の話> ボーリング調査を踏まえて検討した結果、地盤改良工事を行えば埋め立ては可能と確認した。今後、地盤改良にかかる具体的な検討を行うが、現時点で確たることは言えない。
 
<日本大理工学部の鎌尾彰司准教授(地盤工学)の話> 海面から90メートルの深さを地盤改良することは、施工機械がなく不可能だろう。砂杭が届かず20メートル分が未改良のままとなれば、長期間にわたって沈下する恐れがある。将来の沈下量の予測も難しく、完成後も沈下対策の費用が大きくかさむ恐れもある。
 
 
<税を追う>辺野古 地盤強化に限界 関空は予測超す沈下
開港24年、今もかさ上げ
東京新聞 2019年2月20日
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で、埋め立て海域の軟弱地盤が海面から最大九十メートルの深さに達していることが明らかになった。必要な地盤改良工事は海面から七十メートルまでが限界で、専門家は完成後も地盤沈下が続く可能性を指摘。同様に軟弱地盤の海域に建設された関西国際空港では、完成から二十四年たった今も、予測を超えて沈下が進んでいる。 (中沢誠)
 
 「毎日どこかしらで護岸のかさ上げ工事をやっていますよ」。関空を運営する関西エアポートの担当者はそう話す。関空は大阪湾泉州沖を埋め立てて造った人工島で、地盤沈下が続く。同社は、沈下対策を含めた維持費が今後五年間だけでも一千億円かかるとみている。
 
 関空は辺野古と同じヘドロ状の軟弱地盤の上に立つ。地中に砂杭(すなぐい)を打ち込む地盤改良を図ったが、工事は難航。二つの人工島のうち、最初に完成した一期島の総工費は一・五倍に膨らみ、開港も一年半遅れた。
 厚さ二十メートル程度の軟弱層の底まで改良を施していたが、その下の洪積層である粘土が予想以上に軟弱だった。開港後もしばらく沈下は続くと見込んでいたが、実際の沈下は予測を上回るものだった。
 一期島では当初、開港から五十年間で平均一一・五メートル沈下すると予測したが、二十三年後の二〇一七年末時点で既に一三・二五メートルも沈下している。昨年九月の台風では高波が護岸を乗り越え、空港が浸水。約十日間運航が停止した。
 
 辺野古の軟弱地盤の厚さは、関空を超える最大六十メートル。しかも、杭が届かないため、関空のように軟弱層の底まで地盤改良することができない。
 
◆埋め立て土砂 空港工事比でも割高
 辺野古の米軍新基地建設に使う埋め立て用土砂の「岩(がん)ズリ」の見積単価が割高になっている問題で、岩屋毅防衛相は十九日の閣議後会見で、「価格は調達時期や需給状況によって変動する。那覇空港の滑走路増設事業などがあったので、岩ズリの需要が増加した」と述べた。
 だが、那覇空港で使っている岩ズリの見積額は辺野古の単価よりも一立方メートル当たり四千円も安く、割高となった根拠を十分示せていない
 沖縄防衛局が見積もった辺野古の埋め立てに使う岩ズリの単価は、運搬費込みで一立方メートル当たり一万一千二百九十円(運搬費を除けば五千三百七十円)。これに対し、同じ県内産の岩ズリを使う那覇空港の第二滑走路埋め立て工事では、発注した沖縄総合事務局が運搬費込みで七千二百五十円と見積もっている。
 
 沖縄総合事務局の担当者は「大規模な工事だったため、特別に調査会社に見積もりを依頼し、価格を設定した」と話している。
 岩屋氏は会見で、一万円以上の見積単価は「妥当な価格だった」とし、「経費抑制は大事な課題。所要額を精査し、適切な予算執行に努めたい」と語った。
 防衛局は二〇一四年度に発注した護岸建設に使う岩ズリの単価を、運搬費を除き一立方メートル当たり千八百七十円と見積もっていたが、一七年度に発注した埋め立て土砂は三倍も割高な同五千三百七十円と算定。業界などから「相場より高い」との指摘が出ている。 (原昌志、中沢誠)