2019年2月4日月曜日

「賃金増」は虚構 家計消費も減 消費税増税の根拠総崩れ 

 施政方針演説に対する日本共産党の代表質問で、まともな答弁ができない安倍首相の姿が鮮明になりました。しんぶん赤旗がこの間の首相とのやりとりを総括的に報じました。
 
 消費税増税の根拠は総崩れとなり、志位氏は、裁量労働のデータねつ造、森友疑惑をめぐる虚偽答弁や公文書改ざん、失踪技能実習生の調査結果のねつ造、そして勤労統計の不正調査などは、「安倍政権によって政治モラルの大崩壊が引き起こされている」ものと指摘しました。
 毎月勤労統計の不正によって昨年の賃金の伸び率実態よりもかさ上げされたもので、実質賃金は前年比マイナスになること明らかになりました。安倍首相が最後にすがった連合の賃上げ調査が、物価の上昇を織り込んでいない名目の賃上げ率あったのは滑稽といえます。
 14年の消費税8%増税で実質家計消費年額25万円も減り、GDPで見ても実質家計消費支出は3兆円も落ち込んでいます(政府の発表は帰属家賃(持ち家の所有者が家賃を払っていると想定して計算されたGDP」を含むものでゴマカシの数字です)。
 厚生労働省の毎月勤労統計に端を発した政府統計の不正・偽装問題は底なしの状態で安倍首相はいまなお厚労省の特別監察委員会に検証をさせようとしていますが、それでは真相解明無理です
 
 辺野古の米軍新基地建設では、政府が軟弱地盤の存在を2年間も県民に隠し、ついに設計変更の事態になりましたが、県は設計変更を許可しない姿勢なので工事は暗礁に乗り上げることになります。そもそも米軍普天間基地は、米軍が住民を強制収容している間に民有地を囲い込んで作った国際法違反に当たるもので、それに代替基地を手当てするのは筋違いです。
 
 また安倍首相がウリにしたかった北方領土問題では、4島返還という歴代政府の方針はおろか、主権なしの歯舞、色丹の「2島決着」で領土問題を終わらせる惧れ出てきました。いまさら「サンフランシスコ平和条約」をその根拠にするのであれば、なぜこれまで4島返還を要求してきたのでしょうか。
 第2次世界大戦末期の45年2月の「ヤルタ会談」で、ソ連が対日参戦条件として千島列島のソ連への「引き渡し」を求めた(米英が了解した)ために北方4島はロシアの領土になりました。しかしそれは米英ソ自身が公約した「領土不拡大」という戦後処理の大原則に反する行為なので、日本政府にはそれを正すという大義がある筈です
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消費税増税 根拠総崩れ 「賃金増」は虚構 家計消費も減
     首相 まともに答弁できず 代表質問で鮮明
 しんぶん赤旗 2019年2月3日
 安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が1月30日から3日間、衆参両院の本会議で行われました。野党が今年10月からの消費税10%増税の中止・凍結を求めるなか、日本共産党の質問に対して、まともな答弁ができない安倍首相の姿が鮮明になり、消費税増税の根拠は総崩れとなりました。4日からは衆院予算委員会で2018年度補正予算案の論戦が始まります。
 
●統計不正でかさ上げ
 代表質問に立った日本共産党の志位和夫委員長と小池晃書記局長は「今年10月からの消費税10%増税は、どこから見ても道理がない」(志位氏)ことを具体的に示し、増税の中止を訴えました。
 
 野党合同ヒアリングなどでの追及で、毎月勤労統計の不正によって、昨年の賃金の伸び率が実態よりもかさ上げされていたことが判明し、実質賃金は前年比マイナスになる可能性があることが明らかになりました。メディアも「賃金偽装」、「アベノミクス偽装」と批判する事態に。
 志位氏は政府が消費税10%増税の前提にしている「賃金が増加している」との認識について「政府の認識は虚構だった」と指摘。「少なくとも統計不正の事実解明抜きに増税を強行することは論外だ」と追及しました。安倍首相は「(10月に10%に引き上げるという)方針に変更はありません」と開き直り、「今世紀に入って最高水準の賃上げが継続」と強弁しました。
 
 安倍首相が唯一すがったのが労働組合の連合の調査です。しかし、連合の調査は物価の上昇を織り込んでいない名目の賃上げ率です。小池氏は「その分(物価上昇分)を差し引いた実質にすると(賃上げ率は)1%程度にすぎない」と指摘し、「今世紀に入って最低になるのではないか」と迫りました。安倍首相は、実質賃金は「プラスとマイナスに振れながら推移」と実質賃金が上がったかどうかは答えず、「春闘の場において物価上昇を差し引いた数字(実質賃金)で交渉が行われているとは承知していません」というまったく的外れの答弁でごまかします。
 
●家計調査もGDPも
 家計消費も落ち込んでおり、増税の根拠となる状況ではないことが明らかになりました。
 志位氏は、2014年の消費税8%増税で世帯あたりの家計調査の実質家計消費が年額25万円も減り、GDP(国内総生産)で見ても実質家計消費支出(帰属家賃を除く)は3兆円も落ち込んでいることをあげて、「日本は深刻な消費不況に陥っている」と指摘しました。安倍首相は、架空の消費である帰属家賃(持ち家の所有者が、家賃を払っていると想定して計算された家賃)を含んだ数字で「(消費は)増加傾向で推移しており、持ち直している」とごまかしました。
 
 立憲民主党の枝野幸男代表は「今ならまだ間に合います。10月からの消費税率引き上げを凍結」、国民民主党の玉木雄一郎代表は「そんなこと(景気対策)をするくらいなら増税をやめたほうがマシです」と主張しました。
 
代表質問で浮き彫りになったもの 安倍政治の総破たん鮮明
統計不正 偽装底なし 政権モラル崩壊 温床に
 厚生労働省の毎月勤労統計(毎勤統計)に端を発した政府統計の不正・偽装問題は底なしの状態です。安倍晋三首相が施政方針演説や代表質問の答弁で「再発防止に全力を尽くす」といっているはなから、主要産業の賃金形態などを調べる厚労省所管の「賃金構造基本統計」、モノやサービスなどの価格変動の指標となる総務省所管の「小売物価統計」でも調査計画通りに行われていなかったことが発覚しました。
 
 毎勤統計の不正・偽装問題で安倍首相は、「身内調査」で「組織的な隠ぺいの意図までは認められなかった」と報告書で結論付けた厚労省の特別監察委員会になおも検証をさせる立場。日本共産党は代表質問で「報告書の結論の撤回を」(志位和夫委員長)、「厚労省から完全に独立した組織をつくり、調査を一からやり直すべきだ」(小池晃書記局長)と、他の野党とともに徹底した真相解明を求めました。
 
 統計不正・偽装が引き起こされた温床を鋭く告発したのが志位質問。厚労省が不正・偽装を始めた2018年1月から問題が発覚するまでの時期に、裁量労働のデータねつ造、森友疑惑をめぐる虚偽答弁や公文書改ざん、失踪技能実習生の調査結果のねつ造などが次々明らかになったことを示し、「安倍政権によって引き起こされた政治モラルの大崩壊が統計不正の温床となった」と追及。「東京」1日付1面は志位質問を紹介し、「うそ次々、モラル崩壊」と報じました。
 
沖縄新基地 軟弱地盤認める 工事中止・普天間撤去を
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で埋め立ての土砂投入を強行している安倍政権は、深刻な行き詰まりに直面しています。
 志位氏は代表質問で、政府が埋め立て予定海域に軟弱地盤の存在を示す報告書をまとめておきながら、それを2年間も県民に隠し、新基地建設の既成事実を先行させた卑劣な手口を告発。玉城デニー知事が新基地建設を許さない決意を表明していることを示し、「きっぱり中止を」と迫りました。
 国会論戦でついに軟弱地盤の存在を認めた安倍首相は「地盤改良工事の追加に伴い、県に変更承認申請を行う必要がある」と答弁。地元紙・沖縄タイムス1日付は志位質問の首相答弁について「県不許可なら工事困難」と1面トップで報じました。
 
 他の野党も辺野古新基地問題を追及。立憲民主党の福山哲郎幹事長は参院本会議での代表質問で、軟弱地盤の存在などを根拠にした県の承認撤回が正当性のある対応だったとして、承認撤回の執行停止を石井啓一国交相が決めたのは「不適切だったのではないか」と迫りました。
 
 小池氏は代表質問で、安倍首相が「辺野古移設が唯一の解決策」とする米軍普天間基地(宜野湾市)の返還に関し、同基地が米軍が住民を強制収容している間に民有地を囲い込んでつくったため国際法違反に当たると追及。安倍首相は「国際法に照らしてさまざまな議論があることは承知している」と国際法違反を否定できませんでした。
 
 2月24日の辺野古埋め立ての是非を問う県民投票は県民のたたかいによって全県実施が確実となりました。新基地建設を断念に追い込むため、沖縄と全国の連帯、野党の連携が発展しています。
 
日ロ問題「2島決着」の危険 根本解決示す志位質問
 与野党が代表質問で取り上げた日ロ領土問題はどうか。ここでも日本共産党の追及で、平和条約締結の「成果」を急ぐ安倍首相が、歯舞、色丹の「2島決着」で領土問題を終わらせる危険が浮き彫りになりました。
 
 安倍首相は「平和条約締結後に、ソ連は日本に歯舞・色丹を引き渡す」と明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させ、任期中に領土問題に終止符を打つと宣言しています。
 志位氏は「これはきわめて危うい方針だ」と指摘。(1)最大でも歯舞、色丹の2島返還で平和条約を締結し、領土問題を終わりにしてしまうなら、歴代政府の方針すら自己否定し、ロシア側への全面屈服となる (2)そうでないなら“国後、択捉の領土要求を放棄して平和条約を結ぶことはない”と明言すべきだ― と二つの角度から追及。ところが安倍首相は「お答えは差し控える」と回答を拒否しました。
 
 志位氏は、日ロ領土問題の根本には、45年のヤルタ協定で、ソ連のスターリンの求めに応じて米英ソが「千島列島の引き渡し」の密約を結び、それに縛られて51年のサンフランシスコ平和条約で日本政府が国後、択捉を含む千島列島を放棄した問題があると指摘。「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則に基づく不公正を正す立場に立って「千島列島の返還を求めてこそ解決の道が開かれる」と迫りました
 
 ところが安倍首相は「サンフランシスコ平和条約で、わが国は千島列島に対するすべての権利、権原、および請求権を放棄しており、千島列島の返還を求めることはなし得ない」と否定。戦後処理の不公正をただそうとしない日本政府の致命的弱点が浮き彫りになったのです。