2014年6月17日火曜日

自民党の元首脳たちが安倍政権を批判

 今国会の会期末が22日に迫るなか、安倍政権は、憲法改正の手続きを経ず、政府解釈を変える形で集団的自衛権を認めようと急いでいます。政界を引退した自民党の元大物議員たちの目には、どう見えているのでしょうか
 16日の朝日新聞が、元官房長官 加藤紘一氏、同 与謝野馨氏元首相 海部俊樹氏の3氏にインタビューしました。それぞれ説得力のある批判をしていますが、安倍首相はもはや聞く耳などは持っていないでしょう。
 解釈改憲が間違っていることをどんなに識者が指摘しても聞きません。まさしく戦後最低・最悪の反動内閣です。
 
 なぜこんな内閣が登場してしまったのでしょうか。
 一昨年の総選挙ではマスメディアの誘導もあって自民党が大勝利し、続く参院選でも「ねじれ解消」というマスメディアの大合唱に従って、ついに衆参両院で与党が過半数を占めるという結果をもたらしました。そして今日の安倍内閣の暴走です。
 しかしその責任は当然最終的に国民にあります。
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外交は机上の空論ではない  
元官房長官 加藤紘一
 戦後日本の平和を守ったのは、田舎の保守系無所属の人たちだ。惨めな戦場を経験し、戦後は黙々と地域に尽くし、この国を食えるようにした。世代交代で今、戦争を知らない政治家が国民をあおっている。
 僕の田舎の後援会事務長は16歳で少年兵になった。朝飯を一緒に食べた同期の仲間が隣で頭を撃ぢ抜かれて死んだ。いずれ自分も死ぬ。その前に恋がしたい。それで慰安所に行った。むしろの仕切りの中に入ったら、朝鮮の女性がいたそうだ。「申し訳なかった」。戦後、心の中で女性に謝り続けていたんだ。
 僕は体験者から直接話を聞いた人間として発言し続ける。政府が与党に示した集団的自衛権などの15事例なんて、官僚の小細工だ。防衛庁長官や官房長官を経験したが、集団的自衛権を使えず、日本の安全が保てなかったという経験はない。米軍に紛争地から日本人を連れて帰ってもらおう、という話もなかった。
 尖閣諸島はヤギのすむ岩山。「安保がある」と言うけれど、尖間を守るために、なぜ米国の若者が死ななきゃいけないのか。オバマ大統領が命じますか。外交は机上の空論じゃない。自分たちの家族の命をかけることとして考えるべきなんだ。中国の脅威というが、中国の観光客は増えいる。もっと民間交流を進めよう。日中とも外務官僚が仕切り、妥協の発想がない。
 日本を取り戻すというが、取り戻す日本とは何ですか。 (聞き手・伊藤智章)
 
 
信頼できる国になれ  
元官房長官 与謝野馨
 戦争にはルールがある、とみんな思ってるんだ。だけど、戦争ほどノンルールなものはない。そもそも集団的自衛権という抽象概念で、自衛隊を行動させることに賛成できない。
 首相は米国から強く迫られているのかもしれない。高い支持率という政治的資産をこういう難しい問題で使う。それはそれで素晴らしいことだ。ただ議論が尽くされていない。歴史を調べたら治安維持法も国家総動員法も深い議論なしに議会を通っている。
 集団的自衛権に頼らなくても、日本という国が存立できるようにするには、教育が行き渡っているとか、ものづくりが優れているとか、国の力をはっきりと主張したらいい。仮に中国が敵だとしても、中国から見て、あいつは信用できる、できない、というのはあるでしょう。安倍さんに言いたい。外国から見て信頼できる「敵」になりなさいと。
(聞き手・渋井玄人)
 
必要悪 議論を尽くせ   
元首相 海部俊樹
 湾岸戦争(1991年)の停戦後、自衛隊の掃海艇をペルシヤ湾へ派遣し、機雷の除去にあたらせた。米国との信頼関係をぎりぎりまで考え、決断した。
 集団的自衛権は必要悪だ。集団的自衛権の行使を認めないと対応できないとされる政府の8事例について言えば、やれることはやるべきだろう。
 安倍さんは前のめりにすぎる。一呼吸をおいてからものを言いなさい、と伝えたい。憲法との関係をまずきっちり考えないといけない。解釈改憲は国民にわかりにくい。国を挙げての大問題なのだから、野党も巻き込んで、国会の湯で議論を尽くさなければならない。マジョリティーの理解は得ておいた方がよい。 (聞き手・渋井玄人)