政府は3日、自民・公明両党の与党協議で、憲法上禁じられてきた「他国による武力行使との一体化」の判断基準を緩和するため、新たな4要件を提示し、その4要件の1つでも欠ければ他国の部隊へ後方支援が認められるとする提案を行いました。
提案は、一体化の定義を、(1)現に戦闘中の他国部隊への支援(2)戦闘に直接使用される物品や役務の提供(3)現に戦闘を行っている場所での支援(4)戦闘行為と密接な関係がある-のすべてに該当する場合 に変更するというものです。
現行の「武力行使との一体化」は、日本が直接武力行使していなくても、他国の行使に密接に関与すれば、行使したのと同等とみなされるという考え方で、それが憲法が禁じる海外での武力行使に当たるというのが、これまでの政府見解でした。
それを、きわめて容易に「後方支援」を行えるようにしようとするものです。
「戦争をさせない1000人委員会」は先に、安保法制懇の報告書のデタラメさ加減を「知的誠実さ」に欠けたものと批判しましたが、この政府の提案も、憲法を尊重し擁護するという義務感を失えば、あとは「なんでもあり」になるということを示すよい例です。
公明党はそれに対して、後方支援を「ほぼ無限定に認める内容だ」と反発し、自民党との溝を深めました。
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集団的自衛権 戦闘の後方支援拡大 武器提供可能に
東京新聞 2014年6月3日
政府は三日、武力で他国を守る集団的自衛権の行使容認に関する自民、公明両党の与党協議で、憲法上禁じられてきた「他国による武力行使との一体化」の判断基準を緩和するため、新たな四要件を提示した。海外での国際協力などで自衛隊の後方支援活動を拡大するのが狙いだが、これまで禁じられていた武器・弾薬の提供などが認められる可能性がある。
武力行使との一体化は、日本が直接武力行使していなくても、他国の行使に密接に関与すれば、行使したのと同等とみなされる考え方。憲法が禁じる海外での武力行使に当たり、政府はこれまで前線への武器・弾薬の提供や、戦闘地域での医療活動などは「問題がある」との見解だった。
政府は前回示した十五事例のうち、国連平和維持活動(PKO)を含む国際協力の中で「活動に制約がある」と見直しを求めていた。
新たに提示した四要件では、一体化の定義を(1)現に戦闘中の他国部隊への支援(2)戦闘に直接使用される物品や役務の提供(3)現に戦闘を行っている場所での支援(4)戦闘行為と密接な関係がある-のすべてに該当する場合とした。一要件でも該当しなければ、他国の部隊へ後方支援が認められることになり、自衛隊の海外活動の歯止めがなし崩しになる懸念がある。政府側出席者は会合で「今後、非戦闘地域などの地理的基準は取らない」と説明した。
海外で活動中の自衛隊が離れた場所にいる民間人や他国部隊を救援する「駆け付け警護」でも、「日本が承認する現地政府が存在し、権力が維持されている」条件を満たせば、武器使用は憲法が禁じる「海外での武力行使」には当たらず、容認できるとの考えを示した。
また自民、公明両党はこの日、これまで週一回だった会合のペースを週二回に増やすことで一致した。
<武力行使との一体化> 日本が武力行使をしていなくても、他国の武力行使に密接に関与すれば「一体」と見なされる考え方。憲法が海外での武力行使を禁じるのを踏まえ、政府は「他国による武力行使との一体化」は違憲との立場をとってきた。内閣法制局は国会答弁で(1)他国軍と自衛隊の地理的関係(2)自衛隊活動の具体的内容(3)他国活動との密接性(4)他国の活動の現況-を総合的に勘案して、個別ケースごとに判断するとしている。
公明、後方支援4条件に反発 「ほぼ無限定」
東京新聞 2014年6月3日
自衛隊による他国軍への後方支援拡大を狙って、政府が安全保障に関する与党協議会に示した4条件をめぐり、公明党は3日、「後方支援をほぼ無限定に認める内容だ」(幹部)と反発を強めた。焦点となっている集団的自衛権の行使容認問題の議論が本格化する前に政府、自民党と公明党の溝は深まった。次回の与党協議は6日で調整している。
政府は、自衛隊に課せられた制約の緩和を目的に、憲法解釈で禁じられている「他国の武力行使との一体化」の定義を限定し、「現に戦闘行為を行っている他国部隊に対する支援」などの4条件を満たした場合に限り一体化とみなすとした。(共同)