2019年2月24日日曜日

日米合同委の密約暴露 穀田議員(共産)今も米軍が日本の空を支配

 これまで防衛省は一貫して「米軍の運用にかかわることは承知していない」と表明して来ましたが、それは「まったくの偽り」で「実際は『一切公表しない』と密約が交わされていた」ことが明らかにされました。
 共産党の穀田恵二議員が22日の衆院予算委で暴露し、河野外相と石井国土交通相が密約の存在を初めて認めました。
 それは月2回定期的に行われ、その内容が公開されることのない日米合同委員会で決められたもので、同委員会は日米地位協定で位置づけられた日米同盟の運用に関わる事項を協議する機関です。会合は在日米軍トップと日本の主に外務省官僚との間で行わています。
 穀田議員は、「憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある。米軍に異常な特権を与える地位協定を抜本的に見直すのは急務だ」と強調しました。
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「米軍機運用は非公表」穀田氏 日米密約を暴露
衆院予算委 外相・国交相も認める
 しんぶん赤旗 2019年2月23日
 日米両政府が米軍機の飛行計画や“臨時”の訓練空域(アルトラブ)の設定など、運用全般について非公表とする密約を交わしていたことが22日、明らかになりました。日本共産党の穀田恵二議員が同日の衆院予算委員会で暴露し、河野太郎外相と石井啓一国土交通相が存在を初めて認めました。
 
 穀田氏が暴露したのは、1975年4月30日に日米合同委員会で合意された「米軍航空機の行動に関する情報の不公開について」と題する「秘・無期限」扱いの英文の覚書と、当時の運輸省による仮訳です。仮訳には「飛行計画、交信記録…高度留保(=アルトラブ)要求等の個々の米軍機の行動に関する事項は、双方の合意なしには公表しないものである旨、了解する」と記載。秘匿すると合意した情報は事実上、米軍機の行動全般に及びます。穀田氏は、「米軍の運用にかかわることは承知していない」などとする従来の防衛省の説明は「まったくの偽り。実際は『一切公表しない』と密約が交わされていた」と強調しました
 
 穀田氏は、覚書に添付された75年5月14日付の外務省文書(「米軍用機の活動に関するデーターの不公表について」)も暴露。「5月8日の第316回日米合同委員会において、(覚書が)承認された」として当時の外務省アメリカ局長から運輸省航空局長や防衛庁防衛局長に通報・送付されたことが記されていると指摘し、これらの文書の存在をただすと、「文書は外務省にある」(河野外相)、「存在している」(石井国交相)と認めました。
 
 穀田氏は、全国知事会が昨年7月、全会一致で採択した日米地位協定の抜本的見直しを求める「提言」で米軍機の訓練ルートや時期の事前の情報提供を求めたことにふれ、「住民の命と暮らしを最優先に考える自治体の長の責務であり、独立国としての当然の要求だ。覚書を直ちに無効にし、米軍機の情報開示を行うべきだ」と迫りました
 
 河野外相は「そのつもりはない」と公表を拒否。穀田氏は、日本の主権に関する重要事項が日米地位協定にもとづく日米合同委員会という密室で決められ、秘密裏にルール化されていると指摘。「憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある。米軍に異常な特権を与える地位協定を抜本的に見直すのは急務だ」と強調しました。
 
 
日米合同委の密約暴露 穀田議員 今も米軍が日本の空を支配
根本にある密約を暴露
 しんぶん赤旗 2019年2月23日
 米軍機が日本の上空を自由勝手に飛び回り、日本政府は「米軍の運用にかかわる」としていつ、どこを飛んでいるのかも明らかにしない―。今なお米軍が日本の空を支配し、日本政府が米軍機の活動に関する情報を隠し続ける根拠になっているのが、日本共産党の穀田恵二議員が22日の衆院予算委員会で暴露し、政府が存在を認めた、米軍の飛行計画や“臨時”の訓練空域(高度留保、いわゆるアルトラブ=ALTRV)などを非公表とする日米合同委員会の覚書=密約(1975年4月30日付)です。
 
アルトラブ根拠
 日本の上空には本土とその周辺に8カ所、沖縄県とその周辺に20カ所、米軍の訓練空域が提供されています。これに加え、「一時的に設定」し、「時間の経過により終了する」(石井啓一国土交通相)とされる「アルトラブ」が日本全国で設定されており、その回数は年間で1000回に及ぶとの指摘もあります。
 「アルトラブ」には「移動型」と「固定型」がありますが、穀田氏は米空軍嘉手納基地の第18航空団が作成した「空域計画と作戦」(2016年12月28日付)を示し、
(1)米軍は沖縄周辺に「固定型」アルトラブを拡大
(2)その面積は既存空域の1・6倍にもおよぶ
(3)空中給油を行う空域も複数、設定している
― 事実を指摘。さらに、「アルトラブ」は航空路図にも示されていないため、「飛行回避や迂回(うかい)の指示があっても民間機はその存在すら知らず、運航の重大な妨げになっている」と追及しました。
 米軍は「固定型」アルトラブの存在を明らかにしていますが、日本政府はこれまで一切明らかにしていません。その根拠が、穀田氏が暴露した覚書です
 また、穀田氏は、米軍が「アルトラブ」拡大を進めてきた15年以降、オスプレイの名護市浅瀬への墜落など重大事故が相次ぎ、「県民の命や暮らしが脅かされている」と告発しました。
 
偽りの政府説明
 覚書で非公表が合意されたのは、飛行計画やアルトラブだけではなく、事実上、米軍機の活動全般におよびます。穀田氏は、今月上旬に滋賀県の饗庭野(あいばの)演習場で行われた日米共同訓練では、関係自治体の要請を拒否し、MV22オスプレイの飛行ルートが非公表とされ、突然の飛来に多くの市民が驚いた事実を指摘。こうした共同訓練や単独訓練、さらに低空飛行訓練ルートについても、政府は「米軍の運用にかかわることで承知していない」と逃げてきました。こうした説明がすべて偽りだったことが、穀田氏が示した覚書で裏付けられました。
 
密約製造マシン
 覚書が合意された日米合同委員会は、日米同盟の運用に関わる事項を協議する機関です。しかし、その議事内容は非公表とされており、「密約製造マシン」と呼ばれています。その合意内容の一部が暴露され、政府がその存在を初めて認めたのはきわめて重大です。(竹下岳)
 
「米軍航空機の行動に関する情報の不公開について」(仮訳)
 (仮訳)
 議事録は両国政府の公文書と見做し、双方の合意なくして公表しないものとする
 覚書
 昭和50年4月30日
 標題:米軍航空機の行動に関する情報の不公開について
 1.関連文書
 a.航空交通管制に関する昭和27年(1952年)の合意およびその第3付属書
 b.昭和49年(1974年)12月12日付け民間航空分科委員会の勧告:航空交通管制に関する合意
 2.両国政府は、飛行計画、交信記録、航空機運航票記載事項又は高度留保要求等の個々の米軍機の行動に関する事項は、いずれの政府も双方の合意なしには公表しないものである旨、了解する。
 合同委日本側議長署名 合同委合衆国側議長署名
 
外務省アメリカ局長から運輸省航空局長あての通達
 
 外務省 秘 無期限
 米保第280号
 昭和50年5月14日
 運輸省航空局長殿
 外務省アメリカ局長
 
 米軍用機の活動に関するデーターの不公表について
 
 5月7日付貴信空安第33号に関し、5月8日の第316回日米合同委員会において標記の件に関しMemorandum of Understandingが別添(写)の通り承認されましたので、通報します。
 付属添付
 本信写送付先 防衛庁防衛局長
 
軍事優先特権隠しやめよ
ジャーナリスト 吉田敏浩さん
 
 今回明らかになった密約の本質を端的に言うと、「米軍機情報隠ぺい密約」です。
 沖縄や全国の低空飛行ルートのもとで、住民が米軍機の飛行の騒音被害や墜落の危険といった不安に脅かされてきました。自治体も、せめて防災ヘリやドクターヘリとの衝突事故が起きないよう、事前に情報提供を求め続けてきました。それに対して政府が、米軍の運用に関しては公表できないといっていた裏側には、この日米合同委員会の情報隠ぺい密約があったということです。
 日米合同委員会の密室協議には国会が関与できず国民の目も届かない。しかも法的根拠のあいまいな日米合同委員会の合意だけで、米軍の軍事優先の特権をつくり、それを隠し続けているのは許されないことです。
 
 いま全国的に、地位協定の抜本改定がとりあげられています。米軍に対し、国内法の原則適用や、米軍の特権の制限・規制ができるよう改定が必要で、特権を認めた密約も当然破棄しなければいけない。日米合同委員会自体、廃止すべきです。