2019年2月17日日曜日

政府は「沖縄の心」を完全に無視すると

 新潟日報が、「沖縄県民投票 『沖縄の心』を見つめたいとする社説を掲げました。
 県民投票は、普天間基地の辺野古移設反対の民意は直近2回の知事選で既に明らかにされているもののそれを安倍政権が完全に無視している中で、敢えて辺野古移設の一点に絞って県民民意を示そうとするものです。
 
 投票条例は、「賛成または反対の多い方の票数が投票資格者の総数の4分の1に達したときは、知事はその結果を尊重しなければならない(102項)と定め、その結果を知事が安倍首相と米国のトランプ大統領に対し通知する(10条第3項)」としています。
 既に辺野古の埋め立て海域には海面下90mまで軟弱地盤があることが知られていて、現在の技術では地盤改良が出来ません。肝心の滑走面などがこの先何十年も不同沈下することが明らかなのに、政府はなぜ中止しようとしないのでしょうか。
 
 それはそれとして、まずは県民投票で圧倒的多数の反対が示されることを見守るわけですが、社説は、県民は基地があることによる事件や事故、騒音に苦しみ続けている。県内移設に対する反対論の底流には、基地負担を巡る本土との格差もある。安全保障はどうあるべきなのか。私たちも沖縄の人々に寄り添い、ともに考えたい」と訴えています。
 
 ところで14日の投票告示に当たり、菅官房長官は、「県民投票がどういう結果でも移設を進めるというのが基本的考え」であることを明らかにしました
 これまで、1996年の日米地位協定の見直しや米軍基地の縮小を問う県民投票や、1997年の普天間飛行場の代替となる海上ヘリポートの建設を巡る名護市の住民投票で、沖縄は常に民意を政府にかき消されてきた経過があります
 安倍首相はこれまでは「沖縄に寄り添う」と一応口にしてきましたが、いよいよ情勢が緊迫してくると口にしなくなり、いまや沖縄の民意などお構いなし埋め立て工事をゴリ押ししています。
 聖学院大教授の石川裕一郎氏(憲法)は、
政府は、国政選挙では都合よく民意を振りかざすのに、沖縄の民意を無視するのはダブルスタンダード住民投票に法的拘束力がないとはいえ、無視するのは、地方自治をうたう憲法原理に反する」と述べています
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 日刊ゲンダイの記事:「結果が出る前に…安倍政権は沖縄県民投票“ガン無視”モード」を併せて紹介します。(ガン無視徹底的に無視する)
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社説 沖縄県民投票 「沖縄の心」を見つめたい
新潟日報 2019年2月15日
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の賛否を問う沖縄の県民投票が14日、告示された。
 辺野古移設の一点に絞って県民が直接民意を示すのは初めてとなる。その判断は重く受け止めなければならない。
 それなのに政府は、結果によらず工事を続けるという立場を崩していない。「沖縄の心」と向き合おうとしない政権の姿勢に強い危惧を抱く
 
 24日に投開票される県民投票は、「賛成」「反対」「どちらでもない」の三つの選択肢の中から一つを選ぶ。
 最も多い選択肢が投票資格者の4分の1に達したときは、知事は結果を尊重しなければならない。首相や米大統領に結果を通知することも定めている
 国への拘束力はない。しかし、県民投票実施に至った経緯を考えれば、結果をないがしろにすることは許されない。
 県知事選では、故翁長雄志(おながたけし)氏に続き昨年は玉城デニー氏と、移設阻止を掲げた候補が当選した。国政選挙でも移設反対を掲げた候補の大半が当選した。
 
 ところが国は工事を進め、昨年12月には辺野古沿岸部で土砂投入を開始した。
 民意を無視し、あきらめを誘うかのような強権的な手法に県民の怒りが高まるのは当然だ。
 県民投票には「選挙で既に民意は示されている」と慎重論もあったが、実施を求める署名は9万人以上集まり、賛否2択の投票条例が昨年成立した。
 一時は、安倍政権と協調関係にある5市長が「2択では多様な民意を推し量るのが難しい」などとして不参加を決めた。
 しかし、参加を求める声や抗議が押し寄せ、県議会は「どちらでもない」を加えた3択とする条例改正を成立させ全市参加となった。
 移設への意思表示の機会を求める市民の行動が実施につながったといえよう。
 
 県民投票は1996年にも行われ、日米地位協定見直しと米軍基地の整理・縮小に全有権者の53%が賛成した。だが地位協定見直しは進まず在日米軍専用施設の7割が沖縄に集中する。
 安倍政権は安全保障は「国の専権事項」として工事を進める。しかし、地元の意見を十分に聞き、それを国政に反映させるのが民主主義のルールだ。
 市街地中心部にある普天間飛行場の危険性除去には、辺野古移設が唯一の解決策だと一貫して主張するが、普天間の代替地を同じ県内に建設しても、沖縄県民の危険性は変わらない。
 埋め立て予定海域には軟弱地盤があり工事の長期化も指摘されている。だが政府は工期を示していない。普天間飛行場の運用停止がいつになるのかを含め、明らかにすべきだ
 
 県民は基地があることによる事件や事故、騒音に苦しみ続けている。県内移設に対する反対論の底流には、基地負担を巡る本土との格差もある。
 安全保障はどうあるべきなのか。私たちも沖縄の人々に寄り添い、ともに考えたい。
 
 
結果が出る前に…安倍政権は沖縄県民投票“ガン無視”モード
日刊ゲンダイ 2019年2月15日
 14日告示された、辺野古新基地建設を巡る沖縄県民投票。来週24日に賛否が明らかになるが、結果が出る前から、安倍政権は「民意などクソくらえ!」と言わんばかりだ。
 菅官房長官はきのうの会見で、「(県民投票が)どういう結果でも移設を進めるのか」との問いに、「基本的にはそういう考えだ」と言い放った。反対票が多数を占めると予想される中、沖縄の民意へのガン無視モード全開で、過去の政権と同じように沖縄イジメに注力しているのだ。
 1996年の日米地位協定の見直しや米軍基地の縮小を問う県民投票では、賛成多数だったにもかかわらず、辺野古への基地移設が決定。翌97年、普天間飛行場の代替となる海上ヘリポートの建設を巡る名護市の住民投票で、反対票が多数を占めても、辺野古沿岸部での代替施設に計画を変更して工事を進めている状況だ。要するに、沖縄は常に民意を政府にかき消されてきたのである。
 
■嫌がらせや暴力と変わらない
 安倍首相も「沖縄に寄り添う」と口にしてきたにもかかわらず、過去の反省に立ち返るどころか、埋め立て工事をゴリ押し。沖縄の民意などお構いなしだ。聖学院大教授の石川裕一郎氏(憲法)がこう言う。
「安倍首相は過去、『民意を問う』と言って衆院選挙に打って出ましたが、沖縄の民意についてはまるで無視です。昨年9月の沖縄県知事選で新基地建設反対の知事が誕生しても、何事もなかったかのように埋め立て工事を強行しています。国政選挙では都合よく民意を振りかざすのに、沖縄の民意を無視するのはダブルスタンダードです」
 自民は、県民投票が盛り上がるのを避けるため、投票の呼びかけを行わずに“死んだフリ”作戦を貫いている。
住民投票に法的拘束力がないとはいえ、無視するのは、地方自治をうたう憲法原理に反する。安倍政権の沖縄への行為は、嫌がらせや暴力と同じです」(石川裕一郎氏)
「馬の耳」のいじめっ子たちを、いつまでも政権に居座らせてはダメだ。