産業競争力会議が検討している「新たな労働時間制度」と称するものは、残業してもその対価である残業代を払わないという“残業代不払い”制度です。明らかに労働基準法の規定に反するものです。
経営者にとっては喉から手が出るほど旨みのある制度ですが、ただで残業をさせられる労働者にとっては何一つメリットはありません。「労働者を何時間働かせても残業代を支払わなくてもいい」というのは、ブラック企業そのものです。
それを政府が率先して進めようとしています。
政府は「全員に強制するものではなく、本人から希望があればというものだ」と説明しますが、一体本心で「残業代は不要です」という人がいるでしょうか。
当然、会社は忠誠心の尺度にするという強制をかけて来ます。そういう惧れがあるからその制度は認められないとするのが、本来政府や厚労省が取るべき態度です。当たり前の政府であればそうします。
1日のNHK「日曜討論」で、「新たな労働時間制度」について議論しました。
そのなかで、民主党の櫻井政策調査会長は、「なぜ残業代をゼロにすることが必要なのか理解できない。過労死が増える可能性もある。賃金が下がれば個人消費が落ちるだけで、経済を成長させることにはならない」と述べました。
共産党の小池政策委員長は「時間に応じて賃金を支払うことが大原則で、成果に応じてとなれば、時間の制約がなく、成果が出るまで残業代ゼロで働かされる。本人が希望する場合に限るというが、断れるわけがなく歯止めにならない」と述べました。
極めて当然の意見です。
連合は5月28日、「新たな労働時間制度」に対し、3800人が集まって反対集会を開いています。
この中で古賀会長は。「企業が労働者を何時間働かせても残業代を支払わなくてもいい、究極の“残業代不払い”だ」と批判し、「残業代の不払いの相談はこれまでも多く、過労死や過労自殺などの認定件数が過去最悪を更新している。労働者を保護するルールを緩めるのではなく、むしろ強化していくべきだ」と訴えました。
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成果で決まる新たな労働制度 各党が議論
NHK NEWS WEB 2014年6月1日
NHKの「日曜討論」で、成果で報酬が決まる新たな「労働時間制度」について、自民党の高市政務調査会長が、短時間で成果を挙げた人の給料が安いといった不公平感をなくすためにも必要だという考えを示したのに対し、民主党の櫻井政策調査会長は過労死が増えるおそれもあり、政府が目指す経済の成長にはつながらないと主張しました。
政府は新たな成長戦略に向けて、一定の範囲の労働者を対象に、働いた時間ではなく、成果によって報酬が決まる新たな「労働時間制度」の創設を検討しています。
これについて、自民党の高市政務調査会長は「全員に強制するものではなく、本人から希望があればというものだ。労働時間と成果に因果関係がない職種には新しい働き方を導入して、ダラダラと長く働いた人が給料が高くなり、効率的に短時間で同じ仕事をした人が給料が安いという不公平感をなくし、労働生産性を上げることは大事な考え方だ」と述べました。
公明党の石井政務調査会長は「時間に縛られずに効率的に短時間で仕事ができる職種や業種はあると思うが、悪用されて長時間労働が常態化したり、サービス残業が合法化されたりする懸念もある。クリエイティブな仕事や高度な専門職など真に必要な人に限定すべきではないか」と述べました。
民主党の櫻井政策調査会長は「年功序列をやめ、成果に応じた報酬にするのなら分かるが、なぜ残業代をゼロにすることが必要なのか理解できない。残業代ゼロを求める声は労働者にはほとんどなく、過労死が増える可能性もある。賃金が下がれば個人消費が落ちるだけで、経済を成長させることにはならない」と述べました。
日本維新の会の浅田政務調査会長は「日本では、特にサービス産業の生産性が低く、長時間労働が常態化している。労働時間に上限を設け、労働生産性を高める意味で、新たな制度に賛成だが、いわゆるブラック企業を助ける制度にしてはならない」と述べました。
みんなの党の中西政策調査会長は「職種によっては、時間ではなく、成果で評価する方向性は正しい。ただ、社外取締役の設置を義務化するなど、経営者への監視を強めることを同時にやらないと、結局、悪用されてしまう可能性がある」と述べました。
共産党の小池政策委員長は「時間に応じて賃金を支払うことが大原則で、成果に応じてとなれば、時間の制約がなく、成果が出るまで残業代ゼロで働かされる。本人が希望する場合に限るというが、断れるわけがなく歯止めにならない」と述べました。
結いの党の柿沢政策調査会長は「職業訓練や雇用保険を充実させることで、労働者が無制限の長時間労働を強いられた場合は、会社を辞めて違うところに行くことを選択することが、より可能な社会にしていかなければならない」と述べました。
生活の党の畑総合政策会議議長は「大学卒業者を『幹部候補』として採用する日本の雇用慣行にはなじまず、雇用条件の悪化につながる。多様な働き方は必要だが、検討されている制度は、対象となる人の限定が甘く、危うい」と述べました。
社民党の吉川政策審議会長は「制度の適用には本人の希望が必要だとしているが、会社から言われて断れる強い労働者ばかりではない。無制限に労働時間が延長され、ただ働きや過労死が増えることは目に見えている」と述べました。
新たな労働時間制度 連合が反対集会
NHK NEWS WEB 2014年5月28日
働いた時間ではなく成果によって報酬が決まる、新たな「労働時間制度」について、連合は27日夜、各地で集会を開き、「究極の“残業代不払い”だ」として反対するアピールを採択しました。
このうち東京・千代田区で開かれた集会には、労働組合の代表など連合の発表でおよそ3800人が参加しました。
この中では働いた時間ではなく成果によって報酬が決まる、新たな「労働時間制度」の創設が政府の産業競争力会議などで検討されていることについて、連合の古賀会長が「企業が労働者を何時間、働かせても残業代を支払わなくてもいい究極の“残業代不払い”だ」と批判しました。
そのうえで「残業代の不払いの相談はこれまでも多く、過労死や過労自殺などの認定件数が過去最悪を更新している。労働者を保護するルールを緩めるのではなく、むしろ強化していくべきだ」と訴えました。
このあと集会では、新たな労働時間制度の創設や労働者派遣法の改正に反対することや、労働者の代表が出席していない政府の会議で雇用に関わる重要な政策が議論されていることに反対することなどを盛り込んだアピールを採択しました。