2019年2月18日月曜日

日本は自壊しないのか 世界が疑問視するなかでGDPを速報するメディア

 官邸記者クラブはいまだに官邸による東京新聞・望月衣塑子記者への質問権干渉に対し抗議声明を出していません。同クラブが基本的に官邸と馴れ合いの関係にあることを示すものです。
 内閣府が14、昨年1012月期のGDP速報値を発表したところ、大メディアはGDP 2期ぶりプラス」などと大見出しを付けて速報したということです。記者たちにすれば、単に恒例に従っただけなので何の疑問も持たなかったようです。
 
 日刊ゲンダイは、時事通信の世論調査では「統計不正の隠蔽があった」735%、NHKでは同じく52%に上っていることを挙げて今や安倍政権下で公表される数値は世界中から疑問符が付いている。そんな中で何の検証もなく政府発表を垂れ流す大新聞・テレビの姿勢マトモとは思えない」と述べました
 何十年来、単に大本営発表を垂れ流すだけで事足りるとしてきた記者たちは大いに反省すべきです。
 
 またいま日本では「朝野を挙げて」韓国バッシングが行われています。安倍内閣にとっては政権浮揚のための何よりの手段なのですが、メディアまでがそれに同調して先を争うように報じているのは醜いというしかありません。
 
 安倍政権は米国やロシアに対しては見苦しいほどに卑屈である一方で、相手が韓国(や中・朝)となると俄かに居丈高になって批判・攻撃に終始し、メディアもそれに完全に同調しています。もしもメディアにその自覚が全くないのであれば、すでに戦前の大政翼賛体制に近づきつつあるのかも知れません。
 
 韓国が元徴用工への賠償金として新日鉄の資産現金化すれば、対抗策として駐韓大使召還韓国人に対する就労ビザの制限、さらには経済制裁を行うというのが自民党内強硬派の意向だということです。
 しかし対韓貿易黒字約22400億円前年実績)を失うことになれば、日本が失うものが大き過ぎ瀕死のアベノミクス自爆することになると警告されています。
 国が自壊・自爆に向かっているのではないかを見極めることもメディアの使命ではないのでしょうか。
 
 日刊ゲンダイの二つの記事を紹介します。
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統計不正問題お構いなし GDP速報を報じるメディアの“大罪”
日刊ゲンダイ 2019年2月16日
<GDP 2期ぶりプラス>――。内閣府が14日発表した2018年10~12月期のGDP(国内総生産)速報値。大メディアは大見出しを付けてデカデカと報じていたが、厚労省の統計不正問題で今や安倍政権下で公表される数値は世界中から疑問符が付いている。そんな中で政府発表を垂れ流しする大新聞・テレビの姿勢もマトモとは思えない。
 実際、ネット上では、GDPの速報報道について、<緊急速報で流すニュースか?><まるで大本営発表>との批判が噴出。どうみても、今の状況では、果たして政府が公表している数字が正しいのか、誤っているのかが分からない状況だから当然だ。
 
 内閣府は統計不正でGDPへの影響は「なかった」と断言している。しかし、時事通信の世論調査(8~11日)では、厚労省による統計不正の隠蔽が「あった」との回答は73.5%に達している。NHKの世論調査でも、政府統計を「信用できない」は52%だ。つまり、国民の大部分が政府発表を信用していないのだ。
 
■まるで被害者顔
 野党が指摘する通り、官僚らが安倍政権に忖度して統計数値を歪めたのかどうかはともかく、そんなマユツバ数値を「アベノミクスの成果」と大々的に報じてきた大マスコミにも責任の一端はあるだろう。昨年6月の賃金伸び率3.6%にしても、複数のエコノミストは「おかしい」と指摘していたにもかかわらず、「21年ぶりの賃金上昇」「アベノミクスの成果」などと大ハシャギしていたからだ。
 
 それが今や、「統計不正でだまされていたのは俺たち」と言わんばかり。まるで被害者顔だからクラクラする。法大名誉教授の須藤春夫氏(メディア論)がこう言う。
「GDPは景気を判断する重要な指標なので、報じることは大切ですが、そもそも数字を信頼できるのか。これまでは政府発表を信頼して報じることはあり得たでしょうが、安倍政権は隠蔽や改ざんなど、何でもあり。メディアは政府発表に対して、より注意深くならないといけないのです。国民の政府統計への不信感が高まる中で、何の検証もなく、政府発表を垂れ流していては、また不正統計と同じような問題が出ます
 発表モノ中心の大メディアのマヒした感覚が、安倍政権の横暴を野放しにしているのだ。
 
 
深まる亀裂…対韓「経済制裁」強行で偽装アベノミクス自爆
日刊ゲンダイ 2019年2月16日
 悪化の一途をたどる日韓関係が、ますますこじれている。ドイツで開催中のミュンヘン安全保障会議に合わせて15日、日韓外相会談が行われたが、主張は真っ向対立。一歩も引かない文在寅政権の姿勢に、安倍自民はいよいよ強硬。経済制裁を含む対抗措置の発動を求める声が大きくなっているが、ヘタを打てば偽装アベノミクスに自らトドメを刺すことになりかねない
 
 徴用工問題では、韓国の裁判所による新日鉄住金の韓国内資産差し押さえ決定を受け、安倍政権は先月9日に日韓請求権協定に基づく2国間協議を要請。30日以内の回答を求め、同23日の外相会談でも河野外相が康京和外相に受け入れを求めたが、期限の今月8日まで返答ナシ。訴訟の原告側が差し押さえた新日鉄住金の資産売却手続きを始めると表明したため、河野外相は「事態がエスカレートしないよう、早く結論を出してほしい」と迫ったが、康は「綿密に検討する」と従来の見解を繰り返すだけだった。
 
 慰安婦問題で文喜相国会議長が「解決には天皇の謝罪が望ましい」と発言したことについても、安倍政権は5回抗議し、謝罪と撤回を求めてきたがナシのつぶて。むしろ、安倍首相が国会で「甚だしく不適切で、謝罪と撤回を求めていく」と語気を強めたことが韓国世論の反日感情を増幅。元徴用工訴訟の対応策を担う李洛淵首相も「最近、日本の一部の政治家や元外交官らが嫌韓の流れに迎合しようと、信頼から外れた言動を続けている」と反発していた。
 
■韓国は貿易黒字の“お得意様”
 もっとも嫌韓ムキ出しの安倍首相にとって、悪い展開ではないようだ。
新日鉄の資産が現金化されるタイミングが対抗措置を発動する号砲になりそうです。請求権協定に沿い、第三国の委員を交えた仲裁委員会の設置に動く一方、日本企業が被る損害を理由に制裁に踏み込むシナリオです。自民党内の強硬派からは駐韓大使の召還や韓国人に対する就労ビザの制限、さらには経済制裁を求める声が強まっている」(与党関係者)
 
 北方領土返還を巡る対ロ交渉での腰抜けぶりとは打って変わり、異様なほどの強気一辺倒だ。しかし、毎月勤労統計のインチキ調査に端を発した統計不正で、賃金と景気を上向かせたと喧伝してきたアベノミクスが嘘八百だとバレたのに、経済バトルを仕掛けている場合なのか。経済評論家の斎藤満氏は言う。
日本経済は相当悪くなっており、昨年秋から景気後退局面に入っていた懸念が高まっています。昨年の貿易収支は約1兆2000億円の赤字。米中貿易戦争で中国経済が低迷したあおりで輸出が急減速し、3年ぶりの赤字に転落しました。そうした厳しい状況の中、韓国は稼がせてくれる“お得意さま”。昨年の対韓貿易黒字は前年比20・5%減ではありましたが、約2兆2400億円に上っている。人気取りのために、“お得意さま”と真正面からケンカをするのは生産的ではない。日本が失うものが大き過ぎます
 安倍首相の暴走で、瀕死のアベノミクスの自爆が迫っている。