日本における徴兵制度はこれまで話題にもなりませんでした。通常の軍隊とは異なる自衛隊において徴兵制はあり得ないことでした。
また現有自衛隊員数=22万人余は、必要数に対し90%以上の充足率に達しているので、人員的にも必要性がありませんでした。
徴兵制が話題になるのは、憲法18条:「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。(又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、)その意に反する苦役に服させられない」という条文によって徴兵制は認められない・・・という風に、否定の対象として取り上げられるときでした。
ところが18日付のガジェット通信は、「憲法18条の解釈改憲で徴兵制がやって来る?」 という記事を載せました。
共産党の志位委員長も15日の講演で、「自衛隊に犠牲者が出れば、自衛隊員が激減し、徴兵制になりかねない」 ― という多くの識者の懸念は、決して杞憂とはいえないとして、自民党の石破幹事長が国会で「国を守ることが意に反した奴隷的な苦役だというような国は、国家の名に値しない」と述べたことを取り上げました。
また10日のテレビ朝日モーニングバードは、「そもそも総研」※のコーナーで、20分余にわたって徴兵制を取り上げて、やはり石破幹事長の発言などを例に上げながら、徴兵制は現実のものになりつつあると警報を発しました。
※ 「そもそも徴兵制なんてありえない と言い切れるのか」
こうした一連の動きは、いうまでもなく集団的自衛権の行使容認の閣議決定によって生まれたものです。
安倍首相は、今のところは自衛隊が海外に出かけることはあり得ないと盛んに強調していますが、それは根拠のない空論であって、行使容認に踏み切った以上、アメリカが引き起こす戦争への参加を強要された場合 日本は断れる筈がありません。
当初は仮に1万人ほどの派遣で始まるにしても、長年続くうちにはやがて3万になり7万になります。その間には死者も多数出るし、隊員をやめる人も出るし、入隊志願者は逆に激減します。それに派兵した分 国内駐留数が減るというのも、自衛力上放置できません。
かくして徴兵制度が現実の問題になったときに、9条を簡単に踏みにじった内閣が憲法18条についても、「兵役は苦役ではない」とする解釈改憲に躊躇する筈もありません。
7月1日の閣議決定を境にして、日本の徴兵制は極めて現実的な問題になってきました。まことに恐るべきことで、もはや安倍内閣には少しでも早く退陣してもらうしかありません。
ガジェット通信の記事を紹介します。
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憲法18条の解釈改憲で徴兵制がやって来る?
ガジェット通信 2014年7月18日
徴兵制に基づく兵役は憲法18条違反との解釈で異論なかったが…
18条の解釈改憲で徴兵制がやって来る?憲法18条は「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と定めております。ここでいう「その意に反する苦役」とは、本人の意思に反して強制される労役(肉体的労務)を意味し、徴兵制に基づく兵役も、これに該当するがゆえに同条に違反するとの解釈は、当然のものとしてこれまでほぼ異論がありませんでした。
ところで、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」である集団的自衛権について、日本政府は伝統的に「我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するための必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている」との立場を採ってきましたが、先日、安倍政権は、行使容認の閣議決定に踏み切りました。
集団的自衛権行使容認の経緯に照らせば徴兵制は現実味すら帯びる
我が国が集団的自衛権を行使する場合であっても、基本的には自衛隊を充てるものと考えられますが、集団的自衛権行使の結果、多くの自衛隊員が命を落とすことになったり、あるいは負傷するなどして、人員不足に陥ってしまう事態も十分考えられることです。このような事態になった場合、自衛隊の人員不足をそのまま放置して、その後の個別的ないし集団的自衛権の行使を断念するなどということはあり得ないでしょう。そうなると、その場合の手当ても考えておかなければならず、必然的に「徴兵制」というものが念頭に浮かんでくることになります。
しかしながら、前記のとおり、憲法18条は「その意に反する苦役」を禁止しておりますので、徴兵制を採用するためには、兵役が「その意に反する苦役」には該当しないものと解釈しなければなりません。これまでは同条に違反するとされてきた徴兵制ないし兵役が、ときの政府において「祖国防衛は国民の当然の義務だから、徴兵制は『その意に反する苦役』に該当しない」との強引な解釈をすることにより、憲法改正手続を経ないままに同条に違反しないものとされてしまう懸念は、今般の集団的自衛権行使容認の閣議決定がなされた経緯に照らしても十分にあり得ることであり、現実味すら帯びてきます。
解釈改憲などという手法により、事実上、憲法改正を行うなどということは、国家権力から国民の基本的人権を守る基本法たる憲法を、国家権力の側で自由に改正するのと同じことです。国家権力の暴走に途を開くものとして、到底許されないことでしょう。