一国の最高権力者=総理大臣が日常茶飯事的ににウソを言い立てるとしたら尋常ではありません。
周到に準備されたウソを何の抵抗もなく口に出来るのであれば、天性の大ウソつきということになります。
もしもそういう自覚もないままに虚言を並べ立てているというのであれば、事態は更に深刻です。
そういうことを国民はまず事実として知るべきですし、メディアはそうした事実を国民に知らしめるべきです。
改憲派の論客でありながら、これまで安倍首相の憲法改正によらない9条の解釈変更を痛烈に批判してきた小林 節 慶大名誉教授は、8日の大阪日日新聞に、「安倍首相の言葉が信じられない恐怖」と題する記事を載せました。
そこでは7月1日に行われた首相会見の説明がいかに虚偽に満ちたものであったかを、端的な例を引いて具体的に説明しています。
そして記事は次のような言葉で結ばれています。
政治は、言葉で民衆を説得して統合していく業(わざ)である。にもかかわらず、今、わが国では、最高権力者が発する言葉がこれほどまでにいいかげんである。しかも、この人物が、自衛隊の最高司令官であり、海外派兵の最終決定権を握ることになる。私は、正直言って、恐ろしい。
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安倍首相の言葉が信じられない恐怖
小林 節 大阪日日新聞 2014年7月8日
慶大名誉教授・弁護士
集団的自衛権が解禁されたとする7月1日の閣議決定後の首相会見は、テレビで同時放送されたので、全国で多数の人々が見たはずである。私もテレビでその全てを見せてもらった。
私は真剣に聴きながらメモを取った。そのメモには次の言葉が残っている。つまり、「海外派兵(の)禁止は不変(である)」「海外で戦闘に参加はしない」「二度と戦争をする国にはならない」「(集団的自衛権発動のための)新三要件は基本的には従来(のもの)と不変である」「憲法の規範性を変えて(は)いない」「憲法の平和主義は不変(である)」「ていねいに説明(したい)」。
これを読み直して、私は頭が混乱してしまった。
まず、「集団的自衛権」とは、国際慣習法上の概念でひとつしかないが、それは、同盟国が戦争に巻き込まれた場合に彼国を助けるために参戦する権利であり、その本質は当然に海外派兵である。だからまず、「海外派兵禁止は不変」といった首相の発言は明白な「嘘(うそ)」である。
現行の憲法9条は、第2次世界大戦への反省の下に書かれたもので、それが海外派兵を禁止していることは明白で、だからこそ、現行憲法の下では、海外派兵が不可避な集団的自衛権は行使できない…というのが確立された政府見解であった。
そのために、これまで(唯一許される)個別的自衛権発動の条件(従来の三要件)は、要するに、現にわが国が攻撃され、他に選択肢がない場合の、必要最小限の武力行使しか許されない…とされていた。
それが今回、集団的自衛権を解禁するために、大変な議論を経て新三要件が閣議決定されたはずである。それは、要するに、他国への攻撃により、わが国の存立と日本人の人権が全否定される明白な危険がある場合に、必要最小限の武力行使が出来る…というものである。このふたつは明らかに「不変」(同じ)ではない。
政治は、言葉で民衆を説得して統合していく業(わざ)である。にもかかわらず、今、わが国では、最高権力者が発する言葉がこれほどまでにいいかげんである。しかも、この人物が、自衛隊の最高司令官であり、海外派兵の最終決定権を握ることになる。私は、正直言って、恐ろしい。