1972年の政府見解を集団的自衛権行使容認の根拠とするなどは、あまりにもバカらしくて、政府や自民党など以外には誰も相手にしないし、議論する気にもなれないというのが、大方の人の思いではないでしょうか。
しかし一度はきちんとした反論を読んでおく必要もあります。
植草一秀氏はこういう場合でもいつも正論を発表します。
今回も、極めて簡潔で明瞭な文章を書いていますので紹介します。
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1972政府見解を集団的自衛権根拠とする頓珍漢
植草一秀の「知られざる真実」 2014年6月14日
このような茶番が繰り返されるのでは国民はたまらない。
集団的自衛権行使容認をめぐる与党内での協議。
1972年の政府見解で、日本は憲法の制約から集団的自衛権を行使できないことが確認されている。
したがって、集団的自衛権行使を容認するには憲法改定が必要である。
公明党の支持母体である創価学会は、次のコメントを公表している。
「私どもの集団的自衛権に関する基本的な考え方は、これまで積み上げられてきた憲法第9条についての政府見解を支持しております。
したがって、集団的自衛権を限定的にせよ行使するという場合には、本来、憲法改正手続きを経るべきであると思っております。
集団的自衛権の問題に関しては、今後の協議を見守っておりますが、国民を交えた、慎重の上にも慎重を期した議論によって、歴史の評価に耐えうる賢明な結論を出されることを望みます。」
行政運営における憲法尊重を立憲主義と呼ぶ。
政治権力が暴走することを防ぐため、政治権力の行動を憲法の規定で縛るという考えだ。
集団的自衛権行使とは、他国の戦争に加担する行為であり、国の命運、国民の生命、安全に直結する最重要問題である。
憲法の規定が尊重されるべきことは当然のことだ。
集団的自衛権行使を容認するというのであれば、憲法改定の手続きを経るべきことは当然だ。
この当然のことを守ることがすんなりと決まらない。
与党である公明党が毅然とした姿勢を示せば、安倍政権は現在の与党の枠組みで閣議決定することができない。
ところが、この公明党の対応が揺れ動いているのである。
1972年に政府が示した見解には次の記述が明記されている。
「わが国が国際法上右の集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然といわなければならない。
ところで、政府は、従来から一貫して、わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されないとの立場にたっている」
つまり、
「日本は集団的自衛権を有しているが、国権の発動としてこれを行使することは憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されない」
としているのだ。
極めて明快に日本の集団的自衛権とその行使についての考え方を整理している。
ただし、この政府見解には次の文言が盛り込まれている。
「第13条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、……国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」
安倍政権はいま、この1972年の政府見解の上記の部分を活用して、集団的自衛権行使を容認しようとしているのだが、論理的に明らかな無理がある。
なぜなら、1972年見解は、憲法第13条の規定を根拠に、
「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない」
としているのだが、いま論議になっている肝心の集団的自衛権行使については、
「国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されない」
と明記しているのだ。
憲法13条の条文を根拠に、
「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとること」
は認められるが、
「国権の発動としてこれ(=集団的自衛権)を行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されない」
としているのが、1972年政府見解なのである。
1972年政府見解は、
「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない」
と記述するが、これに続く文章でこう記述している。
「だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまでも外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の擁利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの擁利を守るための止むを得ない措置として、はじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。
そうだとすれば、わが憲法の下で武カ行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」
これが、1972年政府見解の肝の部分である。
ネット上で「1972年政府見解」のキーワードで検索しても、この文章がすぐには出てこない。
この文章全文が簡単に確認できないように、検索上の制限がかけられているのではないかと疑われる事態だ。
(以下は有料ブログのため非公開)