2019年2月10日日曜日

安倍首相が連発する「総雇用者所得増」は国民への“印象操作”

 安倍首相は、野党から国民の実質所得の低下を指摘されると「総雇用者所得は、名目でも実質でもプラスになっている」と壊れたレコードのように繰り返しています。しかしそれもまたアベノミクスの成果を偽装するためのインチキに過ぎません。
 総雇用者所得は「1人あたり賃金 × 雇用者数」で算出される数字なので、働く人の増減に比例します。総務省の「労働力調査」によると、一昨年から昨年にかけて、女性の非正規労働者は正規よりも26倍増加し65歳以上の高齢者の非正規も一昨年に比べ40万人以上増えています。
 要するに低所得の非正規労働者の人数が大幅に増えたために総雇用者所得が増加したものであって、国民がそれによって豊かになったのではありません。
 安倍首相は、その意義などは何も考えずに、自分にとって都合の良い数字だけを掲げて成果を強調しますが、総雇用者所得の増加もそうした印象操作の一つに過ぎません。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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安倍首相が連発「総雇用者所得増」は国民への“印象操作”
日刊ゲンダイ 2019年2月9日
 厚労省の毎月勤労統計(毎勤統計)調査不正から端を発した「アベノミクス偽装」問題。安倍首相は最近の国会で、アベノミクスの成果を強調するために「『総雇用者所得』は、名目でも実質でもプラスになっている」と壊れたレコードのように繰り返している。
 どうやらお気に入りの言い回しらしいが、安倍首相の言い分をうのみにしてはいけない。国民に景気回復していると刷り込む“印象操作”に過ぎないからだ。
 
 総雇用者所得は、毎勤統計の1人あたりの賃金に、雇用者数をかけあわせたもの。要するに、国内の雇用者の所得の合計を表す値だ。
 生活実感に近い実質賃金が昨年を通じてマイナスになる可能性が高いため、安倍首相は景気が上向いている証拠として、総雇用者所得の増加を“印籠”のごとく振りかざしている。しかし、問題は、総雇用者所得が増えている理由だ。
 総雇用者所得は「1人あたり賃金 × 雇用者数」で算出される数字だから、働く人の増減に比例する。この単純な理屈を安倍首相は都合よく“利用”しているのだ。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「働く人が増えていることは事実ですが、その多くは世帯主の稼ぎに頼れない女性や高齢者。派遣労働やパート、アルバイトをしなければ家計を支えることができないのです。つまり、安倍首相の『総雇用者所得は増えている』という主張は、賃金の少ない労働者が増えているということと同じです。胸を張れる話ではありません」
 
 実際、総務省の「労働力調査」によると、一昨年から昨年にかけて、女性の非正規労働者は正規よりも26倍増加している。高齢者(65歳以上)の非正規も一昨年に比べ、40万人以上増えている
 要するに、総雇用者所得が増えている理由は、安倍政権の「働き方改革」によって非正規労働者が増えたからなのだ。
 
「そもそも、国民全体の所得が上がっているかどうかも怪しい。財務省や国税庁が算出している統計においても、1人あたりの賃金は増えていませんからね。だから、経済的な理由によって、結婚したくてもできない若者や、共働きのために子どもをつくれない家庭が多くなる。結果、少子化に拍車がかかるのです。安倍首相の答弁は、こうした実態を分かっていないとしか思えません」(斎藤満氏)
 国民に景気回復の実感がないのも、無理はない。