2019年2月22日金曜日

平和賞にトランプ氏を推薦に「ご機嫌取りが目に余る」と各紙

「私は日本を代表して、敬意を込めてあなたをノーベル平和賞に推薦しました」という、5ページの「美しい書簡」のコピーを安倍首相から受け取ったと、トランプ米大統領が語ったのは15日の記者会見でした。まさかこの段階でバラされるとは  、安倍首相にとっては晴天の霹靂だったかも知れません。
 
 18日の衆院予算委で立民会派の小川淳也議員が、中距離核戦略全廃条約やイラン核合意あるいはパリ協定からの離脱など、トランプ大統領の暴挙をあげたうえで、「ノーベル平和賞に推薦するなんてことはありえないし、日本国として恥ずかしいことだと思うが」と質問すると、安倍首相は苛立った調子で、こんな答弁をしました。
「いま、米大統領に対して口を極めて批判をされたわけですが、米国は日本にとって唯一の同盟国であり、その国の大統領に対しては一定の敬意を払うべきだろうと思うわけであります。まあ、御党も政権を奪取しようと考えているんであれば、ですね」
 要するに“日本国の政治をやりたいなら米国大統領の言うことは何でも聞くのが当たり前”と述べたわけです。
 そんな発想に、アベ応援団以外の日本国民が同意する筈はありません。
 
 この件が18日、国会で取り上げられたのを機に、各紙の社説は、「ご冗談でしょう(毎日)」、「対米追従が過ぎないか(朝日)」、「米国への露骨なへつらい(高知)」、「本気か(北海道)」「ご機嫌取りが目に余る(京都)」など、米国への追従(ついしょう)非難の一色に染まりました。(詳細は下記のタイトル一覧を参照ください)
 
                         各紙 社説タイトル一覧
    19日
首相がノーベル賞推薦 トランプ氏に資格あるか     (福井新聞)
平和賞にトランプ氏推薦 安倍首相、ご冗談でしょう (毎日新聞)
平和賞推薦 対米追従が過ぎないか                       (朝日新聞)
 
  20日
平和賞推薦 対米追従にも程がある                   (南日本新聞)
平和賞に推薦 米国への露骨なへつらい             (高知新聞)
平和賞にトランプ氏推薦 政治利用の度が過ぎる   (中国新聞)
トランプ氏推薦 お追従に国民巻き込むな          (新潟日報)
ノーベル平和賞 トランプ氏推薦 本気か          (北海道新聞)
 
  21日
ノーベル平和賞推薦 へつらうだけでは駄目だ       (琉球新報)
首相の外交姿勢 トランプ氏へのお追従 目に余る   (愛媛新聞)
ノーベル賞推薦  ご機嫌取りが目に余る               (京都新聞)
 
 新潟日報の社説を紹介します。
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社説 トランプ氏推薦 お追従に国民巻き込むな
新潟日報 2019年2月20日
 露骨なご機嫌取りである。日本国民全体がトランプ米大統領に感謝し、ノーベル平和賞授賞を望んでいるかのような誤解が国際社会に広がっていくことを強く懸念する。
 トランプ氏が15日の記者会見で、安倍晋三首相から平和賞に推薦されたと明らかにした。首相からは「日本を代表して敬意を表し、あなたに平和賞が与えられるよう求めている」と伝えられたという。
 
 首相は18日の衆院予算委員会で事実関係を問われたが、「トランプ氏は北朝鮮の核ミサイル問題の解決に果断に対応し、昨年は歴史的な米朝首脳会談を行った」と語り、質問に直接答えなかった。
 ただし複数の日本政府関係者が認めた。米国の要望を受け、昨年6月の米朝首脳会談後に推薦状をノーベル賞委員会の関係者に送ったとされる。推薦理由は、北朝鮮の非核化に向けた取り組みへの評価とみられる。
 
 首相はこれまで、トランプ氏との蜜月関係をアピールしてきた。今回推薦の依頼に応じたのも、関係を維持するためだと指摘されている。
 首相には、拉致問題打開に向けた日朝首脳会談実現のため、トランプ氏の後押しが不可欠との思いがあるのだろう。
 だが、相手の望みを唯々諾々と受け入れるような態度には疑問を覚えるばかりだ。
 トランプ氏は米朝首脳会談を自賛するが、米国第一主義を唱え、国際社会の分断を増幅するような方針や政策を打ち出し続けてきた。パリ協定離脱、エルサレムの首都認定、イラン制裁などである。
 最近では、自らの公約であるメキシコ国境の壁建設を実現するため、国境地帯の非常事態を宣言して「権力乱用」との非難を浴びている。
 こうした指導者が平和賞にふさわしいと推薦することは、首相の見識が厳しく問われよう。
 そもそも、北朝鮮の非核化に向けた取り組みといっても、今後の具体的な道筋は明らかになっておらず、実効性は不透明なままだ。
 
 首相がトランプ氏に「日本を代表して」とメッセージを伝えたとされることも、見過ごすわけにはいかない
 国全体が後押ししているように取られれば、先の戦争の反省に立ち、「平和」を旗印に戦後を歩んできた日本への信頼が損なわれかねない
 
 首相による平和賞への推薦については、トランプ氏が公にした。日本側は、推薦者と非推薦者を50年明らかにしないノーベル賞委員会のルールに従うとして公表していない。
 にもかかわらず、日本政府内ではトランプ発言を問題視するような動きはうかがえない。機嫌を損ないたくないためだという。過剰とも映る米国への従属ぶりが浮かび上がる。
 国民の見えないところでトランプ氏へのお追従に勝手に国民を巻き込んでおきながら、明確な説明もない。安倍外交の秘密主義を危ぶむ。