2014年6月3日火曜日

「中世の名残り」の司法が続く

 日本では、被疑者が犯罪容疑を認めない限りいつまでも身柄の拘束を続けます。
 そうしておいて、「年老いた母親を留置するゾと脅す。年頃の娘を結婚できなくさせるゾ、就職活動中の息子の就職が出来ないようにするゾと脅す」・・・これは収賄の容疑で逮捕された体験者の告白です。
 否認を続ければ起訴後も保釈は認められません。
 昨年5月の国連拷問禁止委員会では、アフリカの委員から「日本の司法制度の不透明性は中世の名残であると批判され、激高した上田秀明・人権人道担当大使が「シャラップ」(黙れ)を連発て話題になりました。
 大変な恥さらしでしたが、さらに問題なのは、その際に委員会から勧告された改善要求の殆どは、前回出された改善勧告の繰り返しまたはより厳しくしたものであったということです。要するに日本側には、何度改善するように勧告されても、悪評高い人質司法や代用監獄制度(⇒留置場に留置)などを直そうとする意思がないということです。
 日本の、自白しない限り無期限に拘留しておくという「人質司法」と呼ばれるやり方は、これ以上はないほど人権を蹂躙するものです。日本の検察・警察の被疑者の取調べが如何に人権を無視したものであり日本が人権上の後進国であるか良く示すものです
 
 それにもかかわらずいま法制審議会の特別部会論議している刑事司法制度改革で、またしてもそこの改善に結びつくところが素通りされようとしています。
 弁護士の委員らが捜査中の被疑者の処遇について、「在宅と勾留の中間に位置する処分(=処遇)」を創設しようと求めたのに対し、捜査機関裁判所の委員らは消極論を展開したということです 
 捜査機関が反対するのはともかくとして、司法の正義を貫くべき判事らがそれに同調するというところが不明朗です。
 「判検一体」という判事と検事の癒着構造は、これまでも冤罪を生む温床になってきていますが、それも一向に改善が見られません。
 北海道新聞の社説「人質司法 これでは冤罪を防げぬ」を紹介します。
  (関係記事)
  2013年6月20日世界が驚く日本の人質司法の後進性 
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(社説) 人質司法 これでは冤罪を防げぬ
北海道新聞 2014年6月2日
 容疑を否認すると身柄拘束は延々と続く。心身が消耗し、捜査機関の見立てに沿う虚偽供述をするまでに追い詰められる。それでも「やっていない」と主張すれば起訴後も保釈は認められない。 
 冤罪(えんざい)事件などで事実上の自白強要に利用された実態が指摘され、「人質司法」と批判される身柄拘束の在り方を改める必要がある。 
 それは法制審議会の特別部会が論議している刑事司法制度改革の重要テーマのはずだ。具体的な検討内容は在宅と勾留の中間に位置する処分の創設である。 
 ところが、法務省の事務局が先ごろ、部会に示した試案から、中間処分はすっぽりと抜け落ちた。 
 密室の取り調べが冤罪の温床と言われて久しい。その適正化には全事件で容疑者や参考人の供述を録音・録画(可視化)するとともに人質司法の解消が不可欠だ。 
 部会は中間処分の創設に向けて論議を続けるべきだ。 
 中間処分は証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合でも居住先の指定など行動に制約を課すことで容疑者を勾留せずに捜査する。創設の必要性や対象事件の設定、起訴後の適用などが論点だった。 
 弁護士の委員らが創設を求めたのに対し、捜査機関や裁判所の委員らは証拠隠滅の恐れや、どんな事例に適用するかの判断の難しさなどを理由に消極論を展開した。 
 こうした経過を踏まえ、検討項目から外したのだろう。任意捜査を原則とする刑事訴訟法の理念を見失ったと言わざるを得ない。 
 試案は勾留の判断が適正に行われるよう確認を求める規定を設けるとするが、これだけでは不十分であることは論をまたない。 
 身柄拘束をできるだけ避け、逃亡なども防ぐ。そのために第三の選択肢を設ける意義はある。 
 確かに悩ましさはつきまとう。 
 パソコン遠隔操作事件で逮捕、起訴された男性被告は保釈中の5月中旬、「真犯人」を名乗るメールを報道機関などに送りつけた。「無実」証明の自作自演だった。 
 被告の行為が許し難いのは当然だが、だからと言って、度を越した長期拘束を正当化すべきではない。冷静に考えたい。 
 国連拷問禁止委員会は昨年、容疑者が最長23日間、警察の留置施設に収容される代用監獄制度の廃止検討などを日本に求めた。委員の一人は、自白への過度な依存を「中世のようだ」と指摘した。 
 「人権後進国」からの脱却は改革の最優先課題だ。法制審の部会はそれを再確認する必要がある。