2014年6月6日金曜日

自衛隊の「後方支援」拡大は 戦闘参加に等しい暴論

 琉球新報は、5日の「戦闘地域に自衛隊 これは積極的戦争主義」と題した社説で、安倍政権が自衛隊による後方支援の拡大を目指していることに対して、要旨次のように批判しました。
 
 海外へ自衛隊派遣の制限を外そうとするのは、無限定に戦争への道を開く危険な解釈改憲であり、他国の戦争に巻き込まれる危険性が一気に高まる。
 例の4つの条件を一つでも満たさなければ自衛隊の海外派遣が可能になるというのは、憲法9条の歯止めをなし崩しにするもの事実上の9条撤廃に等しい
 86年に国際司法裁判所が出した判決でも、武器提供だけでなく「兵站またはその他の支援」も武力行使に該当するとしているので、支援する他国軍の戦う相手当然自衛隊の活動武力行使とみなして攻撃してくる。
 外国で自衛隊が血を流すことを国民許容していない。安倍首相が目指しているのは「積極的戦争主義」だ
 
 北海道新聞も、同じく「集団的自衛権後方支援拡大 戦闘参加に等しい暴論」と題した社説で、要旨次のように批判しました。
 
 安倍晋三政権はどこまで憲法をないがしろにするつもりなのか。自衛隊による多国籍軍などへの後方支援活動を大幅に拡大する方針を打ち出し、これまで活動範囲を「非戦闘地域」に限ってきた原則も撤廃して、戦地での活動に道を開こうとしている。 
 そうなれば自衛隊が相手側の標的になるし、日本が供与した武器で人が殺傷されたりする可能性は飛躍的に高まる。 
 戦闘地域であっても他国部隊への補給・給油や医療支援を行い、戦闘中でなければ、他国部隊に武器・弾薬の提供もできることにするのは、事実上、戦闘に参加するに等しい。 
 名古屋高裁は2008年、イラクで多国籍軍の武装兵士を輸送した航空自衛隊の活動を「他国の武力行使と一体化した行動」として違憲判断を下し確定している。 
 従来の基準に基づく活動さえ違憲とされたのに、さらに拡大するなど許されるはずがない。 
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 北澤俊美元防衛大臣の発言からも、当事者となる自衛隊員にも、安倍政権が目指している後方支援に従事する意思がないことは明らかです。いま安倍政権が考えていることは、自衛隊員の人権をないがしろにしたものであるともいえます。
 
 二つの社説を紹介します。
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社説戦闘地域に自衛隊 これは「積極的戦争主義」だ
琉球新報 014年6月5日  
 憲法の意味を一内閣の思惑で勝手に変える解釈改憲に安倍政権は前のめりだ。集団的自衛権の行使だけでなく、海外への自衛隊派遣でも解釈改憲しようとしている。
 政府は、憲法が禁ずる「他国軍との武力行使の一体化」の意味を変え、自衛隊が支援できる内容を拡大する案を与党に示した。
 他国の戦争に巻き込まれる危険性が一気に高まる。外国で自衛隊が血を流すことをどれほどの国民が許容しているというのか。安倍晋三首相の言う「積極的平和主義」の表れだが、これでは「積極的戦争主義」そのものだ。無限定に戦争への道を開く危険な解釈改憲は許されない。
 憲法9条は武力行使を禁じている。ただし、正当防衛に相当する個別的自衛権の行使は、必要最小限なら許されると政府は解釈してきた。だが1992年の国際平和協力法で、「紛争当事者による停戦合意と受け入れ同意」などの条件を満たせば、自衛隊の海外派遣も可能となった。2001年のテロ対策特措法では、停戦合意がなくても、派遣期間中に戦闘行為がない「非戦闘地域」なら派遣可能とした。ただし活動内容は水や食料の補給、医療などに限定する。
 今回の提起は、地域による限定という考え方そのものを取り払うものだ。別途四つの条件を示し、四つともそろった場合だけ「武力行使の一体化」に当たるとみる。条件は(1)現に戦闘中の他国軍への支援(2)戦闘行為との密接な関係-等で、どれか一つでも当てはまらなければ、水や食料どころか、武器弾薬ですら提供可能となる。弾薬も、1カ月後に使うためなら「戦闘行為との密接性」がないので提供可能、となりかねない。
 憲法9条の歯止めをなし崩しにするものだ。これが認められれば9条が禁ずる実質は何一つなくなる。事実上の9条撤廃に等しい。
 しかし4条件など机上の空論だ。86年に国際司法裁判所が出した判決は、武器提供だけでなく「兵站(たん)またはその他の支援」も武力行使に該当すると定めた。日本がどう解釈しようが、支援する他国軍の戦う相手が、自衛隊の活動は武力行使とみなすということだ。すると攻撃され、戦争に巻き込まれることになる。
 政府・自民党はあえて大胆な案を出し、4条件を一つにするなどして譲歩したかのように装い、着地点を探るつもりなのだろう。そんな「偽装」は許されない。
 
 
社説集団的自衛権「後方支援」拡大 戦闘参加に等しい暴論
北海道新聞 2014年6月5日
 安倍晋三政権はどこまで憲法をないがしろにするつもりなのか。 
 政府は、集団的自衛権の行使容認に加え、自衛隊による多国籍軍などへの後方支援活動を大幅に拡大する方針を打ち出した。 
 憲法が禁じる「他国の武力行使との一体化」に当たるかを判断する新たな4基準を示し、該当しないものが一つでもあれば後方支援を可能とする。 
 活動範囲を「非戦闘地域」に限ってきた原則も撤廃し、戦地での活動に道を開く。 
 戦地で直接的に他国を支援することになれば、自衛隊が相手側の標的になったり、日本の武器で人が殺傷されたりする可能性は飛躍的に高まる。 
 海外での武力行使を禁じる憲法に抵触するのが明らかな後方支援拡大は断じて認められない。 
 
 新基準は《1》現に戦闘行為を行っている他国部隊に対する支援《2》戦闘行為に直接使用される物品、役務の提供《3》他国が戦闘行為を行っている現場での支援《4》支援が戦闘行為と密接に関係する―の四つで、この全てに該当しない限り、自衛隊による支援を可能とする。 
 政府は従来、非戦闘地域に限って食料や水の補給などが行えるとしてきたが、新基準では戦闘地域であっても他国部隊への補給・給油や医療支援が可能になる。戦闘中でなければ、他国部隊に武器・弾薬の提供もできる。 
 首相は先に「自衛隊が湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」と言明したが、これでは事実上、戦闘に参加するに等しい。 
 名古屋高裁は2008年、イラクで多国籍軍の武装兵士を輸送した航空自衛隊の活動を「他国の武力行使と一体化した行動」として違憲判断を下し、確定している。 
 従来の基準に基づく活動さえ違憲とされたのに、さらに拡大するなど許されるはずがない。 
 政府は国連平和維持活動(PKO)を展開する自衛隊の「駆け付け警護」に関連し、これまで「国に準ずる組織」に当たるとして武器使用を禁じてきた反政府武装勢力などに対しても、武器を使えるようにする方針も示した。 
 多国籍軍支援では自衛隊を戦地に派遣し、PKOでは武器使用を広く認める―。憲法の歯止めを無視し、なし崩し的に自衛隊が戦争に参加する道を開く試みを安倍政権は直ちにやめるべきだ。